007 - 下級魔術士なりの抗い
クロードに置いていかれ、一人取り残された僕は ただただ どうする事も出来ず木の陰に隠れていた。
一応、僕も魔術士の端くれ……ではあるのだけれど、基本的に使える呪文はサポート系のものしかない。
その為、増援が来てしまった場合は対処のしようがなくなるので、成るべく早く迎えに来てくれたら助かるのだけど……。
『安心しろ、増援などは来ない。
……もっとも、私自身が来たがな。小娘』
何処からか、また声が聞こえた。
この声は――さっきの女の声!?
「く、クロードはどうしたの!? まさか、やられ……
というか!何で僕の思っていたことが分かった!?」
『そんな立て続けに質問をするもんじゃないぞ』
またも女の声が聞こえたと思った瞬間、何かに ぐっ、と体を押さえつけられた……。
これは……蝙蝠!?
「……やはり、あの異形の者とは違い
貴様は手緩いようだな、小娘」
そう僕に告げると、黒いマントに身を包んだ女性が木々の間から姿を現した。
その目には光がなく、とても淀んだ眼差しをしている……。
「だが、まぁいい。あの異形に免じて教えてやろう。
私の従える蝙蝠は全てを見透かすのだ。
だから、お前の考えている事も お前の能力も手に取るように分かる……。
……ただ、あの異形の能力は全く分からなかったがな。
長くこの仕事をしているが、こんな事は初めてだ……」
そう言いながら、女はゆっくりとこちらへ向かってくる。
その姿はとても威圧感があり、正直言うと凄く恐い。
蝙蝠の大群に体を押さえつけられていなければ、今すぐにでも逃げていたところだ。
「……私としたことが、久々に感情が昂ぶり過ぎたせいで
お喋りが過ぎたかな?
まぁ冥土の土産には十分か。一瞬で終わらせてやる」
「意外と厄介な蝙蝠だったんだね……。
でも流石クロードと云ったところかな……なら!
僕も下級魔術士なりに、やれる所までやってやる!」
クロードだって頑張ったんだ、それなら僕なりの意地を見せてやろう。
そう思い、力を振り絞って呪文を唱える。
「冷気爆破!!」
これを唱えた瞬間、強烈な爆発音と共に僕を押さえつけていた蝙蝠達は予想通り吹き飛んでいった。
冷気爆破。自分の周辺に冷気を作り出し、その冷気を一気に爆発させるという呪文である。
……まぁ爆発音こそ強烈なものだけれど、それに反して意外と威力は少なくて、完全に名前負けの呪文なんだよね……。
「なっ、何だと……!? 蝙蝠達が……
貴様そんな能力が……!?」
しかし思いもよらず敵の女は驚いていた。
そんなにも僕は弱く見られていたという事なのだろうか……。そう思うと何だか腑に落ちない。
「下級魔術士を甘く見たのが運の尽きだよ!!
凍り付く錠前!!」
すかさず僕はいつもの拘束凍結呪文を唱える。
……が、残念ながら空中へ逃れられてしまった。
「ぐっ、今度は何だ! 氷呪文か!?
何故だ! 何故こんな田舎に氷呪文など使える者がいる!?
何なんだ……何なのだ貴様等は!?」
何なのだ、と言われましても。
こちらとしては、クロードはともかくとして 僕みたいな底辺魔術士の能力も見切れない貴女が何なのだ。としか言いようがない。
本当に、あの蝙蝠達に透視系の能力があったのかな……?
「こんな、こんな筈は……
――!? ごはァッ!?」
空中にいた敵は突如 物凄いスピードで飛んできた"何か"に思い切りぶつかった。
あれは……
「クロード!!
よかった! やっと来てくれたー!!」
「レイン!待たせてごめん!
ったく、よくも吸血鬼なんて打たれ強い
面倒な奴を呼び出してくれたね!
その上レインまで狙うとは……もう容赦しねーからッ!!」
クロードがいつになく怒っている……凄い魔力量だ。
ここまで怒っていたら、流石にあの女の人でも止められないだろう……。
いつにも増して強靭な彼を見て安心しきっていた……のだが
何故か突然 僕の体が動かなくなった。
いや、これは動かなくなったのではなく何かに拘束された……これは……糸!?
「な、に……!?」
「動くな、騒ぐな、抵抗するな。
発言する事も許さない」
僕を拘束したであろう人物が、耳元で囁いてきた……。
「いいか、私の言った通りに従わねば殺す」
突然そんな事を言われ頭の整理がつかない自分。
さっき"増援は来ない"とあの女は言っていたけど……やっぱり嘘だったの……!?




