〜STORY 122 7月3日 お泊まり⑤〜
話は少し遡り、優希は使用人に連れられて浴室の更衣室へと向かった
その道中の廊下には詳しくなくてはっきり分からないが明らかに高そうな絵画や壺や置物などが飾られており、触れた際にもし落としてしまったりしたら一体いくら弁償するのだろうかと少し背筋がゾクッとし触れるのをやめた
「こちらが脱衣所になります。何かありましたら中に内線がありますのでそちらから連絡の方お願いします。」
使用人の人はそう言って一礼するとそそくさとその場から去っていった
「へぇ、浴室に電話があるんだぁ…。やっぱりお金持ちの家は一味違うよなぁ……。」
優希は家の設備に感心しながら浴室への扉を開いた
脱衣所の中はテレビの番組などで取り上げられるような高級旅館のような設備が整っていた
使用人の頑張りもあってかどれに対してもピカピカに輝いており、洗面台には晴菜やその母親が使うのだろうか化粧品や乳液などの美容用品が多数揃っていた
しかし優希は今そのことに触れることが出来ずにいた
設備に圧倒されたわけでも、意外とこんなものかと思うわけでもない
問題なのは……
「…………」
その脱衣所の中に着替え途中の女性が下着を掴んだままこちらを見て固まっていたのだった
「し、しし…失礼しましたあぁぁぁ!!?」
優希は瞬時に回れ右をして脱衣所の扉のドアノブに手を伸ばした
「(やばいやばいやばいやばい!!ここを使用してるってことはこの家の人なんだよね!?晴菜さんならいいのかも……って!晴菜さんでもいいわけないじゃないか!なに考えてるんだ僕は!!)」
自分はただ使用人の方に案内されただけでなにも悪くはないそう思うのだが、脱衣所にノックもせず入り、その上女性の着替えを覗いてしまった事実を考えるとどう考えても自分が悪くなってしまうと判断した
「(と、取り敢えずまずはここから出て!それからあの人が出てくるまで土下座して待とう!わざとじゃないって誠意を込めて謝ればきっと……)」
しかし優希は出口のドアノブに触れることは出来なかった
理由は一つ……覗いてしまった女性が優希の手首を掴んでいたからだ
「(あぁ…、僕は終わった……。僕のたった一度の人生)」
全てを悟った優希は今後覗き魔という十字架を一生背負って生きていくんだと半ば諦めかけたのだったが女性は諦めきった優希に微笑んだのだった
「うふふ、ごめんなさいね優希君。あなたの事は晴菜さんから詳しく聞いてたのだけど、まさかこんな所で出会うとは思わなかったものですから…私も思わず硬直してしまいましたわ」
女性はそう言いながら掴んだ優希の手を優しく撫で始めた
「え、えっと…その、あなたは……?」
「やだ!私ったら名乗りもしないでごめんなさいね?私は晴菜の母親の眞田麗美と申します。どうぞ娘共々末長くよろしくお願いしますわ?優希君」
「あっ、こ、こちらこそ挨拶もなしに失礼しました!!ぼ、僕は…晴菜さんのクラスメートの北条優希と申します!」
麗美は優希の手を離し少し距離を空けて、深々と頭を下げて挨拶をし、優希も麗美に習って
この優雅な感じは流石晴菜の母親だと思いたいのだが優希もまさか晴菜の母親と脱衣所でしかもバスタオル一枚の姿で初めて会うとは思わなかった
「あの…、知らなかったとはいえ着替え中に入ってしまいすみませんでした」
「あらあら…そんな謝られなくても私は何も気にしていませんよ?それにあなたは晴菜さんの婚約者と小鳥遊さんから聞いてますので実質あなたは私の息子になりますもの!何も問題ありませんわ!!」
「いえ、息子だからっていいという訳ではないと思いますが…?それに僕は晴菜さんの一クラスメートであって恋人でも婚約者でもないんですよ……。」
麗美の言い分に優希は冷静にツッコミを入れる
そもそも婚約者というものは親同士が決めて初めて成立するものではないのだろうかと優希は思うのだがお金持ちたちの間ではそういう事はあっさりしているのだろうか?
「まぁまぁ…若いのだから細かい事は気にしないものですわよ?」
「別に細かいこと言ったつもりはないのですが…?」
「そんなことよりも優希君はさっき母親である私の着替えを覗き見たことですし、一つ私のいうことを聞いてもらいますわよ?」
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ!!さっき麗美さんは覗いた事については気にしてないって言ってたじゃないですか!?」
「まぁまぁ…若いのだから細かい事は気にしないものですわよ?」
「だから細かい事は言っていないんですよ!!同じこと言わないでください!!」
バスタオル姿の麗美はくすくすと笑いまるで優希のことをからかっているようだった
優希もツッコミはするものの同級生の母親ということもあり、飛香や椿達のように強くはいけなかった(そもそも優希が強く言った試しはない)
「ふふふ、それではこれから私と一緒にお風呂に入りましょ?」
「…………はい?」
麗美はそう言うと扉に使用中の札をかけると優希の手を引っ張り有無を言わせぬまま優希を奥へと連れていった
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ありあっした~♪