~STORY 198 8月10日 ①~
夏休みが半分近く過ぎ、地方へと帰省する人が増え始めた
北条家は父の祐輔が仕事の都合で未だに日本に帰れないので祐輔の実家に帰省することなく優希は今日も今日とて家で過ごしていた
「おはようございます葵さん。今日もよろしくお願いします」
「いらっしゃ〜い!どうぞ入って入って〜!」
「お邪魔しま〜す!」
この日は葵の家庭教師の日で、優希は今日は葵の部屋にやってきている
この夏を機会に葵は実家から出てマンションを借りて一人暮らしを始めたらしく優希は今回初めて葵の部屋を訪れた
「ちょっと汚いかもしれないけどゆっくりしてってね?」
「汚いだなんてとんでもない!とっても綺麗じゃないですか!」
部屋に案内する葵は恥ずかしがりながら紹介するが、優希の言う通りどこが汚れているのか専門家や潔癖症の人しか分からないくらい綺麗な空間が形成されていた
落ち着いた雰囲気の部屋には勉強机に本棚が多くあり、本棚の中には参考書やその専門書のものや小説が並んだものも綺麗に整頓されていた
「綺麗でもぬいぐるみとか化粧品とかみたいな女の子らしいものがないつまらない部屋じゃない?」
葵は優希に部屋が綺麗だと言われて嬉しいのだが自分の部屋が面白くない可愛げもない普通の部屋だと思っているようであまり好きではなかった
「そんなことないですよ、寧ろ大人の女性っぽくて僕は葵さんの部屋好きですよ」
「ふふ、ありがとうゆうくん(や、やった!可愛いもので部屋を覆わなくてよかった〜)」
葵は部屋を借りて模様替えする際どうするかでかなり迷った
葵はぬいぐるみは好きだしアニメのキャラクターも結構好きで、実家の部屋にはぬいぐるみも結構置いていた
「なんだこの部屋?いい歳してぬいぐるみとかきもいんですけど?」
「(ゆうくんにそんなことでも言われた日には割腹自殺するしかないもんね…)」
しかし、決め手となったのは言わずもがな優希の存在だった
実家の部屋は優希が来る日は全て押し入れに入れて隠していた
部屋に可愛いぬいぐるみを置きたい気持ちは確かにある
だが優希に“キモイ”当の発言をされた日には葵の精神は崩壊するだろう
なので今回泣く泣くだが実家の部屋にグッズを全て置いてきたのだった
「(これも全て…ゆうくんへの好感度アップのためなんだもん…。我慢我慢)」
「あっ、そういえば葵さん“この部屋”にはぬいぐるみとかは置かないんですか?」
「ベェ?」
用意されていた座布団に腰掛けながら部屋をキョロキョロ眺めていた優希は葵に唐突な爆弾を投下したのだった
あまりの突然さに葵本人でさえも聞いたことがないような声が出てしまった
「ぬ、ぬいぐるみ?そ、そそそんなもの!も、持ってない…よ?」
「え?だって前にお邪魔させて貰った時に自宅の部屋に何匹かアニメキャラのぬいぐるみがいたじゃないですか〜?ほら!ビカチュウとかチョコリータとか!」
「(え、なんでなんで!?確かにあの子達も隠していたはずなのに!?あっ!!)」
〜数ヶ月前の家庭教師の日〜
「葵〜?優希君来たわよ〜?」
「は〜い!(よしっ!ほとんど押入れに入れ置いたわね?これでもう大丈夫かな?って!)あああああああ!!!」
部屋の最終確認を行なった葵だがまだ窓際には数匹のぬいぐるみ達が鎮座していた
「(まずいまずいまずい!もうゆうくん来ちゃうのに〜!もう押入れはいらないよ〜!!)仕方ない!ごめんね!【シャッ!】」
隠す場所がなく、葵はなくなく窓際のぬいぐるみたちをカーテンで隠す最終抵抗で片付けを完了させた
以外にもその時は優希にもバレず、これでいいならと葵はそれ以降もこの形で優希を迎え入れたのだった
しかし……
「ちょっとごめんね?私トイレ行ってくるから先進めてて?」
「わかりました。ゆっくりしてってくださいね?」
葵がトイレに行ってる間に優希は参考書を進めつつ時折葵の部屋を物色していた
「葵さんの部屋って綺麗だよな〜。僕の部屋は椿さんや奏音が整理しちゃうから自分で整理なんてしないしきっと大変なんだろうな〜」
葵の部屋の感想を物々述べながら見ていくと優希は一つの疑問が生じた
「そう言えば前からそうだったけどなんでここだけカーテンしてるんだろ?葵さんの家を通る時にはここはいつも空いてるはずなんだけど……【ウズ…】」
開けて中を見てみたいけどここは葵のプライベート空間
他人が勝手に介入するのはいくら親しくても無礼である
「【ウズウズ……】ちょ、ちょっとだけなら……【チラッ】」
しかし我慢ができなくなってしまった優希は葵の部屋のカーテンをめくってしまった
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