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そんな少女リーザは、地獄の門のようなゲートの前で一言名前をいう。
大人か子供かわからない不思議な声色で、吐き捨て釣り上った眉を嫌そうに顰めた。
鋭い深緑の瞳は前を見据えたまま。
ゲートは彼女の存在に気付いたかのように、ゆっくりと……、しかし意思を感じさせぬ機械的な動きで開く。
ゲートを早足で通り抜け、ゲートはそれを見計らったように、今度はゆっくりと閉まっていく。
地獄をイメージする外壁とは裏腹に処刑城の内部は、色とりどりの綺麗な花が咲き乱れる。
花びらと蝶が幻想的に舞う美しく儚さを感じさせる空間が広がっており、一瞬にして夢を見たかのような衝撃が襲う。
断末の悲鳴が、何度となく夢と現実のはざまに境界線を引くように奏でており、幻想を打ち消している。
この悲鳴は今だけのものではない。
獣が生きながらにして裂かれたような悲鳴が響き渡り、情景との違和感が恐怖を駆り立てる。
ただそれすら、調和した一部のように、幻想の中で生まれる協奏曲のようだ。
日常的に悲鳴が聞こえてくる異常が正常となりえた空間は、まさしく美しいだけの地獄。
その悲鳴さえなければ、もっとこの城は違った印象を万人に与えるだろうに。