~STORY 163 7月26日 ③~
「お待ちしておりましたわ優希様。それに御母様に奏音さんもおはようございますわ」
総合体育館の入り口に着いた優希達の前にはすでに到着していた晴菜が待っていた
コンパクトな白Tシャツにアンクル丈白ワイドパンツに黒のサングラスを着け、黒と青のハイヒールサンダルを身につけた晴菜は普段優希の見る制服姿の晴菜と比べてとても大人っぽくて綺麗だった
「お、おはよう晴菜さん…。その、その服…と、とても……よく似合ってるよ?」
「まぁ。ありがとうございますわ優希様。お褒めに頂いて光栄ですわ」
優希に服を褒めてもらえて晴菜はニコッと満面の笑みで喜んだ
優希に屋内プールを誘われてからの数分の間、晴菜は家のスタイリストさん達に選びに選んでもらった勝負服を選択したのだが、優希の反応は大満足の満点物で晴菜は心の中でグッとガッツポーズを掲げた
「へ〜?お兄ちゃんってどっかのラノベ主人公みたいにヒロインの女子の服装なんて気づかない鈍感野郎じゃなかったんだぁ〜?」
「本当ね〜。でもメインヒロインである私の服装のことなんてな〜んにも気づかないのはおかしいと思うわ〜?」
「な〜に寝言言ってるのよママったら、主人公の母親なんて最後はメインヒロインに主人公を奪われる役目なんだから服装チェックなんてイベントに遭うわけないじゃない」
「あら、それ言ったら主人公の妹なんて想いを寄せても最終的には諦めてヒロインを渋々認める役目じゃない〜。そんな役目の子にだってそんなイベント起きないわよ〜。」
「やめて二人とも!なんかそれ以上は色んな人から怒られそうだから!!僕が悪かったからこれ以上は何も言わないで!!」
優希は奏音と椿の服装を思い切り褒めに褒めた
詳しい内容は…彼女らの意見通り割愛させていただく
「うふふ、御母様も奏音ちゃんも優希様に愛されてますのね。とっても羨ましいですわ」
「ふふふ、いいでしょ〜眞田先輩!これが麗しい兄弟愛って言うやつですよ〜」
「そうね〜。晴菜ちゃんもゆうちゃんに愛してもらえるように精々無駄な努力をするといいわよ〜?まぁでも、親子の絆に勝るものなんて存在しないと思うけどね〜」
北条親子のやり取りに晴菜は微笑ましい表情をしながら羨ましがると椿と奏音は表情を笑顔のままに如何にも「羨ましいだろ〜?」と晴菜に言い放った
決して服を最初に褒められたことへの仕返しではない
「そ、それじゃあ〜着替えに行こうか!僕は男子更衣室行くからまた後で…」
「それでは優希様、お着替えお手伝いいたしますわ」
気まず過ぎる雰囲気を回避しようと優希は男子更衣室に向かおうとするが晴菜は優希の後を着いて行こうとした
「な、何言ってるんですか眞田先輩!?そんな羨まし…ダメに決まってるじゃないですか!!その役目は奏音のもの…じゃなくてここは公共の施設で見ず知らずの男性が多いんですよ!?そんな事もわからない無知なお嬢様なんですか!?(まぁ眞田先輩がおっさん共に性的な目で見られようが知ったこっちゃないけどね〜。でもお兄ちゃんのお着替えは奏音のものなんだから!)」
「奏音ちゃんの言う通りよ晴菜ちゃん。ゆうちゃんのお着替えは私だけの特権なんだからそんな事許してあげるわけないじゃない〜」
優希のお着替えお手伝い発言に奏音と椿は目をギラリと輝かせて全力で止める
因みに彼女達は優希と着替えられるのならおっさんだろうと思春期真っ盛りの男子中高生だろうと他の誰に見られようが知ったことではない
視界の中に優希がそこにいる
それさえあれば彼女達には何もいらないのだ
「あのね三人共…?男子更衣室に女性は入っちゃいけないんだよ?あと着替えなら一人でも出来るから別に大丈夫だから…」
「優希様。少しお静かにして頂いても宜しいでしょうか?」
晴菜はニッコリ微笑みながら口元に人差し指を立てて静かにと優希を制した
「そうよヘタレお兄ちゃん。今お兄ちゃんの意見なんてどうでもいいの」
奏音はしっしっとどっか行けと優希を除け者にする
「待っててねゆうちゃん!私がゆうちゃんのお着替えを手伝ってあげるんだから!!」
「(´・ω・`)」
椿は優希に微笑みながら胸元で両手の拳を握ると着替えに付いて行く気満々であった
優希のことは大好きな彼女達だが、時には優希の意見を遮ってでも貫こうとするのが彼女たちの凄い所である
「『はい。至急お願い致しますわ【ピッ】』それでは参りましょうか優希様」
誰かに連絡を済ませた晴菜は携帯をしまいながら優希に更衣室へ向かうよう催促する
「え!結局付いてくるの!?ダメダメダメだよ!!中には他に利用しているお客さんだっているんだよ!?」
「はい。ですのでお願いして出て行ってもらいましたの。ですので私達しか更衣室にはいませんので心置きなく利用出来ますわ」
晴菜が男子更衣室を指差すと男子更衣室から続々と利用客が出て行く
ドアには【緊急整備の為利用不可 お手数ですが仮更衣室としてプレハブ小屋をご利用下さい】と張り紙が貼られていた
どうやら晴菜が電話した相手はこの体育館の責任者のようだった
「あっそうなの?それなら…っていやいやいや!ダメに決まってるでしょ!!結局僕と晴菜さん達が入ることに変わりないじゃんか!」
男子更衣室から人は誰もいなくなり確かに晴菜達の着替えを除く不埒者はいなくなったのだが優希が気にする問題には何も解決されていない
それ所か優希の着替えに付いてきても何も問題ないという条件が揃ってしまった
「でもお兄ちゃん、今日は私が服を着替えさせてあげたじゃん。眞田先輩はともかく奏音やママに今更恥ずかしがる必要ないよね?」
「今その話しなくたっていいでしょ!?」
「そうね〜。私もゆうちゃんのお風呂もお着替えの様子も常に記録してるから何も問題ないわね〜」
「ちょっと待って椿さん!?今聞き捨てならない事言わなかった!?って晴菜さんも「なら私も問題ありませんわね?みたいな顔しないで!!」」
結果として三人共付いて来ることになってしまい優希の服を誰が脱がせるか 誰が優希に水着を着させるかで議論となり、優希は自分で自分の水着や服に触れることなく着替えを完了させたのだったのだが何か大切なことを失った気がする
読んでいただき誠にありがとうございました!
是非!高評価、ブックマークよろしくお願いします!!
作品執筆力向上に繋がりますので作品への感想もお待ちしております!
では次回もお楽しみに!!