002 - 奇襲と奇術
「しかし沢山採れたね、レイン」
「うん! 村の人達、喜んでくれるといいなぁ」
籠いっぱいにキノコを詰め込んだ僕達は、一度 この依頼物を届けようと村へ向かっていた。
「しかしまぁ……お昼前に採取が終わったのは良かったネ」
「そうだね、届けた後はそのまま 村の食堂でご飯でも食べよっか。
今日はお魚料理でも……」
「え~、ボクは肉とかの方がいいんだけどなぁ」
他愛もない話をしながら森を進む僕達。
その時だった――
「…レイン」
「うん、わかってる。
……そこッ!! 凍り付く錠前!!」
気配を感じ取った次の瞬間、木の物陰に隠れていた者の足を氷呪文がすかさず捕らえる。
「ぐわッ!? テメェこの小娘! 魔法なんか使いやがってェ!!」
そこには大きな声を上げる大男がいた、盗賊だ。
「こんな所で何をしているんです? お兄さん」
「あ? 何をしてるか、だって?
そりゃあ、俺の格好を見てわかるだろ。
こんな木々の生い茂る森の中
貧弱そうな銀髪野郎と水色髪のリボン女が食料持って歩いてる……
なら、やることはただ一つだろうが」
「……うんうん、おじさんの言うコトはよォ~く分かったよ~
でもそこの水色髪のレインはともかくとして
僕が弱そう……だなんて。それは聞き捨てならないなぁ」
クロードはいつもの雰囲気とは少し違った物腰で話す、マズイ。 これは相当キレている。
「あの……クロード? 少し落ち着いて?
……というか、今とっても失礼な単語が聞こえ
「ハッ!
お前みたいな優男を見て”強そう”だなんて思う奴の方がおかしいと思うねッ!
……つーかテメェ、誰に向かって口きいてんだ? ア゛ァ゛ッ!?」
「あの、無視しないでもらえますか。僕の話を聞
「…あっ、そう。
じゃあ見てて、見ててね おっさん」
そう言うと、クロードの外見がみるみると変化していった。
段々と大きくなっていく体、巨大で邪悪な翼、次第に生えてきた美しくも禍々しい鱗。
全てを喰らうかの如く大きく開いた口、漆黒の目玉……
これは――
様々な伝承によく出てくるドラゴン、ファフニールである。
「あっちゃ~……
その姿は村の人達が見たら混乱起こすからやめてって散々言ってるのに……」
クロードは一般的に"奇術"と云われる"擬態"の能力を持っている。それも上位クラスの。
基本的に擬態能力といえば姿形を変えるだけのものであるが、彼は違う。
擬態したモノの特徴や能力、全てを再現することが可能なのだ。
最も、自分が把握できる部分までであるが。
そしてドラゴンに擬態したクロードは、その大きな口で1言……
「人の子よ……この私のことを貧弱と言ったか?」
「!? め、めめめ滅相もありません!
そんな事は1言も申しておりませんです! ハイ!!」
慌てながら盗賊は言う。
さっきの態度とは打って変わって、とても情けない姿である…。
「……その魂に誓い、断言は出来るか?」
「う、うっ…い、言ってないですゥ……」
あの強面がもう涙目だ、かわいそうに。
こんな巨体、常人が見たら卒倒する所だが流石は盗賊。涙目になるだけで済んでいる。
……いや、涙目になる盗賊もどうかと思うけども。
「……やっぱ見てくれだけのおっさんじゃん。
あーあ……こんなヤツ相手に能力使った僕が阿呆だった」
そういうと、クロードは瞬時に元の美青年へと戻る。
彼は負けず嫌いだ。
特に自分の事を貶されると自棄になってしまう癖がある。
これが彼の非常に悪い所である。
「あーっ、そうだ。
言い忘れてたんだけどね、レインは小娘じゃあなくて……
…… 男 の 娘 だよ、盗賊サン?」
そういった次の瞬間、彼は昏睡呪文を唱えた。
別にそんな情報、伝える必要もなかったとは思うのだけれど……。
「あーあ! 折角お昼前には着けると思ったのに、もう無理そうだネ……」
「……まぁ、クロードのおかげで
危険人物を捕らえることが出来たんだから良かったんじゃないかな?
取り敢えず、この人どうしよっか」
「そうだなぁ……事のついでだし、村に連れて行こうよ。
村からの経由で王国の牢か何かに送ってもらえるでしょ」
「そうだね、そうしよっか」
そう言い、僕はまた氷呪文を唱え 盗賊の手足を拘束した。
「……あっそうそう、それとね
……その人、漏らしてるみたいだからレインが担いで行ってね。
キノコの籠は持ってあげるから」
「嘘でしょ!? 嫌だよ!?」
……見た目の割には割と普通に情けない盗賊だったようだ……。




