~STORY 174 8月6日 ①~
「ありがとうございました。またお越しくださいませ!」
夏休みに入り、普段から利用している客に加えて夏休みの宿題や課題をやるべく【シリウス】に入店する学生も多く、喫茶店【シリウス】は連日大盛況だった
勿論【シリウス】のコーヒーを目当てに来る客も多いがそれだけではなかった
「いらっしゃいませ〜!お好きな席へお座りくださ〜い!!」
「こちらが当店のメニューになりますわ。ご注文がお決まりになりましたら遠慮なくお呼びくださいませ」
夏休みからこの【シリウス】にバイトとして入った晴菜と飛香が客寄せとなっているのが大きいのかもしれない
理由としては入る客のほとんどが男性であるからだ
元気一杯笑顔で接客をする飛香とまるで本物のメイドのような雰囲気を漂わせる晴菜にお客の大半は二人の仕事ぶりを眺めながらコーヒーを飲んでいた
店長の涼音はこの客寄せに不満があるかと思いきや
「ん〜?別に売り上げに貢献してくれてるんだからいいんじゃないか?まぁ、あまりにも態度が悪い輩がいたらすぐに締め出して永久追放にしてやるけどね」
経営者とは思えない発想だったがまぁ多めに見てくれるだろうと優希は思った
しかしそんな優希の業務の中にはある新しい項目が追加された
それは……
「ゆ〜ちゃんゆ〜ちゃん!あたしちゃんと接客出来たよ〜?」
「うん、丁寧で元気一杯でとても良かったよ」
「えへへ〜。じゃあ…ご褒美が欲しいなぁ♪【バッ】」
そう言って飛香は頭を低くしながら優希に差し出した
「優希様。私も優希様の教えの通り接客が出来たと思いますの。ですので…その、見返りを頂きたく……【スッ】」
すると横から音も無く現れた晴菜も飛香と同様に腰を低くして頭を差し出した
「う、うん…。二人共…とても上手に出来ていて…いました。【なでなで】」
優希はそんな二人の頭に手を添えて、髪が乱れない程度に優しく頭を撫でてあげた
「えへへ〜♪ゆ〜ちゃんのなでなで大好き〜♡」
奏音は撫でられながら気持ちよさそうに喉を鳴らす
気分はまるで猫を撫でているみたいで優希もなんだか心地よくなってきた
「はぁ…///優希様の為に働けてしかも頑張ったご褒美に優希様に頭を撫でてもらえるなんてこんな役得な仕事はありませんわぁ」
晴菜も優希の身体に自身の身体を擦り寄せながら甘えていた
優希は恥ずかしがりながらも、晴菜のご褒美だと割り切って顔を真っ赤にしながら晴菜と飛香の頭を撫で続けた
「(あの店員、羨ま妬まし…くならない…!?)」
「(それどころか…何て美しい光景なのかしら…!)」
「(写真…!写真に収めなければ…!!)」
お客さんも優希達の“なでなでタイム”を妬むことなく寧ろその光景をおかずにコーヒーが進み更に【シリウス】の売上が増していった
「涼音さん…。私も優希くんになでなでして欲しいんですけどなんで私はダメですか?」
厨房で料理をしていた紫織はその光景を不満そうに眺めながら一緒に厨房にいた涼音に文句と自分にもご褒美が欲しいと申請した
「なんでってあんたはあの子達よりも一年も先輩なんだからそんなご褒美がなくても動くだろ?甘えてないで早くケーキの用意を進めな?」
涼音はナポリタンとドリアを同時進行に作りながら紫織の申請を拒否した
「動きますけど…優希くんに撫でて貰えるなんて羨ましいじゃないですか。私だって少しのご褒美があってもいいじゃないですか」
紫織は冷蔵庫から注文のチョコレートケーキを取り出しながら、ご褒美をねだった
紫織は優希が新人の二人のご褒美進呈係として任命された時最後まで異議を唱えた
その異議の理由もただ単純に二人が“羨ましかった”だけなので紫織の異議は拒否された
「涼音さん!そろそろ晴菜さんと飛香を休憩に入れたいので紫織さんにホールをお任せしたいのですがいいですか?」
「お〜?じゃあ二人には休憩入れちゃって〜?ホールはし〜ちゃんとゆ〜き君に任せようかしら?じゃあし〜ちゃんホールお願いね?」
「は、はい!分かりました」
優希の要請を聞き涼音は晴菜たちを休憩に入れ、空いたホールを紫織に任せるよう指示した
厨房を一人で請け負うことになった涼音は手を千手観音のように動かし始め、注文の品を着実にそして完璧に作っていく
キッチンからホールに移る事になりエプロンを外す紫織の内心はとても上がっていた
どんな形にせよ、優希と二人で仕事出来るのは嬉しい事で、この時間がずっと続けばいいのにと切に願う
「あっ、ちょっとし〜ちゃん?」
「は、はい。なんでしょうか?」
そんな気分が上昇している紫織を呼び止めた涼音は紫織の耳元に顔を近づけ、優希に聞こえない声量でコソコソと話し始めた
「この時間だけはさっきのあすちゃんやはるちゃんみたいになでなでして貰ってもいいわよ?【ヒソヒソ】」
「え!いいんですか!?それじゃあ頑張ってきます!!【ビシィ】」
ずっと希望していたご褒美を受けてもいいと涼音から許可が遂に出た事で紫織のテンションは最上級に高まり涼音に敬礼してホールへと走っていったが嬉しすぎて周りが見えていないのかお客さんに危うくぶつかりそうになり優希に逆に注意されてしまった
「ははは、若いって良いわね〜」
そんな従業員を眺めながら涼音は次の料理の作業に入った
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