表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何でもする人は楽じゃナイ!  作者: 氷上 冷嗚
第01章:盗賊団
12/34

011 - 衝撃


 ここは……どこだ?

 気が付くと、僕は見覚えがない場所に立っていた。


 目のまえに凍り付いた何かが広がっている……これは、湖だろうか?


 周囲に何かないか確認するが、一面 森林だった。木々の上には雪が積もっている。

 しかし目の前の湖と周囲の森林以外に、目ぼしいものは特に見当たらない。


 そのまま周りの様子を(うかが)っていると、何処からが声が聞こえてきた。


『……お前のせいだ』


 お前の……せい?

 僕の事だろうか?


『お前のせいだ、氷の――』


 氷の……?

 突然の事で、何が何やら分からない。

 でもこの声……何処かで聞いた覚えがあるような……。


『お前が裏切らなければ……私たちは!!!』


 裏切る? 何のことだろう、何の……


『許さない……絶対に許さない!!』


 声は次第に、強い憎しみに溢れたものとなっていく。


 この声を聞いていると、段々と頭が割れるように痛くなってきた。

 それと同時に、自分が自分でなくなってしまうような感覚が――


 やめて……やめて!!

 仕方なかったんだ、あれは……アイツを止めるには、ああするしか――



-----------------------



『レインさん!!!』


 聞き覚えのある声が頭に響き、はっ……と目を覚ます。


 ここは……(かおる)さんの絵画室だ。

 そして目の前にはシャツを着た(かおる)さんが――

 ……あれ?


 寝ぼけているせいか、それとも目が疲れているせいなのか、何か(かおる)さんに胸……があるように見えるのだけれど、これは一体……?

 それにさっきも絵が動いているように見えた覚えが……先程の事といい、目の前の光栄を信じられない僕は、思わず その膨らみを触ってしまう。

 ふにっ、と柔らかい感触がした。これは……


 ……明らかに実物だ……。


「――なっ、なぁぁぁぁ!!???」


 (かおる)さんは顔を真っ赤にして叫ぶ。

 そりゃそうだよね!?

 今日出会ったばかりのヤツに突然 胸を触られちゃ そうなるよ!!


「ご、ごごごごめんなさい!!!!!!

 いや、あの! これはつい出来心で!!!」


「な、ななな何を! なんてことを!!

 精霊が言ってたけど、やっぱり男はどんな姿であれ

 (けだもの)という事かぁっ!!」


「違うんです! 本当!

 というか失礼ながら今まで男だと思ってて!

 そんな人に胸があるだなんて信じられなくて!!」


 一刻も早く誤解を解こうと、思っていた事を正直に言ってしまった。

 が、これはあまりにも失礼すぎる……後の祭りも良い所だ。 最早、彼女には申し訳なさしかない。

 そう思ったのだが……


「えっ……えぇ!?

 レインさん……ぼくの事、今まで男だと思ってたの!?」


「は、はい……本当すみません……」


 精一杯、頭を下げて謝る。

 男として情けないけども、それほど悪い事をしたのだ……と思っていたのだが、(かおる)さんから予想外の言葉が出てくる。


「ふっ、ふふふ!

 やったー!!!」


 突然、万歳をしながら喜ぶ(かおる)さん。

 いや今の間に喜ぶ要素あった!?


「レインさん! 胸を触った事は許すよ!

 そもそも、考えてみたらぼくは さっき貴方の裸を見ちゃったわけだし

 これでお相子だよね!!

 そんな事より、これで私は立派な男装女子になれたわけだ! 実績解除だ!

 これであの精霊を見返してやれるぞー! あっはは!!」


 だ、だんそーじょし?

 よく分からない事を言っていたが、兎に角 許してもらえるなら助かった……。

 それに香さんは元気になってくれたみたいだし、結果オーライ……


「……それはそうと、何でレインさんはこの部屋で気絶してたの?」


 ……結果オーライ?そんなわけなかった。

 こうなったら、この部屋に入った理由も正直に話そう……。


-----------------------


「――成程ね、気まずさに耐えきれず

 絵を描いて話題作りをしようと……」


「うぅ……申し訳なさの極み……」


「ンー……良い(good)!!だけど(but)悪い(bad)!!」


「ふえっ!?」


「レインさん、絵を描く。という行為をしようとしたのは良い(good)。すっごく!

 でも心から描こうとしていない!そんなんじゃ絵に魂は宿らない!!だから悪い(bad)!」


「魂は……宿らない……」


 凄い、何だか言葉に深みがあって、何か凄いよ! (かおる)さん!

 僕はとんでもない人物に出会ってしまったのかもしれない……!


「今度 魂の宿るような絵の描き方を教えてください! 師匠!」


「いいともさ! ぼくでよければ何度でも教えよう!!

 ……でも師匠はやめてね、恥ずかしいから……」


 顔を赤らめて恥ずかしがる(かおる)さん。

 その仕草がとても女の子らしく、凄く可愛いかった。

 ただ、その可愛さと見た目が反則的で……。


「わ、分かりました……。

 ……ところで、話は変わるのですが、何で(かおる)さんはそんな薄着なんですか?

