夜のおさんぽ
遅くなって本当にすみません!
本当に反省してます。
ベッドに入ったからって寝たわけではない。
ベッドに入ってから一時間ほどごろごろし、イザベラさんの寝息が聴こえてからしばらくして、ベッドから降り窓を開ける。
窓の外は月の明かりがあるとはいえ真っ暗で、普通であればろくに何も見えないほどだった。
とは言っても自分には見えるので関係がない。そのことは既にハオスに確認済みだ。
窓枠に足をかけ外へ飛び出し、塀に着地して道に跳ぶ。しっかりと着地し、防壁に向かった。
防壁には八箇所に階段が設置されている。それを使えば防壁の上に上がれるので、俺は何かあったときはそこから逃げ出そうと考えている。
(まあ、見張りはいるよな…)
階段の近くまで行ってみると、予想はしていたことだが上の方に小さな光と明らかに見張りのものであろう人影が見える。
その階段の周りには一人しかいないようで、やろうと思えば相手を殺して上がることも可能だろうが、とりあえず今はやめておく。今それをやって警備が増えたりしたんじゃ自分が困ることになるからな。
さて、防壁の確認が終わったところで気づいたことがある。昨夜は早く寝たし外も見ていなかったので気づかなかったが、この世界の人たち、就寝時間が早い。
酒場などの店はまだ電気がついているようだが、民家となると全くと言っていいほど電気がついている家がないのだ。
ということで、私は今とある民家の前に来ています!
本来の予定では路地裏で寝てるホームレスとかをやるはずだったんだけど、正直寝てるんだったら家の中の方が見つかりにくいし隠れやすいってことで予定を変更することにした。
ドアの前に立って、一応鍵が開いているか確認してみる。…まあ鍵くらい閉めてるよね。
まあ鍵の有無は関係ない。鍵の部分を目掛けてナイフを振ると綺麗に切れて、鍵がその役目を放棄する。あとはドアを開けて中に入るだけだ。
…パタン…ギイィ
…パタン…ギイィ
ドアが閉まらん。…放置でいいかな。
家の中に入ったら足音を殺して一階を捜索する。誰もいない。寝室は二階のようだ。
二階に上がると部屋が三つあった。少しだけドアを開け、全ての部屋を確認する。なるほど、この家は4人家族か。
それならと、親であろう男女が寝ている部屋に入る。出来るだけ音を立てないように注意していたおかげか、二人とも起きていないようだった。
二人の顔を見比べてどっちから殺すか考える。…決めた。男からにしよう。
枕元に近づいて首元に狙いを定める。…えいっ!
…ヒュッ…ザクッ
「がッ!」
…ドスッ
少し引っかかったが問題なく切り落とす。まあ即死だろう。音に反応したのか、女が目を開けた。そのままこちらを向こうとしたところで眼球に向かって一突き。奥まで深く刺さったナイフにより声を上げる暇もなく女は絶命した。
…楽しい。心の底からそう思える。もっとこの感覚を味わいたい。心臓を抉り出しながらそう思っているとドアが開く音が聞こえた。
「…お母さんどうしたの?」
その声がした方を向くと五、六歳くらいの女の子が立っていた。
「だ、誰?」
清浄、と小さく呟いて血を落としながら女の子の方へ向かう。
「よ、妖精さん?」
ちなみに、魔法を使うと使ったところが少し光る。それを全身に対して使っている今、相手の年齢や自分の容姿を考えると、まあ“妖精さん”のように見えるのも無理もないだろう。自分で言うのもなんだけどこの体、結構可愛いし。
「そうさ。妖精さんだよ」
「わぁ〜!」
俺がそういうと目をキラキラさせてこちらを見てくる。後ろにあるものが見えないのか不思議である。気づいたら気づいたでどういう反応をするのか見ものではあるが。
「そうだ、君の願いを叶えてあげようか」
「ほ、ほんと?じゃあね、じゃあね…」
まあ気づいていないにしても知らない人の言葉をそう簡単に信じるのはどうかと思う。
「わたし、海に行ってみたい!」
「海、ね」
「うん!見たことはないけど大きな水溜りなんだって」
なるほどね。それなら、
「叶えてあげる」
「ほんとに?やったあ!」
「それじゃあ目をつぶって。いいって言うまで開けたら駄目だよ?」
女の子がしっかりと目をつぶったのを確認して、まずは少年が眠っていた部屋に移動する。少し急ごう。
部屋に入ると、少年は少し前に確認した時と変わらず熟睡していた。とりあえず横抱きにして女の子の待つ部屋に戻る。…これで目が覚めないってどんだけ熟睡してるんだ。
「まだちゃんと目をつぶったままでいてね」
「うん。ちゃんとつぶってるよ!」
目を開けないようにと釘を刺して少年を部屋の真ん中に横たえる。
そのまま首を落としたあと、足を掴んで持ち上げると切断面から血がドバドバと出てきた。
少年から血が殆どでなくなったあと、先に殺していた両親も同じようにして女の子に声をかける。
「もう目を開けていいよ」
「…家の中?…キャッ」
ゆっくりと目を開けた女の子は不思議そうに周りを見回したあと部屋の真ん中にあるモノを見て驚いたように声を上げる。
「どうかな?海っていうほどには溜まってないけど、十分に大きな水溜りって言っていいんじゃないかな。」
「な…なんで…」
「なんで、か。うーん…どうしてだろうね?」
よく考えたら何でこんな事してるんだろうな。殺すことは別にいいんだけど、わざわざこんな事する必要はなかったのに。
「たぶん気が向いたからだよ」
「気が向いた?」
「うん。まあテンションが上がってたのかな」
話しながらゆっくりと女の子に近づいていく。
「それじゃあさよなら。結構楽しかったよ」
「い、いやっ」
ーーザクリ
胸を切り裂いて手を突っ込む。心臓を掴み、思い切り引きちぎると女の子は倒れていった。
「さてと」
どうしようか。まだ取っていなかった少年の心臓を取りながら考える。
このまま帰るのは少し気がひけてしまう。だってこれ、完全に殺人事件の現場だし。清浄では死体が消せないのが一番の問題だな。
「あっ」
心臓を握りつぶした瞬間に感じた高揚感でレベルが上がったことを理解した。体に着いた血を落として金目の物を探す。ちなみに死体は家ごと燃やすことにした。
家の中を粗方探し終わって見つけたものは金貨三枚と銀貨十三枚に銅貨何十枚か。なんか装飾品もいくつか見つけたけど売れる場所を知らないし、足もつきそうなので放置することにした。
キッチンで見つけた油を主に寝室に撒いて火をつける。
「点火」
そして此処でも役立つ『生活魔法』。便利すぎる。
三、四箇所火をつけた後、走って家まで帰ることにした。家の近くまで来たら家を出た時と同じように塀に乗り、そこから窓に飛び移る。
少し届かなかったが手を引っ掛けて、無事に部屋まで戻ることが出来た。
「結構疲れたな」
時計を見ると三時前を指している。適度に眠気が襲って来たので汚れを落としてベッドに入り、窓の外に見える赤い点を一瞥した後眠りについた。
ーー明日寝坊しないようにしないとな
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【今回の殺害人数】
四人
【total】
五人
ゴールデンウィークに間に合ってよかった…