033 - 休憩
クロードが無花果さんに兎の身体についての情報を教わっている間、僕は横になって体を休めていた。
すると……
「あの……レイン殿」
柘榴さんが話かけてきた。
「なんでしょう? 柘榴さん」
僕が問いかけると、柘榴さんはどこか申し訳なさそうに
「質問を……してもいいでしょうか」
そう言ってきた。
「いいですよ、僕で答えられるもので良ければ」
そう言って僕は体を起こす。
「では……率直に聞きます!
どうして貴方を殺そうとした拙者を助けたのですか!?」
「どうして……って」
いきなり答えに困る質問をされ、少しだけ言葉に詰まる。
ただ、崖から落ちてほしくなくて……死んでほしくなくて……。
少しだけ悩んだ後
「……死んでほしくなかったから、かな」
ほんの少し思考したけども、大した言葉も出てこなかったので正直な意見を述べた。
頭の悪さが出てるって? そんなコト知ってる!!
それを聞いた柘した顔をしながら一言
榴さんはポカーンと
「えっと……もしかして、レイン殿って……
……天使様?」
「……どうしてそうなるの!?
というかっ! な、なんで天使!?
この流れなら、普通は"アホ"とか、"バカ"とか言わない!?」
「いや言いませんでしょう!?
だってそんな可愛らしい笑顔でそんな事を
仰るなんて! 天使様 以外の何者だと!
女神か! もしや女神様なんですね!?」
「いやいやいや違うから!
何かグレードアップしてるし
そもそも僕は男……」
その言葉を聞いた瞬間、柘榴さんは目を見開く。
まるでとんでもないものを見ているような表情を浮かべ
「……!?
お、おとこ!?」
あ、あわわわわ……
という事は、ツいていらっしゃる……!?」
「……あの、柘榴さん?
もしかして、今まで気づいて……」
「……いなかったです……」
それを聞いて流石に絶句してしまった。
まさか彼女に男だと思われていなかったとは……
香さんには気づいてもらえていた為、少し自信がついたのが効いてしまい
思わず思考停止してしまった。
ショックのあまり暫く無言になり、気まずい空気が辺りを包む。
(し、思考停止なんかしている場合じゃない!
何かしら気の利いた事を言わないと……!)
流石にこの空気を変えなければ、と言葉を考えた数秒後――
「れ、レイン様! 申し訳ございません!
とんだ御無礼を働きました!
こうなれば……この身、お好きにお使いくださいッ!」
そう言って唐突に服を脱ぎ始める柘榴さん。
……って、待って!? 何でそうなる!?
「いやいやいや何で身を捧げるの!?
取り敢えず脱がないで!
女の子……じゃなくて女の人は
そんな簡単に服を脱いじゃ駄目だから!!」
「ひょえっ!?
で、ですが! 殿方に御無礼をしてしまった時は
女人である この身を捧げれば解決すると聞いた事があります!!」
「いやそれ どんな間違った情報!?
どこで知ったのさそんなコト!?」
「いや、無花果が笑いながらそう言った事がありまして……」
「無花果さん……
後で注意しておこう……」
多分、無花果さんは何かの話の弾みでふざけながら答えたんだろう。
"笑いながら"という事なので、勿論 本気で言っているわけじゃなかったんだろうけど、まさかこんな思い切った事を本当に実行するとは……。
もしかしてこの子……じゃなくてこの人、実は相当な天然なんだろうか……
「取り敢えず柘榴さん!」
「はいっ!?」
「今後 誰かに失礼をしても絶対に服は脱いじゃ駄目!
身を捧げるのはもっと駄目です!
もしそんな事があっても柘榴さんに代わって
僕が全力で謝って解決するので絶対にしないでくださいね!?
……分かりました?」
「わ、わかりました!
……それにしても、こんな拙者の為に
そんなことまで言っていただけるなんて……
あの! 質問を続けてもいいですか!?」
「構いませんよ」
僕がそう言うと、柘榴さんはキラキラした目で
「レイン殿の好きなタイプは!?
好みの食べ物は!?
婚約のご予定は!!?」
と怒涛の弾丸クエスチョンが飛んできた。
……これ何か質問が変な方向に飛躍してない!?
「あ、あの、柘榴サン……?
何か質問の方向性がズレてません……?」
「だって! 今まで殿方には抵抗があったのですが
レイン殿なら全然大丈夫ですし
寧ろ もっとお近づきになりたいといいますか……
ですので! ですので、拙者はもっと貴方様の事が知りたいのです!」
……こ、困った。
彼女は本気なのだろうけども、流石にそんな目で見れないというか……
とても失礼だけど、こんな小さい子をそういう目で見たらいけないような本能的なモノが……。
「駄目……ですか?」
柘榴さんはうるうるとした目をしながら、上目遣いでこちらに近づいてきた。
うぐっ……可愛い、素直に可愛いのだけれど やっぱりそんな目では……
「えーっと……駄目、とかそういうわけじゃないのですが……
何というか、突然すぎると いいますか…!」
「す、少しずつ! 少しずつ拙者の事を好いていただけたら!
これからどんどん活躍いたしますので!
……あとは……その……
拙者に"さん付け"はしないでほしいです!
あと敬語もおやめください!
クロードと同じ扱いがいいです!」
「わ、分かった。
取り敢えず、さん付けと敬語はやめるよ。
……その代わり、柘榴も敬語はやめること!
それが条件ね」
それを聞いた柘榴は驚いた顔をする。
「う、うぐッ……!?
自らの主に相応しい名称を使わないのは流石に……!
それは婚約をして頂いた時に……」
「こ、婚約って! というか主人になった覚えは……」
「あの時 命を救っていただいた時から
レイン殿は拙者の主人です!」
「そ、そっか……」
見事に言い切られ、言葉の力強さに勢い負けしてしまい言い返せなかった。
大の男がなんと情けないことか……。
それにしても……1段落したら ちょっと眠くなってきた。
「えっと、ごめん。
少し眠くなってきたし、もうちょっと休んでもいいかな……?」
「あっ、すみませ……ごめんなさい。
お疲れ……疲れていたのに、こんな話をしちゃって……」
「大丈夫だよ。
というか、お互いに疲れているだろうから
ひとまずはゆっくり休むことにしよう」
「う、うん! 分かった!
……ふふっ、ひとまずは一歩前進……!」
「何か言った?」
「いーえっ、何も!」
何か言われた気がしたのだけれどよく聞こえなかった……まぁいっか。
襲い掛かってくる眠気には勝てず、僕は少しだけ眠りについた。




