第一話 信じられない再会
お久しぶりです。
今回の、この作品は。
以前書いた"熊本のお姉ちゃん"と"こんな僕でも良いの?"を、足して二で割ったような物です。
まあ二番煎じと言うか、ネタの使い回しと言うか。
そう言う形にはなりますが。
それでも良ければ、ご覧になって下さい。
それから、今作では作中に写真を挿入しますので。
よろしくお願いします。
七月、夏休みになって直ぐの、ある日の午後。
「(シャーーッ)」
静かな走行音をさせながら、走る車の中で。
僕は、これから会う人に対し、複雑な思いになっていた。
・・・
僕の名前は、大野 颯太。
熊本北部にある、とある地域に住む高校一年生である。
今、両親と共に車で無人駅まで向かっていた。
なぜなら、これからある人物を迎えに行くところだから。
その人物こそが、僕を複雑の思いにさせていたのだ。
「あれっ? あん娘が、そぎゃん〔そう〕じゃなかと〔ないの〕?」
「ああ、多分、そぎゃん〔そうだ〕と思う」
車が、駅に着いた所で。
駅の出入り口の横にある日陰に、人が居るの見える。
その人物を見て、助手席の母親と運転席の父親がそう言った。
見えた、その人物は女性である。
歳の頃は、僕と同じ位だろうか。
服装は袖なしで、胸元が大きく見えるほど開いており。
色は、薄い青地に、縦縞の少し濃い青のストライプなので。
遠目から見ると、青く見えるワンピースを着ていて。
足元は、白いミュールを履いていた。
髪は切り揃えられた”パッツンパッツン”の前髪で、肩までの長さの黒いロングヘアーである。
他に誰も居なく、この時間でこの場所で落ち合う予定だったから。
間違えなく、その目的の人物であろう。
「ほら、颯太、早う〔早く〕迎えに行かんね〔行きなさい〕」
車が駅の出入り口付近に止まると。
母親が、そう言って僕を急かせた。
僕はムワッとする外気の中、車を降り、その人物の所へと向かう。
足元にキャリー付きのトランクを置き、少し疲れた様子の女の子は。
僕の姿を見かけると、途端に笑顔になった。
女の子の笑顔はとても魅力的で。
彼女の笑顔を見た僕は、心臓が大きく高鳴る。
「あれ? 颯ちゃん。
久しぶり〜、大きくなったよね〜」
「・・・やっぱり、悠ちゃんだよね・・・」
「うん〜♪」
半分当たって欲しい、半分外れて欲しいと言う思いが、綯い交ぜになった。
変な気分で彼女に尋ねてみると、その目的の相手であった。
近付いて見ると、顔は目が大きく少々タレ目気味で。
穏やかで、ノンビリとした雰囲気を漂わせており。
小さくて形の良い鼻と、濡れた様な桃色の唇をしていて。
とても魅力的な、美少女であった。
その美少女が、頭一つ分身長が違うので。
僕を見上げる様にして見ている。
しかし、その目の前にいる、僕が”悠ちゃん”と呼んだ美少女は。
僕の記憶の中では、男であったはず・・・。
そう彼女は。
僕の一つ上の従兄の大野 悠である。
**********
その事が、先程から、僕の心中が穏やかでなかった理由であった。
前もって、父さん達からは、悠ちゃんが女性化したと言う話を聞いていた。
当然、最初その事を聞いた時、僕は信じられなかった。
確かに、数年前から突発性性転換症候群、通称TS病が発見されたと言うのは。
ニュースなどで聞いていたから、知っている事は知っていたが。
まさか、自分の親族から出たとは、思っても居なかったのだ。
しかも、その相手が、僕も知っている悠ちゃんだとは・・・。
もっとも、知っているとは言え、僕の記憶の中の悠ちゃんは。
小学生の時の姿であるが。
確かに、昔から悠ちゃんは、女の子みたいな顔で。
しかも穏やかな性格で大人しかったが、それでも一応は男であった。
だが、目の前に居る可愛い女の子は。
間違いなく、悠ちゃん本人である。
まあ顔をよく見えれば、顔が小さくて丸い女の子の顔立ちだが。
記憶の中の悠ちゃんにも似ていて、姉妹だと言われれば納得するだろう。
でも、悠ちゃんは僕と同じ、一人っ子だから姉妹は居ないはず。
とは言え、一応男だとは思っていたが。
一緒にいると、時々女の子と錯覚することもあり。
こちらの方が正解なのかなとも思ってしまうのも、混乱していた原因でもあった。
「・・・ねえ、颯ちゃん、どうしたの?
そんなに私をジッと見つめて・・・」
「えっ、あっ、ゴメン・・・」
考え事をしていたら、思わず彼女を見詰める形になったので。
悠ちゃんが恥ずかしそうに言うと、返事をした僕の顔が熱を帯びる。
「颯ちゃん〜♪」
「(ギュッ)」
「(えええっ〜!)」
「えへへへっ」
僕の事を不思議そうに見ていた彼女が、突然、僕に抱き付き。
予想だにしない行動に、僕は内心驚いてしまった。
ああっ、そうだった。
悠ちゃん、抱き付きグセがあったんだ。
昔は、いつも良くくっ付いていたんだよね。
まるで、子犬がじゃれ合うように。
しかし、それは悠ちゃんが男だったし。
それにお互い、まだ幼かったし。
その癖、高校生になっても、治ってなかったのか・・・。
いや、女性化してるからなのかもしれない。
とにかく、突然女の子。
それも可愛い娘に、抱き付かれた僕は激しく動揺した。
「ちょ、ちょっと、悠ちゃん。
ここはマズかけんがら〔マズいから〕〜!」
「あっ! ・・・颯ちゃん、ゴメン・・・」
ここが、人目に付きやすい駅前である事を思い出し、悠ちゃんにそう言うと。
自分の行動を、やっと思い出した彼女が、慌てて離れる。
「じゃ、じゃあ、悠ちゃん、トランクば〔を〕運ぶけん〔から〕」
「颯ちゃん、ありがと♡」
僕は慌てて、悠ちゃんのトランクを運び。
その後ろ姿を見て、彼女がお礼を言いながら後を付いて来る。
しかし、車の助手席に座っていた母さんが。
先程までの悠ちゃんを見て、意味有りげな笑みを浮かべていたのを、僕は知らなかった。
今回より、写真を挿入しましたが。
何しろ、素人がスマホで取っているせいで、余りキレイでは無いかもしれません。
下手ではありますが、皆様の空想の一助になればと思いますので。
見苦しい点は、どうかご容赦下さい。