024 - 合格
魔力の切れた僕達は、こちらへゆっくりと にじり寄ってくるアグネスさんを待つしかなかった。
「よくも……よくぞ……」
ゆっくりと僕達の近くまで来たアグネスさんは、突然物凄い勢いでこっちに近づき そのまま勢いよく手をガッ!と捕んできた。
"背負い投げか何かをされるか!?"と少し身構えた次の瞬間
「レイン殿ォ! よくもよくも、よくぞ私を氷漬けにしました!!
素晴らしいです、充分です! 合格です!!」
……なんて、予想外の事を言ってきながら 猛烈な握手をされた。
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「いやーっ、それにしても素晴らしい!
本当に素晴らしい連携でした!!」
「そ、それは良かった……ありがとうございます」
というわけで、何が合格なんだかサッパリよく分からないまま 僕達はアグネスさんに連れられた民家の中にいる。
現在はアグネスさん、クロード、そして僕の三人だけで話をしている形だ。
「ところでアグネスサン、さっき言ってた"合格"って話は?
ボクらはいつから試験をしてたの?」
「それはですね……試験という程でもないのですが
勝手ながら、戦闘を交えて貴殿達の力量を測っていたのです。
……そう、盗賊団のアジトに乗り込めるほどの力量があるのかを」
なるほど、そう言われると何か納得が出来た。
弱い者が勢いのままに盗賊団のアジトなんかに乗り込んだ日には、きっと返り討ちにあって身ぐるみはがされて終わりだ。確かにそれは避けたい。
「貴殿らのような力量なら安心して
盗賊退治を任せる事が出来るものです」
「なるほ……あれ? 任せるというと?
アグネスさんは行けないのですか?」
「それは……」
突然、アグネスさんは下を向く。
これは訊いちゃいけない事だったかな……。
そう思うと、アグネスさんは信じられない事を口にする。
「……王国騎士団は、何故か盗賊を倒す事を禁止されているのです」
それを聞き、疑問に思ったクロードが問う。
「禁止? ……そりゃまたどうして?
やつらは悪いヤツらなんだろ?」
「そう……なのではありますが……
これは国王様の命令なのです」
「国王様の……って、なんでまた!?
どうして国王がそんな悪いヤツを野放しにしてるんです!?
何か弱みを握られて……!?」
「分かりません……昔は悪い者は絶対に許さぬ正義の王だったのですが……
ある日 突然、国王様は変わってしまった。
何がきっかけなのかは分かりません、本当に突然
"盗賊を裁く事を許さぬ"と言い始めたのです……」
国王に仕えている彼らは国王の言う事は絶対。
確かにそれを違反したら反逆だ。さいあく罪に問われる。
しかし……これは……。
「……成程ネ。
でも、そんな国王に仕えた上で正義を名乗るんだ」
「それは……」
突然、クロードは心の無い事をハッキリと言い始める。
「そんな罪人を見過ごすような国王に仕えていて
キミ達も大変だネ?
正義の王国騎士団が聞いてあきれちゃう」
「こ……国王様を悪く言うな!
あのような立派なかたを私は裏切れん!
今はきっと、心に迷いがあられるのだ!
そう、何か思う事が……きっと!!」
突然、アグネスさんは激情した。
そりゃそうだ、信じて仕えている国王の悪口を言われた上、騎士団のことまで悪く言われてしまえば頭にくるのも仕方がない。
でもそれは事実であり、真っ向から否定をしようが無いというのも痛い所……。
そして必死に国王を弁護していたアグネスさんは言葉に詰まったのか、その内 黙り込んでしまう。
誰も何も発言をせず、微妙な雰囲気が部屋を包んだ。
暫くすると、クロードがまた口を開く。
「……まぁそれがキミ達のやり方なら仕方ない。
取り敢えず盗賊団のアジトだけ教えてもらえないかな?」
「あ、あぁ……」
戸惑いながら返事をしたアグネスさんは懐にしまっていた地図を取り出した。
「極秘で調査した盗賊団のアジトだ。
ヤツらは今、この辺りの洞窟にいる……」
そう言いながらアグネスさんは とある場所に指を指す。
この位置は……
「王国近くの洞窟か……」




