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遠目には天使の純白の服にしか見えない装束。
縫い上げた者が丹精込めて縫い上げただろうと思われる精密な細工が美しく、紋様はところ狭しと施されている。
多少露になっている肌が見える装束の下には、白く細い、女性的な身体が想像できる。
「戻ってきて間もないですが、執行者リーザロッテよ。貴女に任務を与えます」
彼女の手の中に淡い光が集まり、冊子の形をとった。
「……なんなりと」
リーザロッテは、感情がこもらない落ち着いた声色で答えた。
光から現れた上司であるオルタナティアは、顔をあげる彼女に淡く優しく微笑みかけ、冊子を目の前へ運ぶ。
「貴女も在籍していることとなっている、学園は覚えていますね?」
オルタナティアの確認の言葉。
リーザロッテは肯定の意思を告げる意味をこめ、小さく頷く。
彼女は学園に所属しながらも、執行者になった変わり者だ。
さらにはこの上司も学園の教師をしている。
そんな彼女は表情を変えぬまま、それに対しての不満などの言葉も発しない。
必要とされているのは、遂行の意思のみ。
リーザロッテは本人の強い希望ゆえ、異例で処刑城に勤務していた。
希望者が少なく、一歩間違えれば発狂するかもしれない場所を選んだのである。