〜STORY 115 7月3日 お泊まり交渉 壱〜
『もしもし椿さん?メールは読んでくれたかな?』
『うん。ゆ〜ちゃんがお泊まりなのは分かったわ。寂しいけれど夫の帰りを待つのも妻の仕事っていうものね。奏音ちゃんと二人で旦那様の帰りを待ってるわ』
『うん。確かに父さんは今ほとんど家にいないから合ってるんだけど、椿さんの言い方だとまるで僕が椿さんの夫みたいになってるからね?そこは間違えないで?』
出張から戻ってきて久々に再開した実の息子が最愛の妻の夫になっていたら父親は自ずと正気を保てないであろう
そんな事は絶対にあってはならない
あと椿の言葉の中に何故か旦那様ってワードが聞こえた気がしたのだがきっと気のせいだろう…
『それで…ゆ〜ちゃんはどこの誰の家にお泊まりをするのかしら?』
『あ〜…それは〜その……』
やはりというかわかっていたのだが、椿は優希の現在位置を確認してきた
この問いがくるのはわかってはいたのだがいきなり来るとどう答えたらいいか分からなくなってしまう
優希は脳内で幾つかのパターンを想定してみる
“ケース1 正直に話す”
『実は今日晴菜さんのお見舞いに行ってそのまま泊まりで看病する事になったんだ』
『“榛名”さん?ゆ〜ちゃんのクラスには“榛名”さんっていう男の子がいるのかしら?』
『……そうだよ。』
『晴菜さんっていうとゆ〜ちゃんの同じクラスのお嬢様の晴菜ちゃんよね?浮気に値するので今すぐ迎えに行くわ。いい子で待っててね?』
『……はい』
“ケース2 嘘を吐く”
『久々に璃玖の家に泊まる事になったんだ。男同士だから何も問題ないよね?』
『あらそうなの〜?それじゃあ後で武田さん家にお菓子とかお裾分け持って行くからその時はゆ〜ちゃんも下に降りて来て顔見せて頂戴?』
『あ、はは…り、璃玖のお母さんなら今日出かけるって言っていたからさ…』
『さっき璃玖くんママとお話してたけどお出かけするなんて聞いてないわ〜?』
『…………』
『浮気に値するので今すぐ迎えに行くわ。いい子で待っててね?』
『……はい』
“ケース3 誤魔化す”
『それよりも今日暑かったよね〜』
『浮気に値するので今すぐ迎えに行くわ。いい子で待っててね?』
『ちょっと待って!!まだ何も浮気になる要因を言ってないじゃん!!』
『浮気に値するので今すぐ迎えに行くわ。いい子で待っててね?』
『そんなドラ◯エのキャラクターの無限ループみたいなことしないで!』
とこんな風に優希は色々なパターンを想定したのだがどのパターンでも浮気と断定されて家に強制送還されてしまっている
っていうか毎度言いたいのだが椿と優希は親子なので浮気にならないはずなのだが…
『もしもしゆ〜ちゃん?さっきから全然反応してくれないけど何かあったの?まさかとは思うんだけど、今ゆ〜ちゃんの側に女がいるんじゃないでしょうね?誰なのかしら?飛香ちゃん?それとも晴菜ちゃんなのかしら?それともこの前デートの時に乱入して来たバイトの先輩の紫織ちゃんなのかしら?それともは家庭教師の葵ちゃんかしら?答えてゆ〜ちゃん?最愛の私や奏音をそっちのけにしてゆ〜ちゃんはどんな女とどこのホテルでイチャイチャしてるのかしら?』
暫く考え込んでいたらいつの間にか椿がヤンデレ化していた
低く一定の声のトーンで話している上に耳元にはドスッ!ドスッ!と何かを刃物で刺しているような音が聞こえてきて本当に怖い
「(ど、どうしよう…どう転んでも僕が助かる未来が見えてこない……。あっ!これならワンチャン助かるかも!?)」
今も耳元からお経のように椿の呪詛がドスッ!ドスッ!と擬音を添えて聞こえて来ているので優希は溜まった唾液の飲み込んだ
『あ、あのね椿さん?実は今ホテルに来てるんだ!』
読んでいただき誠にありがとうございました!
もし良かったら高評価、ブックマーク頂けたら幸いです!
作品力向上に繋がりますので作品への感想や意見などありましたら是非お願いします!!
では次回もお楽しみに!!
ありあっした~♪