014 - メンバー加入,芸術家
「擬態……擬態!!」
クロードは精霊の発言を素直に飲み込めていないのか、あれから何度も擬態を試していた……。
「……くそっ! 駄目だ……
かろうじて簡単な生物には擬態出来るけど、ドラゴンとかの巨大な生物や
構造の難しいものには擬態が出来ない……」
「……薬の影響です。
今の貴方は魔力を持つと危険な状態なので
一度 それらを全て無くした上で、ある一定量まで
魔力を抑える処置をさせてもらいました」
「という事は、クロードの この状態を治さない限り……」
「ええ……ごめんなさい、こんな荒療治となってしまい……
でも、こうしないと貴方は助からなかった」
精霊は険しい顔をしながらクロードへ伝える。
まさかこんな事になるなんて……
「クロードの力を戻す方法はないんですか?」
僕が質問をすると精霊は更に難しそうな顔をした。
「今の所は……」
「そんな……
じゃぁ薬を打ってきたやつを見つけて倒すだなんて
とてもじゃないけど……」
"無理に決まっている"、僕はそう思い 半ば諦めていたのだが、それに対しクロードは予想外の一言を言い出した。
「……やってろうじゃないか……」
「へ?」
「"やってやろうじゃないか"ってんだ!!
たかだか、擬態が使えなくなっただけだろう!?
そんなの些細な問題さ!!
それに、アイツらの住処に解毒剤みたいな物はある筈!
アイツら捕まえて脅して さっさと魔力を戻してもらえば
それで全ては元通り!!」
な、なんて投げやりな……。
こんな状態になっても、普段通りの自信でいられるとは流石クロード。
でも今回ばかりは いくらなんでも無謀というか何というか……。
「でも脅すって言ったって、そんな力を持ってる人……」
「……精霊サン」
「な、なんでしょうクロードさん?」
「報酬の前借りとまでは言わないから
何か武器になるようなものってないかナ?」
「ぶ……武器になるようなものですか……
うーん……
あっ」
精霊は何か思いついたのか、閃きのポーズをしながら香さんを見つめた。
「……どうしたの? 精霊?」
「香……この者達と旅をしなさい」
「「「えっ?」」」
精霊の予想外の言葉に、皆が動揺をしてしまう。
メンバーが増えるのはこちらとしてもありがたいけれど、いくらなんでも急な提案な気が……。
「いやいやいや、旅って!?
今まで、ずぅっと この森で暮らしていたぼくだよ!?
そりゃ外の世界を見れるのは興味深いけど、流石に怖いというか!
それにぼく生身の人間だし!!武器じゃないし!!」
「大丈夫、大丈夫。
貴女には精霊の加護がついていますし、きっと大丈夫」
「んな適当なぁ……」
その発言を聞いて落胆する香さん。
確かに、いくら精霊といえど なんて適当な発言だろうか……。
「それに貴女には他の者にはない能力があります。
きっとお二人の力となりましょう」
「えー……本当にあんな能力、役に立つのかなぁ……
というか二人はこんなのがついて行っても大丈夫なの?」
「まぁ……香さんさえよければ、僕は問題ないよ」
「ンー、右に同じく。
それにいざとなったら見代わりに出来るし」
いやいやいや、身代わりって。
本当、冗談なのか本当なのか分からない事 言うなクロードは!!
香さん苦笑いしてるよ!!
「あ、はは……じゃぁ、まぁ……
改めて、ぼくの名前は彩道 香。
"彩"のサイに"道"のドウ、最後に香のカオルでサイドウ カオル。
しがない芸術家みたいな事してるかな。
こんな奴で良ければ、これからよろしく」
そう自己紹介をし、ペコリとお辞儀をする香さん。
それにつられて僕もお辞儀をする。
「こちらこそよろしくね、香さん」
「そういえばボクも自己紹介してなかったネ。
改めて、ボクはクロード。
上級魔術士……だった、ジャギ=クロードって名前だヨ。
どうかよろしく……。
にしても、男ばかりのメンバーなんて、むさ苦しいにも程が……
「あっ、言い忘れてたけど ぼくは女の子だから」
「えっ!?」
完全に意表をつかれたようで驚愕するクロード、久々に彼の驚いた顔を見た気がする……。
まぁ流石に驚くよね、一晩ほど一緒にいた僕だって分からなかったもの……。
「んん……まっ、レインに変な気は起こさないようにネ。
因みに、君の能力って何なのさ?」
「あー……それは、まぁ見てのお楽しみって事で……」
この場では公表しない香さん、何だか強者って感じがする……。
早く彼女の戦闘を見るのが楽しみだ。
「ふーん……まっ、いいや。
僕達の足は引っ張らないでネ」
「クロード!
まったく……冗談ばかり言うけど悪気はないんだ。
改めて、よろしくね香さん」
「ふふっ、分かってる。
よろしく、レインくんにクロードさん」
香さんは笑顔でそう応えてくれた。
「ではレインさんにクロードさん、そして香……
危険な旅にはなるとは思いますが 依頼の件、お任せしました」
「分かりました。
いつ奴らを倒せるかは分かりませんが
終わったらまたこの場に戻ってきますね」
「必ずアイツらに痛い目 見せてから戻るからね、精霊サン」
「じゃぁ精霊、行ってくるね」
「はい。
どうか皆様の無事を祈っています」
僕達は精霊に一礼をして、その場を後にした。




