013 - 昔話,戦争
……突然ですが、この私 森の精霊が依頼内容に関係する昔話を、あくまで"時代を繋ぐ者"として、彼方達に語りましょう。
「な、中々唐突ですね……」
ええ、すみません……ですが、一から説明するよりも この方が分かりやすいと思いますので、どうか静かに聞いて下さい……。
昔々……この世界にも 人々の争いが絶えない時代がありました。
あるものは土地を欲し、また あるものは人を欲し、そのまた あるものは食料を欲し――
人々の欲求は絶えませんでした。
その時代は、国同士の統制が全く取れていませんでした。
故に、欲するものを得る為 話し合いや交渉ではなく、武力で得ようとしたのです。
その代償に多くの人々……民が犠牲となりました。
そして遂に、作ってはいけないモノを作ったのです。
それは人を効率良く殺す"道具"……。
その道具の種類は多々ありましたが、あるものは"兵器"であったり、あるものは"武器"であったり。
本当に様々なものが、人の手によって作られました。
その時代、戦争で使用されたものは道具だけではありません。
魔術もまた、例外ではありませんでした。
しかも、当時 魔術を扱える者は ごく一部の血統のみで大変少なく、とある国には"高貴な存在"と崇められ、上位魔術を扱えるものは"英雄"と呼ばれていました。
しかし、その扱いの差に不満を漏らした兵達が、兵器に次いで とあるものを作り出してしまったのです。
それは魔術士殺しの薬……これを注入された者は魔力が以上な程 暴走し、最終的に自身の魔力に飲み込まれ死に至るというもの……。
魔力量が少ない者には特に効果がないですが、逆に魔力量の多い者にとっては、多ければ多い程 致命傷となりえます。
兵達は協力し その薬を、英雄と呼ばれていた魔術士に、他の魔術士にはバレぬよう注入したのです。
「……もしかして、それがクロードを追い詰めた薬……?」
察しが良いですね、その通りです。
……話を続けます。
当時は何故 魔術士が死亡したのか兵以外の者には分からず、原因不明の病として扱い、深く追求はされませんでした。
その後も度々 他の魔術士に薬を注入していき、確実にその数を減らしていたのです。
"我等 兵士こそが、国にとって選ばれた人材である"と証明する為に……。
しかしある時、遂に兵による犯行だと他の魔術士に気づかれてしまいました。
そこからは、もう泥沼の内戦でした。
人間の武力と魔術がぶつかり合う、自国を壊滅させる不毛な争いが起こりました。
「……その戦争が起きている間、精霊達は何とか出来なかったの?」
本当は一刻も早く、何か行動に移したかった。
あんな不毛な争いをやめさせたかったです。
……ですが我々は湖から離れられない身。
更に言うと、自らの力で"精霊"という枠から抜け出せない以上、どうしようもありませんでした……。
……先程の薬が外部に漏れた事もあり、人々の争いは更に過激なものとなっていきました。
"もう誰も止められる者はいない、人々やこの大地は滅ぶ運命だ……"そう諦めかけていた我々でした。
しかし、ある時 強大な力を持った悪魔が戦争に割って入り、争いをしていた人々を皆殺しにしていきました。
それはもう、戦争で亡くなっていった程の人数が、その悪魔の力だけで一瞬の内に死んでいったのです。
いくつもの国を無差別に壊滅させたその者は、あまりの強さから"魔王"と呼ばれ、人々の恐怖の象徴となりました。
しかし皮肉にも、その魔王の介入のおかげで、人々は次第に国同士で争うような余裕はなくなったのです。
そこから人々の争いは落ち着き、そして魔王も、忽然とその姿を消しました。
あの悪魔を見た何処かの王様は、アレは人々が生み出した悪魔だと言いました。
それを聞いた他の国の王たちは激しく同意し、もう二度とあんな存在を生み出さないように戦争で使用した道具を全て破棄しました。 我々、各地の守り神として存在している精霊達と固い契約をして。
そして、最終的に国同士が統制し、世界は秩序ある姿となった……というお話です。
……そう、各地にいる精霊達が人々と通じ、契約に基づき責任をもって破棄した……筈でした。
「……その薬が、何故ボクに打たれたかって話だよネ」
「……そうなのです。
過去の道具がどうして現在も残っているのか、全くもってわかりません……
ですが、あの症状はどう見ても、その薬によるものでした」
「その時代の人がまだ生きていて
また薬を作ったという線は?」
「それもあり得ないと思います。
"あの薬に関するデータは全て破棄し、今後 二度と作らない"
という契約を当時の国々自体としたので
あの時代に生きている者なら王でも兵士でも
一般市民ですら、契約を破った時点で我々に知れ渡る筈です。
だからあり得ないのです。
本当だったら私達で何とかしたいのですが……」
「精霊という立場のせいで行動できず
代わりにそんな難しそうな依頼を、ボク達がねぇ……」
眉間にしわを寄せながらクロードは言う。
「やられてしまったばかりで、酷な内容だとは思います。
ですが事態がこうなった以上、頼めるのは貴方達だけなのです……。
でも……やはり、難しそう……ですか?」
「……そんなわけないじゃん!!
ねっ、レイン?」
「うん、まぁ僕達なら出来るよ!
あの時はやられちゃったけど
クロードが本気を出せば あんな奴ら!」
「そういう事ッ!
それにしたって、今度は許さないからなアイツら……
絶対に住処を暴いて、ギッタンギッタンに――
「あの、クロードさん。
言い忘れていた事が……
いや、寧ろ謝らなくてはいけない事が一つ……」
精霊が更に申し訳なさそうにクロードへ声をかける。
「あの……とても言いにくいのですが、実は 薬の治療のせいで貴方の魔力……
"低級~中級魔術士"並になってます……」
「「へ??」」
僕とクロードは目が点になりながら、情けない声で返事をした……。




