激情。
舌を噛みきり
尚も流れ落ちる血潮は華々しく
鮮烈に床を満たしていった
果たして
こうすることで
記憶に残らせることが出来るのか?
愛していたというのは間違いない
恋していたというのは間違いない
私を知らない彼
私を知らない彼女
少しでも気付いて欲しかった
その気持ちに偽りは無い
あまりの激痛は
我慢するには絶え間無く
ただ慟哭だけが滲みわたる
五月の頃は
薔薇のように
深紅に満ちた想いが
ささくれだった刺のように
滴りつつある水滴よ
大地に解けて 逝け
遥か彼方の 海へと流れ
やがて雲となり 大気と溶け込め
さんざめく悠久に
私は想いを馳せる
カモメは何も 語らない ── ……
ただ
さざ波だけが心を揺さぶっていった。