第二十二話 居眠りしていたら2
今日二回目です。
今回は、悠視点のイチャイチャ回です。
『(え〜、本日の最高気温は・・・)』
居間にあるテレビから、聞くのも暑い内容が流れている。
「はあ〜、涼しゅうなると〔涼しくなるの〕も、まだまだ先や〔だ〕ね〜」
「ホントだね・・・」
その内容を見て、二人で溜息と吐く。
今、二人はお昼を食べた後。
居間にあるソファーで、エアコンに当たりながら休憩していた。
颯ちゃんは、今日の補習が午前中だけだったので。
終わると、すぐに家に帰り、少々遅い昼食を一緒に取っていたのだ。
食事を終え、私と颯ちゃんは二人並んでソファーに座り。
一緒にテレビを見ていた。
別に、面白い番組があるとか言う訳ではなく。
ただ二人で、涼みながらマッタリしたかっただけである。
『(変わりまして、涼しい滝の映像をお送りします・・・)』
テレビの映像が、今度は涼しい画に変わった。
「・・・」
「・・・」
しかし二人は、それには何も言わず、ただ黙って見ている。
そうやって私達は、テレビを見ながらマッタリしていたのであった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・
・・・
「(コツン)」
「んっ?」
不意に、何かが肩に当たり目が覚めた。
どうやら知らない内に、眠り込んでいた様だ。
そして、何かが当たった肩を見たら。
「すー・・・、すー・・・」
颯ちゃんが、私の肩にもたれ掛かっていた。
どうも、彼も眠り込んでしまったみたいだ。
”ふふふっ、しょうが無いなあ〜”
寝ている颯ちゃんを見て、思わず苦笑する。
無防備な姿を、私に晒していたからである。
しょうが無いと思いつつ。
私は颯ちゃんを、そのまま静かに寝かそうと思った。
・・・
「(ゴロン)」
「えっ!」
静かに颯ちゃんを寝かせていたら、急に彼が私に倒れ込む。
颯ちゃんは、横向きで私の方に前屈みになる形になり。
丁度、私の胸に頭が来る位置に来ていた。
「(あ〜、ビックリしたな〜)」
予想外の行動に、私は動揺を抑える。
と同時に、私の胸に寄り掛かる様に頭を付ける、颯ちゃんを見て。
ある思いが心から湧き出した。
”かわいい・・・”
昔から私の事を気に掛け、変わった私を受け入れてくれた。
その颯ちゃんが、私に身を委ねて来ている。
私に寄り掛かっている姿が、何だか私に甘えている様にも見える。
その事と、小さい頃の可愛かった彼の姿を思い出し。
思わず、胸にある颯ちゃんの頭を抱き締めた。
「(ギュッ!)」
抱き締めた颯ちゃんの頭は、適度に重くて存在感がある。
大きさも、まるで大きな縫いぐるみを抱いている感じだ。
「んんんっ・・・」
颯ちゃんの頭を抱いていたら、突然、彼が苦しみだした。
どうやら、胸に抱いている内に口と鼻が塞がって、呼吸が出来なくなったみたいである。
「すー・・・、すー・・・」
慌てて、腕の力を緩めると、再び穏やかな寝息になった。
”えっ! 胸で窒息するのって、ホントにあるんだ・・・”
そう思いながらも、今度は颯ちゃんを優しく抱き締めた。
「(なで・・・・・・、なで・・・・・・)」
「(意外と、髪が滑らかだね・・・)」
彼の頭をを抱き締めながら、今度は頭を撫でる。
男の子にしては、けっこう滑らかな髪していて。
思ったより、撫で心地が良い。
そうやって颯ちゃんを抱き締めつつ、頭を撫でていると。
”颯ちゃん、愛しているよ・・・”
胸の奥から、そんな暖かい思いが溢れ出す。
”誰にも受け入れられなかった私を、唯一人だけ受け入れてくれた”
”ずっと隣に、一緒にいてくれた”
”久しぶりに会って、変わった私を昔と変わらず接してくれた”
”そして、昔と変わらず一緒にいてくれた”
そんな颯ちゃんの事をいつも見て、ずっと彼の事を考えている。
再会した時芽生えたこの思いは、日を追うごとに大きくなって行く。
しかし、それと同時に。
”私だけの颯ちゃんにしたい・・・”
”私だけを見て、他の娘を見て欲しくない”
そんな、彼を独占したい欲望も出てきた。
どうしようもなく醜いと思うが、もう抑える事が出来ない。
”私は、元男だし。
だからこそ他の、本物の女の子を好きになってしまうかもしれない”
そんな事を考えてしまい、不安になってくる。
「(颯ちゃん、私、この思いを伝えるね)」
颯ちゃんとは、これからもずっと側に居られるだろうが。
それだけでは足りなくなった。
こんな不安に怯える位なら、駄目元でも告白しよう。
駄目でも、仲が良いイトコの関係は変わらないのだから。
「(颯ちゃん・・・)」
私は、顔を彼に近づけ匂いを嗅ぐ。
少し汗の匂いがするが、不快ではなく。
むしろ颯ちゃんの匂いだと思うと、ずっと嗅ぎたくなる。
こうして私は、彼を抱き締めながら。
告白の決心を付けていたのであった。




