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第十一話 思い出したくない過去(前)

今回から三回、悠視点の話になりますが。


今回と次回は、イジメの表現が出てくるので注意して下さい。



 「やい、やい、この女男〜」


 「くやしかったら、掛かってこいよ〜」


 「グスン、グスン・・・」




 私の幼い頃の思い出は、いつも数人の男子に取り囲まれて。

悪口を言われながら、イジメられていた事ばかりである


 私がまだ、男の子だった頃。

気づくといつもイジメられていた。


 それも、私が大人しくて、手が出ない事を知っての事だ。


 また、私が女の子みたいな見た目で。

しかも、男らしく無いのが、彼らの(かん)に触ったのもあった様だ。


 とは言え、それらは彼らの勝手な言い分であり。

こちらの事を考えていない、一方的な価値観の押し付けである。


 それに加え、私は人と競争する事自体が好きでない上、スポーツ全般が苦手で。

体育の団体競技や、集団での遊びでも、結果的に他の人間の足を引っ張ってしまい。

それも、イジメられる原因になっていた。


 当然、教師にも相談したのだが、教師も同類らしく。



 ”お前が男らしく無いからだろ”



 そう言って、マトモに相手にしてくれなかったので。

次第に、教師も信用しなくなっていた。


 そう言った事が、小学校を卒業するまで続いた。




 ・・・




 「・・・あ、あのう・・・」


 「はぁ、何か用なの!」


 「・・・」




 三年生を過ぎる辺りから。

女子に声を掛けると、乱暴な言葉が返るようになった。


 男の子達からイジメられていたので、私は女の子と一緒に遊ぶことが多かったが。

小学校に入ると、次第に私への態度が悪くなる()が出始める。


 それに比例して、私をイジメていた様な。

良く言えば元気がある、悪く言えば乱暴だけど見た目が良い。

そんな子を女子が相手にし出した。


 その影響だろうか。

私は女子全体からも、段々、相手にされなくなり。

特に、女子グループの中心になる()が、私をイジメていた子と付き合いだしてからは、それが酷くなった。


 そうやって、とうとう六年生の時には、クラスで友達が誰も居ないボッチになってしまった。




 **********




 中学に入り、表向きはイジメられる事は無くなった。


 入った中学が進学校な上。

イジメに対して特に、神経質になっている学校でもあったので。

そう言った要因もあり、イジメられる事は無くなったが。

友達が誰も居ない、ボッチである事には変わり無かった。


 学校に居ても、勉強する事以外何も無かったので。

成績だけは、学年でトップだったのだが。

それも、私に人が寄り付かなくなった要因にもなってしまった。


 そんな無味乾燥な学校生活を送っていた。

三年生になって、間もないある日。


 私は、学校で急に倒れてしまい。

救急車で、病院に運び込まれる事になった。


 そして、その日から。

地獄の様な日々が始まったのである。




 「うっ! うううっーーーー!」




 一日の内、何回も襲ってくる発作。


 それも、体中が千切れるような激痛に襲われ。

私は、ベッドの上でただ、のたうち廻る事しか出来なかった。


 そして、呻いている内に疲れて意識を失う。

そんな事の繰り返しだった。


 しかし、次第に発作の回数、激痛が収まっていき。

最終的には、三ヶ月ほどで発作は出なくなるが。


 それと同時に私の体が大きく変わってしまう。




 「えっ? これがボク・・・」




 大きな発作が出なくなった頃。

鏡で、久しぶりの自分の姿を見て驚く。


 男にしては低かった身長が、更に低くなり。

頭も顔も小さくなって、顔の作りが丸みを帯びた女性的な顔になって。


 体も元々から筋肉が無いのであるが。

筋肉がもっと無くなって、代わりに脂肪が付いて、全体的に丸みを帯びる様になり。

それと共に、男にしては狭かった肩幅も、それ以上に狭くなって。

ほっそりした体格になってしまった。


 最も大きく変わったのが、胸に二つの膨らみが出来。

信じられないことに、小さき頃から見慣れた()が無くなっていた。


 つまり私は、いつの間にか女性化していたのである。


 入院して、はじめは原因が分からなかったが。

女性化し始めてからやっと、突発性性転換症候群、通称TS病だと言う事がわかった。


 初めは、両親や先生方同様。

私も混乱していたのだが、次第に、ある考えが頭を浮かんでしまう。



 ”これで外見が男だから、男らしくない事を責められたり。

無理やり、やりたくない事を()いられる事は無くなる”



 そう思い出し始めたのである。




 **********




 発作が収まり、退院した後も。

無用の混乱を起こさない為に、学校へは行けなくなってしまう。


 だが、元々から親しい人間が誰も居ないので。

行かなくても、特に悲しい気持ちも起きなかった。


 しかし、高校受験の大事な時期だけに。

入院で遅れを取った分を取り戻すべく、経過観察や女の子としての指導を受ける為の通院の(かたわ)ら。

必死になって、自宅で猛勉強をした。


 ちなみに、女の子としての指導とは、服や下着の付け方などの、女の子として必要な知識。

あるいは、言葉遣(ことばづか)いや立ち()振る舞いなどである。


 言葉遣いは、元々から男としては丁寧な方な上。

むしろ今は、本物の女子の方が酷い位なので、一人称などを変える程度で済み。

立ち居振る舞いも同様に、足が広がらない様に注意する位で済んだ。


 勉強で遅れを取った分、受ける学校のレベルを一つ位落とす覚悟だったが。

学年トップだった事が効いて、ある女子校の推薦を取ることが出来た。




 ・・・




 最終的には、推薦を取った女子校に行くことが決まり。

結局、学校へは、卒業式にさえ出られなかった。


 だが、その頃には、学校への関心は完全に無くなり。

後から貰った卒業アルバムは、集団写真の角に男の時の写真が貼ってあるのを確認しただけで。

すぐに閉じ、引き出しの奥に突っ込んでしまった。



 ”もう、これは過去の事で。

これからは、生まれ変わるんだ”



 そう思いながら、新しい生活に夢見たのであった。



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この作品同様、TS娘と少年との恋物語の作品です。
・こんな僕でもいいの?
また、これらの作品も熊本を、舞台にした作品です。
・変わらない仲と変わった思い
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