~STORY 177 8月6日 ④~
「店長さん。少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」
「ん〜?なんだいはるちゃん。あたしゃいま忙しいんだよ〜?分からない事があるんだったらゆ〜ちゃんに聞いて〜?」
閉店後、晴菜は事務所で仕事をしている涼音の元に足を運んだ
声をかけると涼音はペンをクルクル回しながら晴菜の方を一切見ないでPCと向き合ったまま答えた
材料の注文や予算の計算をしているみたいだ
「いえ、業務に関してではありませんの。私は店長さんに直接お話があるのです」
それでも涼音と話がしたい晴菜は引く事なくむしろ食い下がってくる
「あたし〜?はぁ…まぁ、従業員の相談を聞くのが雇い主ってものだから聞いてあげるけどできるだけ手短にしてよね〜?こっちもやる事いっぱいあって猫の手も借りたいんだから〜」
「それでしたら私がお手伝い致します」
「新人のくせに生意気言うんじゃないよ〜?これらの仕事を任せるとしたらベテランのたねちゃんやみ〜ちゃん、最低でもゆ〜ちゃんくらいのベテランじゃないと頼めないんよ」
その根気に負けたのか早い所問題を解決して仕事を進めたいのか涼音は面倒臭そうに晴菜に顔を向き直りコーヒーカップを持ちながら話を聞く体制に入った
因みに仕入れの仕事は万が一ミスをして大量注文した暁には店長涼音からの鉄拳制裁が入るので誰もやりたがらないがどうしてもの場合の為に、店長涼音から選抜された面々しかやり方を教わらない
現在【シリウス】で仕入れの作業が出来るのは種田先輩、石井先輩、宮崎先輩そして優希の四人だけなのだ(優希と宮崎先輩は一度も無いが種田先輩と石井先輩は一度大量発注をした事があり、涼音にボコボコにされたらしい)
「先程、優希様からお伺いしたのですが店長は優希様に口説いてみなさいと仰ったのですか?」
話の許可を貰った晴菜は前置きを述べず単刀直入に涼音に聞き出すのは勿論優希の話だ
「ん〜?言ったよ〜?ゆ〜ちゃん最近大人になったらしいからこれを機に更に男として磨いてあげないとね〜って思ってさ!はっはっは!」
晴菜の質問に涼音はノータイムで答えてあげた
その時のことが面白かったのか涼音はケラケラと笑う
「と言うことはやはり店長さんも優希様のことをお慕いしておられるのですか?(やっぱり…やっぱりこの方も…優希様を……!)」
プルプルと震えながら確認するようにもう一度質問をする晴菜を見て涼音はふっと溜息を吐きコーヒーを一口飲んでその問いに答えた
「そりゃ勿論ゆ〜ちゃんのことは好きだよ〜?ってかあたしゃうちで働く子達みんな愛してるからね〜?それにベテラン格の面々は長い付き合いだから余計ね〜」
「そう…なんですか?」
「おうともよ!だからはるちゃんの心配してることはな〜んにもしやしないから安心んさいな?」
「そ、そうですの…。(よ、よかったぁ……)」
従業員全員を愛している
そしてベテラン格のことはそれ以上に愛している
その言葉を聞き、晴菜は心底ほっとした
晴菜からみても涼音は美人で綺麗だった
おまけに一店舗の経営者でどんな業務も難なくこなす完璧超人
そんな涼音が万が一優希に女性として好意を示したとあらば、かなりの強敵になるに違いない
それだけに涼音がライバルでないと聞いて晴菜は本当に安心したのだ
「ふふ、安心したらとっととゆ〜ちゃんの下に行きなさいな。こんな所で道草食ってたらし〜ちゃんやあ〜ちゃんに取られちゃうよ〜?」
涼音はしっしっと手を振ると再びPCに向き直り、仕事の続きを始めた
「はい!ありがとうございました。では私はこれにて、失礼させていただきますの!【ペコリ】」
晴菜は涼音に深々と頭を下げると事務所を後にした
「……ふふ、ゆ〜ちゃんは本当にモテモテなんだにゃ〜。あの子達の中で、誰がゆ〜ちゃんの心を射止めるのか楽しみだね〜」
一人になった事務所の中でカタカタと作業をこなしながら涼音は優希とデートする女の子を妄想していた
いつもは数時間かかった仕事が今日は早く終わったそうな…
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