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そのゲートからしばらく進めば、さらに小さな城塞のような建物が建っていた。
表情を変えないリーザの瞳にも、その城塞が映る。
彼女はそちらへ足を向け、扉の前に立った。
仰々しいほど細工がちりばめられたそれには、悲鳴が形として扉というモノになったのかと疑うほど、底知れぬ恐怖を感じさせる。
とても悪意が浮き出るほどの悪趣味な扉だ。
そんな扉の入口には、細工の仰々しさには合わない、コード入力装置が設置されていた。
自身のプリーツスカートのポケットから、名刺ほどの大きさのメモ帳を取り出し、ページをめくる。
鍵になる番号を入力し、扉が開くのを待つ。
外見は城塞でも、中身はこぢんまりした建物だ。
その扉は、彼女が通り過ぎるのをただ待つかのように開き続ける。
彼女が通り過ぎると、扉は音を立てて閉まった。
建物の中は、ゴシックをイメージするかのような、白と黒のコントラスト。
細かい細工が刻まれているランプが、等間隔で幻想的に灯されており、静寂というべき空間。
彼女……リーザは、早足で通り抜け、あたりを見回した。
『リーザロッテ・アイシクル。このたびの任務、御苦労であった』
扉に負けぬような仰々しい言葉が、天井から降り注ぐ。