 その格好だと胸が強調されて……あの、無防備というか何というか

 目のやり場に困ってしまうというか……」


 そう、彼女の服装がシャツ一枚で、とても目のやり場に困るのだ。

 落ち着いて見てみると、(かおる)さんは意外と……その、大きい。

 女の人には不慣れなせいで正直 本当に目のやり場に困る。


「いや、ぼくが貴方の裸体を見ちゃった時に

 ぼくしか取り乱してなかったから

 女の子に興味ないのかなって思って。

 レインさん可愛い顔してるし、ソッチ系なのかなって」


「ソッチ系ってドッチ系ですか!?」


 思わずツッコミを入れる。


 でもそうか、僕は最初、彼女の事を"男"と認識していたせいであまり焦らなかった。そのせいで変な勘違いをされてしまったのか……。

 ただ、そんな彼女の発言を聞いて1つだけ、どうでもいい疑問が浮かんだ。 気になった僕は思わず質問をする。


「あの、(かおる)さんは いつから僕の事を男と分かっていたのです?」


「へっ? 奇妙な事を訊くね……最初から分かってたよ?」


 なんと。

 普通に初見で"男"と分かっていたようで流石に驚く。


 最近、初見で会う人には必ず"女"だと思われていたから、何だか嬉しい……。

 ……男の僕がこんな事を言うのは何か変だけど、兎に角 嬉しいのだ。

 多分、さっき(かおる)さんが喜んでいたのは これと同じような理由だろう。そうすれば納得がいく。


「ありがとう、(かおる)さん……

 とても……とても嬉しいです!」


「いえ、こちらこそ……

 ……ふわぁ~あ、何だか一段落したら眠くなってきちゃった。

 そろそろ寝ない? 客人用のお布団、用意してあるからさ」


「そ、そうですね……ひとまず、今日の所は寝ましょうか」


 という訳で寝室へと案内してもらう。

 そこには布団が二つ用意されていた。

 ……あれ? これもしかして……同室で寝るの?


「レインさんはこっちの布団で寝てね。

 ぼくは あそこの布団で寝るから」


 彼女の この言い分だと本当に同室で寝るらしい。そんな馬鹿な……。

 いくらなんでも、ちょっと警戒心なさすぎませんか(かおる)さん……やっぱり僕、何だかんだ言われて男として見られてないんじゃ……。


 そんな事を思いながら僕は布団へと潜る。


「じゃぁ電気消すよ」


「はーい」


 パチッ、と灯りを消す音と共に、辺りは真っ暗になる。

 この真っ暗な世界は、何故だか とても落ち着く。

 ゆっくりと目を瞑る。

 すると……



「……レインさん」


「……何ですか? (かおる)さん」


「その、よければ"レインくん"って呼んでもいい?」


「いいですよ。

 ……何なら、呼び捨てでも構いません」


「ありがとう。

 ……クロードさんって言ったっけ?

 早く、良くなるといいね」


「……はい、でも まぁ彼の事です。

 きっとすぐ良くなります」


「……信頼、しているんだね」


「そりゃあ、今まで旅してきたんですもの。

 彼の事です、きっと明日には……いつもの笑顔が……」


「あの森の精霊が治療しているんだもの、きっと良くなるよ。

 あっ、あと……ぼくに対しては敬語じゃなくていいよ?」


「ありがとう……ございます」


「うんっ、堅苦しいのは苦手だし、何よりレインくん……

 私より、ずぅっと年上でしょ?」


「そう……で……すぅ……

 ……すぴー…………」


「……寝ちゃったか。

 こんな時間まで長話しちゃってごめんね。

 おやすみ、レインくん」



 (かおる)はレインにそういうと、彼女もまた眠りについた……。



-----------------------



 同刻、とある洞窟内で大男が騒いでいた。


「おい……オイ!!!」


「「は、はいィ! 何でしょう、お頭!?」」


 お頭と呼ばれている大男が一喝すると、彼の元に赤いバンダナをした男と、青いバンダナをした男が来る。


「Kは……Kはまだ帰らねェのか!?」


 大男は どうにも怒っている様子だった。

 高い金を払って雇っていた暗殺者が期限内に戻ってこないのだ、無理もない。


「そ、それが……まだ戻ってないんですよ……

 ゴンズの兄貴もまだ……」

「もしかすると、Kさんに見放されたのかも、俺達……」


 バンダナの男達が申し訳なさそうに そう言った瞬間、大男はギロリ と二人を睨みつける。

 

「「ひぃ!?」」


 その視線に睨まれたバンダナの男達は情けない声をあげる、今にも泣きだしそうだった。

 そんな二人の様子を見た大男は更に機嫌を悪くし、一言……


「畜生!! こうなりゃ気晴らしに村を襲撃するぞ!!」


「む、村ですかァ!?」

「でもでも、村を襲うと王国の兵が移動魔法で瞬時に来るって話ですよ!?

 やられちゃいますよ俺ら!!」


 またもバンダナの男達は情けない事を言う。

 その二人に大男は一喝


「ンな事は知っている!!

 後な、その情報は間違ってる。

 奴らは移動魔法じゃねェ、村の何処かに設置されてるルーンで移動してるって話だ」


「る、ルーン?

 それって……中に魔術が入ってると云われてる、奇妙な石の事ですかい?」


「そうだ、それを破壊しちまえば……」


「石の中に入っている魔術は消え去り

 王国から、すぐに兵は来れなくなる!って事ですか!」


「そうしたら好きなだけ略奪だ!

 金! 食料! 女!! 好きなだけ奪い、好きなだけ暴れるッ!!」


(まさ)しく、ヒャッハー!ですね!!

 まったく根っからの悪だ、流石お頭ァ!」

「でもでも、ルーンの場所は分かってるんですか……?」


「抜かりねェ。

 村外れの小屋だ、そこに巨大なルーンがある。

 その小屋ごと爆破して壊しちまえば……」


「王国の兵は確実に、直ぐには来なくなる!」


「そういうこった! グハハハァ!!

 そうとなったら明日出発だ!!」


 大男は豪快な笑いをしながら、バンダナの男達に爆弾の用意を命じた。

 そして自身もまた、明日の襲撃に向けて準備を始める……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