003 - 妙案
「よしっ!着いたー!!」
一難あったが、僕たちは無事 目的のカラック村についた。
小さい規模の村ではあるが、ここの村の人達は皆優しく自然も豊かな村である。
「レインー、僕もうお腹すいちゃったよ。
早くご飯を食べに
「ご飯もいいけど、その前にこれ」
そう言って僕は背負っている氷の塊をゆっくりと地面に置いた……。
「あーっ……さっきの盗賊さんね……
取り敢えず、村長さんの所にでも持って…じゃなくて、連れていこうか。
……それにしても、まさか全身氷漬けにするとは……
君の少ない魔力を使ってまで、この人をおぶりたくなかったのか……」
「当たり前でしょ!?やだよ こんなばっちぃ!!」
そう、こんな漏らした人をおぶりたくなったので本人には悪いが凍結させてもらい、担いでここまで来たのである……。
これから食事となると、猶更 担ぎたくないからね……。
兎にも角にも、このままでは食事にありつけないので ひとまず村長の家へ行く事にした。
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「いやぁ、これはこれは!レイン殿にクロード殿!
我が家へようこそ!!今日は何の御用かね?」
軽快な挨拶で出迎えてくれたこの人こそ、このカラック村の村長さん。
立派な髭を蓄えた、明るく賑やかな御方である。
「村長さんこんにちは!
実はですね……」
そう言って僕は例のブツを出す。
「れ……レイン殿……それは?」
「森で襲い掛かってきた盗賊です」
「な、成程 盗賊……
しかし何故 彼は凍っているのかね……?」
「いや~村長サン、実はかくかくしかじかで……」
と、クロードは今までの経路を説明した……内容の一部を改変した上で。
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「成程……いやはや流石はクロード殿にレイン殿!見事なコンビネーションだ!
襲い掛かってきた盗賊に臆することなく立ち向かい
クロード殿の華麗な斬撃技を当てた瞬間 レイン殿がお得意の氷呪文で凍結させるとは!
流石、この村を救って下さった御二人ですな!」
「はは……ありがとうございます……」
現実とは似ても似つかわぬ作り話で、思わず苦笑いしてしまう…。
しかしそう、そうなのだ。
盗賊の話は嘘っぱちであるが、実はこの村の窮地を救った事がある。
それはつい3ヶ月ほど前のこと、旅の途中 ズタボロの状態でこの村へ立ち寄った僕達は村の人達に食料を恵んでもらい、寝床まで用意してもらったのだ。
丁度その時期、モンスター達の襲撃が何度かあったらしく、僕達は食料等を恵んでくれた恩返しも兼ねてそのモンスター達を一掃した。……といっても、9割方はクロードがやってくれたんだけども。
そして、そのモンスター退治のお礼に村の人達が 僕らの住んでいるあの家を建ててくれたのである。
その後、この村長さんと交渉をし、現在の"何でも屋"をする事となった。
持ちつ持たれつの関係は両者共に不満を感じにくい立ち位置となって、大事だからね。
「ふーむ、それにしても罪人を罰する場か……。
やはり王国まで行かない限りないかなぁ……申し訳ない」
「そうですか……分かりました、ありがとうございます!」
「いやいや、本当すまないね……。
最近は今回のような賊も増えてきたし
ウチの村もそういった施設を作るべきだろうか…」
寧ろ今までそういった施設がないのに よく村が成り立っていたな、と痛感する。
それほど平和だったという事だろうか……。
「んー……どうしようネ、レイン……こうなったら王国まで行っちゃう?」
「行くと言っても王国まで相当な距離あるからね…。
うーん、どうしたものか……
でも悪い人を野放しにはしたくないし……」
「うーむ……せめてこの村に、馬か何かいれば良かったのですが……」
「「それだ!!!!!」」
「んふぉう!?」
その手があった。
どうして、どうして長いこと旅をしていたのに今まで気づかなかったのだろう?
「クロード!」
「……僕としたことが。今まで思いもつかなかったなんて……!
いよいよボクの思考力もレイン並みになってしまったようだ……」
「クロードぉ!!」
「ごめん冗談。
村長サン、この村に馬について書かれた本とかないかな?」
「馬について……うーむ……
その、誠にいい難いのだけども……」
「……なさそう……ですか」
「うむぅ……申し訳ない……。
ただ、リドの村なら馬について……何なら、家畜についての本はあるだろう。
あの村には本が沢山あると聞く、きっとお目当ての本がある筈だ」
「リドの村……村長さん、地図ってありますか?」
「それならありますぞ、レイン殿!!」
そういって、村長は物凄いスピードで奥の部屋から地図を持ってきた。
「うん、王国への道より少しずれた所にあるけれど
目当ての本があったら、それも全然 気にならないかな。
ありがとうございます 村長さん!」
「いやいや、少しでも御二人の御役に立てたら私も嬉しいですぞ。
……明日、出発ですかな」
「はい。7日……いや、6日ほどお休みを頂いてもいいですか?」
「勿論! 寧ろお二人は働きすぎです、1ヶ月くらい休んでも罰は当たりませんな」
「村長サン、流石にそれは休みすぎでは……」
「はっは! 冗談です、冗談」
そんな会話をして、僕達は村長の家を後にし 村の食堂へと向かった。
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「やっとご飯にありつけそうだね、クロード。
それにしてもリド…だっけ?その村に馬のついての本、あるといいね」
「だネ。……しっかし、僕が馬に擬態すればいいなんて
今考えてみると恐ろしい発想だ……。
まぁ、馬みたいな動物なら擬態するのにあんま魔力を必要としなさそうだから
別にいいんだけどさ」
「……素朴な疑問なんだけど、僕に乗られるのは別にいいの……?」
「まぁ、女の子みたいなレインなら別に重くないだろうし
ボクは構わないよっ! ヒヒっ」
……クロードはこういう毒を偶に吐く(しかも僕以外にも)から問題児なのだ……。
といっても、それに見合った能力を持っているから、僕からは何も言えないのだけれども。
せめて野蛮な人を刺激しないように、という事だけはお願いしたい所である……。
まぁ取り敢えず、お腹もペコペコだし ご飯にしよう。




