005 - 出発
「水よし! 食料よし! 凍らせた盗賊よーし!
いざ、王国に向けて出発!」
僕達は予定通り王国へ向けて出発した。
流石にこの盗賊を抱えて長時間 移動するには大変なので、特別にカラック村から"ファーマーズカート"と呼ばれる荷物を運ぶ為の車を貸してもらった。
……人力車の為、車を引くのは交代しつつ移動するという建前なのだが、本当に彼は時間毎に交代してくれるのだろうか……? 少し不安な所である。
それにしても、クロードがいつになくテンションが高い。久々の遠出なのだ、無理もないか。
「クロードって意外と冒険好きだよね。
僕はのんびりと家に居る方が好きだけど……」
「そうやって引きこもるのは良くないと思うな!
若いんだから、もっと冒険した方がいいヨ?」
「そうは言っても……というか僕って何歳なんだろ?」
「んー……推定300歳くらいかな? あ、因みに僕は138歳だよ」
「……それだと僕の方がかなり年上じゃない!?
ないない!それはない!!」
冗談なのか本気なのか分からないが、僕とクロードはそんな会話をしながら、森へと入っていった……。
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「……相当歩いたけど、本当にこの道であってるの?」
森へ入ってから大体3時間が経とうとしていた。
道端で出てくるスライムや蝙蝠と度々戦闘を交えながら進んでいたが、目的のリドの村には まだ着かない。
そんなこんなで、流石に歩き疲れたので現在は休憩中である。
「道はあってると思うんだけど……。
一応、地図通りに進んでる筈……っていっても
目印になるものがないからなぁ……」
……本当に僕達は3、4ヶ月ほど前に旅に出てたんです、本当なんです。
いや、あの頃も地図を所持していた時、大体こんな感じだったけども……。
「それにしても、この森 蝙蝠多いね」
「確かに……スライムは別に珍しくないんだけど
この辺で蝙蝠は何か変だな……
それに凶暴性の高い奴が多いというか何というか……
……!? レイン、伏せろ!!」
「なっ、ンぼぁっ!!!」
クロードは突然 大声を上げると共に、僕の顔を地面に叩きつけた。
痛みには多少慣れたつもりだが、流石にこれは凄く痛い。
しかし突然こんな事をするのは何かわけがある筈……そう考えた その瞬間
『……まさか、この私の気配を察知する力量まであるとは……恐れ入った。
そこの銀髪の者! 名を何という?』
何処からか声が響いた、女性の声だろうか……?
「姿も出さない臆病者に名乗る名前はないねッ!
貴様こそ誰だ!」
『……貴様が名を名乗らないのならそれで構わない。
取り敢えず、そこの間抜けな盗賊をこちらへ渡して死んでくれ』
何か物騒な内容が聞こえたんだけど!? それに奴の目的は……あの荷台の盗賊か!!そう思い地面に伏せていた顔を上げたのだが……
辺りを見渡すと周辺の木々は倒れており、見るも無残な光景が広がっていた。
これはこの声の主がやったのだろうか?
相手の力量が分からない上に姿まで見えない……こうなってしまうと、久々に追いつめられた感じが出てくる。
「……レイン、奴の気配は分かるかい?」
「ごめん、察知出来ない……たぶん気配遮断系の能力持ちかも」
「そっか……。僕は何とか察知出来るから、せーの の合図で
指をさした方向に凍結呪文を撃って欲しい。
……出来るかな?」
流石はクロードだ、追いつめられた感覚に陥っていたのは僕だけだった。……と、感心なんかしている場合ではないので すぐさま返事をする。
「勿論。いつでも撃てるよ」
「おっけー……じゃぁ早速いこう……せーのッ!!」
「凍り付く錠前!!」
クロードの言う通り、指をさした方向に凍結呪文を放つ。
……が、どうも当たった感覚はない。しまった、外した!
『何処を狙っているのだ? そんな呪文で私を捕らえられると
「外したと思ったかい!? 実はそれフェイント!!
本命はキミの気を逸らしたかっただけなんだよね!!!」
そうクロードは言うと、隣にいた彼は……いない。
さっきまで僕の隣にいたクロードが、いつの間にか消えている……。
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レインが戸惑っているその瞬間、クロードは木の上で隠れていた敵の目の前まで移動していた。
右手を禍々しい鉤爪に変形させ、既に戦闘態勢である。
「き、貴様……いつの間に!?
それに その右腕は……」
「いや、まぁ……ボクは変な術ばかり持っていてね。
それはそうと、まっくろくろすけの不審者サン?
いま降伏するなら ひとまず見逃がしてあげるけど、どうする?」
「……私に降伏はない。
どんな手を使っても任務を遂行するのみだ。
兎にも角にも、今この場で貴様を殺す!」
そういうと黒く大きいマントを身に纏った人物は、隠し持っていたナイフを投げる。
――が、クロードはそんな行動を読んでいたかのように するりとナイフを避けた。
「そ。じゃぁ仕方ない……遠慮なくやらせてもらうよ、暗殺者サン?」
「ど、どこでそれを!?」
クロードの思わぬ1言に敵は戸惑っていた。
どこでその情報がバレた? どこでその情報が漏れた?という風に、先程の落ち着いた態度とは一転、困惑していた。
「久々の真面目な戦闘で腕が鈍ってるかもだから
ちょっと練習相手になってもらうネ」
そう言いながら、クロードは左手も鉤爪に変形させた。
遂に戦闘開始である……。




