001 - 仕事する人は楽じゃナイ
ここは…ここはどこだろう。
ふと気が付くと、辺りは一面にそびえ立つ木々。 森だった。
僕は誰だ? 何者なんだ…?
思い出せない、自分の事なのに何1つとして。
「……人の気配」
そう感じ取り、辺りを見渡す。
丁度 後ろの木々の影から、誰かが こちらへ向かってきている。
あの人は誰だ?
僕と とても親しい仲の人…だったような……。
「……あの…ここで何をしているの……?」
声をかけられた。
可愛らしい服を着た、ピンク髪の少女だ。
「き、君は……」
彼女の顔を見て、自分の中でもやもやとしていた霧が次第に晴れていく。
「あっ、ごめん…自己紹介まだだったかな…?私は――――……!!
あなたは……?」
「えっと…僕は……」
何故か自分の名前が思い出せない。
しかし、これだけは分かった事がある。
貴女は……僕の…僕の大切な……!!
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「うわぁああああ!! 痛ぁぁぁぁぁぁ!?」
ガツン!と固い何かが頭に当たり、目が覚めた。
ここは……自分の寝室だ。この世で一番 心安らぐ安息の地である。
そして目の前には――
「ったく、レインってば寝坊助だなぁ……。 仕事、きてるヨ」
さらさらな銀色の長髪、オシャレなロングコート。
そして整った可愛くも恰好いい顔。
僕の相棒であり、唯一の家族。ジャギ=クロードだ。
「うぅ…しっかし痛いなぁ……折角 久々にいい夢を見てたのに、仕事かぁ……」
ヒリヒリと痛む頭を抑えながら、仕事モードに切り替えようと頑張る自分。
「へぇ、良い夢……ね。どんな夢だったのさ?」
「それはね……えーっと…… ……なんだったっけ?」
「忘れたのかヨ!!
……まぁ、夢なんてそんなモンだよね。さぁさぁ、仕事しよう仕事!
せめてレインには働いてもらわないと!」
「君も働くんだよ、クロード!!」
「ふふ、はいはい。
取り敢えず朝ご飯 出来てるからそれ食べて」
今日もやってきた。こんなふざけた会話から始まる1日が。
そんなわけで、僕の名前はレイン。
何故か昔の記憶が飛んじゃってる下級の魔術士だ。
今でこそ もう開き直ってはいるが、昔の記憶がないというのはやっぱり気持ち悪いもので、実はこの前まで"自分探しの旅"っていうのを相棒のクロードとしていた……のだけれど
ひょんなことから、平原にポツンと立っている この一軒家にて"何でも屋"を経営することになった。
「……わぁ、今日の朝ご飯もおいしそうだね!」
「良い穀物が採れたそうで、カラックの人達に感謝しないとネ」
この一軒家の近くには"カラック"という村があり、この何でも屋の主なお客様がその村人達である。
その村は栄えてこそはいるが、小さな村の為に"ギルド"という施設がない。
ここから遠くにある王国なら、そういった施設はあるのだけれど……とにかく遠すぎる。 徒歩だと大体、20日程度はかかる距離だ。
その為、ギルドのない村の為に僕達がギルド代わりの何でも屋をする事にした。当時 食料や寝床に困っていた僕達を助けてくれた恩返しも含めてね。
村の人達も何だかんだで困りごとが多いらしく、些細な事でも僕達を頼ってくれる。
お金払いも良くて、寧ろ助かっているのはこちらの方……というのは秘密だ。
それに頼まれ事をされるのも嬉しいもので、毎日励んでいるという感じでもある。
……といっても、荒っぽい事となると普段 僕はサポート役にまわり、おおよそはクロードがやってくれるから何とも言えないんだけどね……。
「これで…よしっ! 準備完了!
しかしこの、おふしょるだー?っていう服、本当に機能的で良いよなぁ……
もうあの街に行く事はないと思うし、もっと買っておけばよかった」
買わない後悔より買う後悔って言う言葉をどこかで聞いたけど、今更になってそれがよく分かる今日この頃……。
……それにしても、今更 自分やウチについての紹介とか誰にしてるんだろう自分は?
最近、働きづめで少し疲れているんだろうか……。
「おーい! レインー! 今日の仕事内容見たよねー!?
早く森のキノコ狩り行くよーッ!!」
「あっ、はいはーい! 今行くよー!」
……こんな自室の鏡の前で、のんびりしてる場合じゃなかった。
こっちもこっちで生活かかってるんだから、休んでなんかいられないよね!
今日も頑張らせてもらいますっ!
……どうか今日も争いごとが起こらず仕事が終わりますようにっ!!!




