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第二十話 水着を買う途中で

今回は、悠視点の話です。




 それは8月に入ってから、少し経った頃である。




 「叔母さん、すいません・・・」


 「ふふっ、悠ちゃんの為やけん〔だから〕()かよ〔良いよ〕〜」




 私は今、叔母さんの運転する車の助手席に座っていた。


 今から私は、叔母さんに連れられ、ショッピングモールへと向かっていた。


 なぜなら、私は二、三日ほど前に、(そう)ちゃんから海に誘われたからである。


 しかし、私は水着を持っていなかったので、買おうとしたら。

それを知った叔母さんに、車で一緒に買いに行く事になったのだ。


 一応、病院で、女の子の一般知識をレクチャーはされていたが。

水着関係などの知識は、少し心許(こころもと)ない所もあるから。

叔母さんが付いてくれるのは、とても助かる。




 「それに私、娘ん〔に〕色々と()すっと〔着せるの〕が夢やった〔だった〕し。

 それが特に、水着やけん〔だから〕ね〜」


 「はははっ・・・」




 叔母さんがそう言って、得体の知れない笑みを浮かべ。

それを見た私は、乾いた笑いしか出なかった。



 ”・・・叔母さん、一つお手柔らかにお願いします・・・”



 私は、心の中でそう祈った。




 ・・・




 「あ、そうそう、悠ちゃん。

 颯太(そうた)とは、どこまで行っとうとね〔行っているの〕?」


 「えっ?」




 車の中で、叔母さんと色々話していたら。

突然、そんな事を言い出した。




 「ふふっ、隠さんでも良かよ。

 悠ちゃん、颯太ん〔の〕(こつ)ば〔を〕好きやろもん〔好きなんでしょ〕」


 「えっと・・・、その・・・」


 「悠ちゃんがコッチん〔に〕来た時に、駅で前ば〔を〕行く颯太の(こつ)ばジッと見とったろ〔見てたでしょ〕。

 ()〜んか〔何か〕、ウットリしたごたる〔ような〕眼で」


 「えっ、そんな・・・」


 「それに、颯太ん〔の〕(こつ)ば〔を〕話とる〔話してる〕時ん悠ちゃんは。

 物凄(ものすご)く、嬉しそうやったよ〜」


 「・・・」


 「だから私、すぐ分かったと〔分かったの〕」




 叔母さんに図星を指摘されて、私は顔が熱くなってしまった。




 「でも私、元男だし・・・」


 「今は女ん〔の〕子でしょ、それに悠ちゃんに言うたら悪か〔悪い〕けど。

 悠ちゃん、女ん子ん方がイキイキしとるよ」


 「・・・そうですか」


 「で、悠ちゃんはどげんね〔どうなの〕?

 女ん子ん方が良かと〔良いの〕?、悪かと〔悪いの〕?」


 「・・・はい、ずっと男で生きるのが苦しかったから。

 女の子の方が、自分には合っています」


 「そぎゃんやろね〔そうでしょうね〕。

 前々から、悠ちゃんは”男で生きると〔の〕に苦労しそうだな”と、(おも)ぉとったけんがら〔思っていたから〕」




 叔母さんが運転しながら、前を見ていたけど。

その視線は何だか、遠くの別の物を見ていたように見える。




 「・・・私、叔母さんの言う通り、颯ちゃんの事が好きです。

 でも、颯ちゃんは、私の事をどう思っているか?」


 「うん? ああ、それは大丈夫たい〔だよ〕。

 あん〔あの〕子も、悠ちゃんと同じ気持ちやけん〔だから〕」


 「そうなんですか?」


 「そぎゃん〔そう〕よ、あん子も悠ちゃんが来てから、明らかに様子がおかしかし〔おかしいし〕。

 特に悠ちゃんの前や〔だ〕と、挙動不審になっとる〔なってる〕しね。

 大丈夫、間違いなか〔ない〕、こっ〔これ〕でもあん子の母親やけん分かるとたい」




 そう言って、叔母さんが太鼓判を押した。




 「それで、ただ一つ不安なのが。

 私が元男だったのを、颯ちゃんは受け入れてくれたけど。

 いざ、恋人になろうと思うと、どうしてもそれが不安になって・・・」


 「大丈夫、あん子ね

 ”悠ちゃんは女ん子としか思えんし。

 昔ん事は、漫画とかである

 『男だと思っていた幼馴染が、実は女の子でした』

 とか言うネタにしか思えん〔思えない〕”

 って、言いよった〔言ってた〕よ」


 「えっ?」


 「まあ、半分冗談だろうけど。

 でも、あん子ね、ちょっとヘタレやけど、誠実なのは間違いなかけん。

 あん子ん(こつ)ば信じてやってね」


 「はい」




 叔母さんに胸にある物を話したら、少しは楽になった。


 叔母さんの言う通り。

私は颯ちゃんの事を、もっと信用しないとイケナイと思う。




 「そこで、あん子ん方から告白するごつ〔ように〕する為に。

 あん子ば〔を〕悩殺するごたる〔様な〕、水着ば買おうと思うとたい」


 「ええっ〜!」


 「何が良かろうかね、あっ、横が(ひも)になっとるのとかは?」


 「それ、恥ずかしいですよ〜」


 「じゃあ、思い切って布地の面積が少なか〔少ない〕とは?」


 「もっと恥ずかしいです!」




 こうして私は、叔母さんと共に水着を買いに行き。

叔母さんから、さんざん(いじ)られ()くられたのであった。



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この作品同様、TS娘と少年との恋物語の作品です。
・こんな僕でもいいの?
また、これらの作品も熊本を、舞台にした作品です。
・変わらない仲と変わった思い
・熊本のお姉ちゃん

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