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通常、彼女のように自身が発狂するかもしれない場所を希望する者は……いない。
学院には誰もが在籍する。統治政府より命があり必ず所属することとなる。
初等部、中等部、高等部とありリーザロッテは高等部の三年生に所属している。
自立を推奨されている学院のため、アルバイトは許容されているが一部は勤務をしていることもある。
人員が少なかったがゆえに希望が通ったリーザロッテは、唯一の執行者であり“最年少の執行者”だった。
「学院で何か?」
リーザロッテは感情を込めないように問いかける。
その学院にいるはずの数少ない友人らを思い浮かべ、不安に思う。
少ないということは、守るべきものがハッキリしているということとイコールである。
もし、ギルティが友人たちに襲いかかるなど、彼女たちに危険が降りかかりでもすれば、数少ない守る者すら守れなかった執行者して、一生かけても償いきれない……。
「最近、“罪”が多発しているのです。数日前、東の使徒団の一部が殺られたとの連絡が入りました」
オルタナティアが柔らかい眼差しを、深刻そうに歪ませ、悲しそうに言葉を発した。