006 - 久々の戦闘
「なんだ、なんなのだ!? お前は!!」
「さぁ、なんでしょうね! くろすけさん!!」
黒いマントの女は苦戦していた。
無理もない、彼女が思っていた以上にクロードの戦闘力は桁違いだったのだ。
彼女がナイフを投げれば、それを予測していたかのように避けられ
直接クロードに近づこうものなら、その変形した腕で切りつけられる。
戦い方の相性も悪い上、能力差もつきすぎたのだ。
そんな事は知らぬような表情で、クロードはどんどんレインから距離を取るよう女へ攻撃を重ねていく。
「くっ、ならば……集まれ蝙蝠共!!」
そういうと女の周りに大量の蝙蝠が集まる。
それと同時に、何匹かの蝙蝠がクロードへ襲い掛かる。
「ぐっ、成程! この森に凶暴な蝙蝠が多かったのはキミのせいだったか!
それにしても錯乱のつもりかい!? そんな事しても無駄なだけ……
「と思ったか?」
蝙蝠でクロードの視界を遮っていた間に、女は彼の背後へと周り込んでいたのだ。
「しまっ――
「もう遅い。その息の根……絶たせてもらうッ……!」
標的の隙をついた女は、手に持っていたナイフでクロードの心臓を貫いた……
筈だった。
「なッ……これは……!?」
なんとクロードは無傷だった。
否、ナイフで刺された場所のみが、霧のように消えていたのだ。
「くろすけさん、擬態能力って知ってる? まぁこの能力自体が
一般的なものじゃないから、この辺で知ってる人はいないと思うんだけど……
実はこれね、使いこなすと心臓の位置とか変えられるんだよね」
「なッ……なんだその能力は!!
ハッタリ言うのもいい加減に――
「ハッタリなんかじゃないヨ。
というか、僕にはもう"心臓"ってモノがないんだよね。
だからキミにボクは殺せない、絶対に」
「し……信じられるか、そんな事!!」
明らかに女は焦っていた。
最早、暗殺者としての面影はない程に。
「信じられなくてもいいよ。
取り敢えず どうする? まだ続けるの?」
「続けるに決まっている……!!
私に後退はないッ!! こうなれば奥の手だ!」
女は再びクロードと距離を取り、自らの指を噛んだ。
そして指から流れ出た血で何かの術式を唱える……。
「我が血の契約に従い、魔界の底より召し出でよ! 吸血鬼ァッッ!!!」
そう叫ぶと、女の周囲には三体の悪魔……吸血鬼が現れた。
「上位魔族の吸血鬼 擬似召喚!? それを3体も……
意外とキミ、やる時はやるな……
って、おい! 何処へ行く!?」
「今の私では、貴様を殺しきれん!
せめて同行者であるアイツだけでも葬る事にした!!」
そう言うと、女は目にも止まらぬ速さで姿を消す。
「なッ……待て! くそっ!
まさかレインから距離を置いたのが裏目に出るなんて……
そこをどけ! このなりそこないの吸血鬼共!!」
「グギギッ……」
クロードの意思とは反し、吸血鬼はクロードの前方を遮る。
今すぐにも襲い掛かろうという勢いだ。
「上位魔族と言え、擬似召喚じゃ話す事もままならないか……
ボクには守らなきゃいけないヤツがいるから
悪いけど魔界に帰ってもらうぜ!!」
早くレインを守らなくては。そう思いつつ、彼は吸血鬼達と戦闘を始めた――
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クロードから離れた女は、自身の従える蝙蝠と共にレインの元へと向かっていた。
(しかしアイツはヤバい、あんな化け物は殺せない……
どうしたら殺せる? いや、誰なら殺せるのだ?)
今まで出会った事もない強大な敵に、女は必至に思考していた。
(今の雇い主では到底 殺せないだろう。
あんな権力と暴力しかない男、早々に見捨てるしかない)
彼女は殺し屋ではあるが、所属している組織がある。
仕事として自身が雇われている間は雇い主の近くにいるのだが、期間が過ぎると忽然と姿を晦まし、元の組織へと戻る。
無論、それは生きる為に行っている仕事でしかなく、今回の様に見切りをつけたならあっさりと雇い主から姿を消してしまう。
組織のリーダーに危険が及ぶ存在が現れた場合は特に だ。
(今回ばかりは一度 組織へ撤退し、対策を練るしかなさそうだな……
しかし、その前に!
せめてヤツの大切な者を葬り去ってから戻ってやる……!)
女は決意を固め、ターゲットの元へと急いだ。




