031 - 黒いローブの者(7)
「……あ、あの!
何してるんですか、二人とも!」
さっきまで仇だのなんだのと言っていた人達が深々と僕に頭を下げていたのを見て、正直 脳の処理が追い付かず、暫く言葉が出てこなかった。
「この度は本当に申し訳ござらんかった!」
「拙者達、どうやら貴方様を人違いした挙句
命まで取ろうとしてしまいました!
何でも致す故、この詫びは必ずや……」
「……えっと、どういうコト?」
あまりの急展開に、完全に思考停止した。
そんな僕にクロードが説明を入れる。
「つまり、誤解が解けたって事。
まず、そこの獣人のイチジクサンが
ザクロって子に今までの経路を説明してたみたいなんだ。
そんで、その途中に 崖へ着いたボクがわざわざ
レインのコトとボクのコトを二人に教えたの」
なるほど、それで めでたく誤解が解けたという事か。
しかし頭まで下げる必要はないと思うのだけれど……。
僕が納得すると、クロードは続ける。
「ザクロさん、中々信用してくれなくて
説得するのに大変だったんだから、感謝してよネ……
といっても、8割はイチジクサンのおかげなんだけど……」
そうしてイチジクさんの方を見ると、彼女はまた深々と頭を下げた。
いやそんな下げられても困るというか、下げられるような身分じゃないんだけど……僕……。
「あの、もう頭をあげてください」
「そ、そういうわけには!!」
「そうじゃ! 儂らは酷いコトをした!
何か命令の1つや2つ効かねば
この罪の近郊が保てん!!」
ザクロ達の意思は思った以上に固く、中々顔を上げようとしない。
これじゃ埒があかないし、そもそも居心地が悪い。
それなら……
「じゃぁ、貴方達にお願いがあります」
「なんじゃ! なんでも申してくれ!」
「お願い! ききます!」
その言葉を聞き、バッと勢いよく顔を上げた二人。
やっと顔をあげてくれて、ひとまずは安心だ。
僕は続けて言った。
「僕の友人を助けてほしいんです」
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「成程、レイン様は賊に捕らえられた
香という者を助けたいのですか……」
「盗賊……」
ザクロは"盗賊"という単語を聞いた瞬間、一瞬だけ暗い表情をした……気がした。
何か盗賊に嫌な思い出でもあるのだろうか?
「了承した、レイン様。
いくらでもこの身、使ってくだされ」
イチジクがそういうと、横にいるザクロも首を縦に振った。
まさかこんな一つ返事で承諾してくれるとは……。
それにしても、"様"って何だろう"様"って……。
「あ、ありがとうございます。
えっと……でも取り敢えず
"様"付けはやめてくれないかな……」
「そ、そういうわけには……」
「じゃぁせめて……えーっと……
殿って呼んでほしいかな……」
「殿……レイン殿、か……
りょ、了承した」
ひとまず了承してくれて一安心だ。
流石に様っていうのは気づかれしてしまうので助かった。
後は……
「じゃぁ、落ち着いた所で改めて……
自己紹介、しません?」
「そ、そういえば!」
「まだ拙者達のことを言ってませんでしたね!?」
考えてみたら、まだ挨拶等をしていなかったことに気づく。
これから暫く一緒に行動する上で挨拶は大事だ。
「僕はレイン。
なんでも屋を経営してる者です。
そしてそこの銀髪が……」
「クロード。ジャギ=クロードだよ。
レインの相棒してる、よろしくね」
と、クロードが自己紹介をした時、何故かザクロがムッとした顔をした……気がしたのだが、すぐに表情が元に戻った。
ただの気のせいだろうか?
「儂はイチジク!
漢字という文字列では"無花果"と書く!
種族は獣人族の兎じゃ!!
そしてこっちにいるのが…」
軽く自己紹介した無花果さんは、ザクロの方向を見る。
「ザクロ。
漢字だと"柘榴"と書きます。
どうぞよろしく……レインさm、殿!!
……あとクロード殿」
何故かクロードはついでみたいな扱いをする柘榴。
何か明らかに敵対視しているように見えるけれど、僕が気を失っている内にクロードが変なコトでも言ったのだろうか……。
「あっ、因みに柘榴はドワーフ族じゃ!
まぁドワーフと言っても、この子はあまり頑丈ではないから
出来れば命令は儂 優先でしてほしい!!」
「わ、分かりまし
「ドワーフ族だって!?
って事は……キミ、女の子ォ!?」
急にクロードが驚いた声をあげる。
えっ、女の子? まさかこのショートヘアーのオレンジ髪っ子が??
「あの、クロード……ドワーフ族って?
それに女の子って……」
それを聞くと、クロードは僕の耳元に近づき伝える。
「あっ、ドワーフ族っていうのはね……
男は生まれた時から立派な髭を蓄えていて
逆に女性は髭こそないけれど
男の子みたいな見た目をしている種族なんだ。
そして背がとっても低い種族でね。
あと……これが一番 驚くべき点なんだけれど……
数百年くらい前に一族まるごと、絶滅した筈の種族だよ」
「……えっ」
情報量が多すぎて頭がついていかないけれど、取り合えずこれだけは分かった。
とても辛い過去がありそうな子だ、この子。




