万が一の保険
大変お待たせしました…
ちゃんと完結まで書き上げてきたのでもう更新が止まることはないです。
最後まで是非お付き合いください。
あれから再び街を襲撃し、キルスコアを増やしていくこと一日。
二つの街を襲撃したがどうやら俺が街を襲って回っていることが伝わっているらしく、街から離れて逃げようとしている民衆が多くいた。まあ全部追いかけたが。
せっかくなので全滅させることにこだわったこともあり、少し効率は悪かったかもしれないがそれでも結構な人数殺すことができていた。
感知範囲内の最後の一人を殺したところで一息つく。お腹が空いたし何か食べることにしようと考え、街を回ったときに見つけたパン屋に行って美味しそうなものを見繕っていると頭の中に声が響いた。
(やあやあ、少し話があるんだけどいいかな)
「ん、ハオスか。…ってそういえば街の中だと話しかけられないんじゃなかったのか?」
(面白いこと言うね。ここが街だとでも?住む人がいなくなった街なんて廃墟と大して変わらないじゃないか)
「そういうものなのか…?まあいいや。それで、話ってなんだ」
二つ三つパンを見繕って店を出る。近くの家に入ればすぐに椅子とテーブルが見つかった。
とってきたパンを食べながら話を聞く。
(まあまずは称賛させてもらおうかな。君は僕の期待に応えて多くの人間を殺してくれている。このままいけば人間を全滅させることだってできるだろうね。でもそれをするにはまだ障害がある。わかってるだろう?)
人類を殺しつくすことを妨げる障害、いうまでもなく勇者と神託騎士のことだろう。他の人間と違いそいつらは今の俺ともちゃんと戦えるだけの力を持っている。
(いくら君が強くなって、この世界で別格の強さを得ているといってもそれは勇者だって同じ。君を倒すために召喚されたんだから君を倒すために必要な力は身に着くように設計されているからね。さすがに勇者と比べればいくらか劣るとは言っても神託騎士だって十分な戦力だ。力を合わせられたら君の命を十分脅かす脅威になる)
(せっかくここまで来たのに負けちゃったらただ終わりっていうのも味気ないからね、一つだけ君にサービスだ)
「んっ…サービス?」
口の中のパンを呑み込んで尋ねる。
(ああ、サービスさ。使うかどうかは君にゆだねるけどね)
「どんなものなんだ?」
(もしも君が勇者や、神託騎士に負けて殺されそうになった時、殺されるよりも先に自分で自分の心臓を握り潰すといい。そうしたら転生する前にいたあの空間に君を引っ張り上げてあげるよ。そうすればまた舞い戻って戦うことも不可能じゃないし、諦めたいっていうんだったら話を聞いてもいい)
「それは…お前は俺が勇者たちに負けると考えてるのか?」
(ははは、もしもって言っただろう?別に絶対に使えってわけじゃないよ。でも、どうしようもなくなったときただ勇者たちに殺されて終わるよりかは良いだろう?)
…別に使いたくなければ勇者たちに負けなければいいだけだ。そう自分に言い聞かせて、一応ハオスに礼を言っておく。使わないだろうけどな、と付け加えて。
そしてそのまま残っていたパンを腹の中に流し込んだ。
◇
それからまたしばらく進み、半日と少しが過ぎた頃『範囲感知』に反応があった。
その反応の方へ進んでいくとうっすらと朝日に照らされる平野に、異常なまでの密度の植物の反応がある。そしてその中心部にはエルルクに似た反応とこれまで見たことのない強さの反応、それともう一人神託騎士らしい反応が一つ。
これは…間違いなく誘っているのだろう。なら、それに応えてやるのも一興だ。それに俺は嫌いなものは先に食べるタイプなんだ。わざわざ向こうから来てくれたのなら都合がいい。
全て燃やして、見通して、服従させて喰らいつくそう。
「彼女に見せる『万象の瞳』、彼女の支配を『万魔の口』」
「とりあえず、邪魔な植物から全部燃やしていこうか」
探知範囲内の反応を燃やし尽くす。後に残ったの反応は三つだけだった。わかっていたがさすがにこれぐらいで倒されることはないらしい。なぜかそのうちの一つがだんだん離れていっているが…まあいいか。
雨雲を呼びよせ、ギャアギャアと鳴く鳥の声を聴きながらゆっくりとその反応の方へ向かっていく。辺り一面が暗くなったところでエルルクと…神田渚の姿を捉えた。
「今日は分身じゃないんだな。わざわざ本体で来てくれるなんてよほど殺してほしいと見える。そして…やっと会えたなぁ?勇者サマ。俺はずっと、ずっとずっとお前を殺したくてたまらなかったよ!」
「なっ…」
久しぶりに見る神田渚の顔は記憶と変わらず…いや、記憶にあるよりも成長しているような気もする。まあどうでもいいが。
「聞いてはいたけど本当にかわいらしい姿ね…エルルク、本当にあいつが日中なの?」
勇者がこちらを見ながら呟く。横の神託騎士から俺の正体を聞かされていたらしい。思っていたほど驚く顔が見られなかったのは残念だが…まあいい。
どうせこれから殺すんだ。十分楽しめる。
「じゃあそろそろ始めようか」
地面を蹴り駆け出すと同時に潜行させていた血液の槍で突き刺す。エルルクと勇者は飛びのいて避けたが二人を引き離すのには成功した。
「勇者!作戦通りに行くぞ!」
「わかってるわよ!」
どちらから処理するかは迷ったがとりあえずエルルクを殺すことにした俺は『太陽の手』を発動させた。熱耐性を持ったいま、このスキルを発動することのデメリットはなくなっている。
「まずは僕からってことか。まあそう簡単にやられないけどね。その身を糧に『神樹の躰』」
エルルクはユニークスキルを発動させると同時に自らの腕を切り裂いた。その血の落ちた場所からは無数に植物が生えてくる。それらを燃やそうと手を翳すが燃え尽きるよりも早く別の植物が伸びてくるせいで一向に燃え尽きる気配がなく、むしろこちらに絡みついて動きを制限して来ようとしていた。
そうしているうちにエルルクは距離を取り、植物に絡まって動きが鈍くなったところに後ろから勇者が斬りかかってくる。
「…くっこのっ!」
しかしその動きはぎこちなく、さらに言えば剣が体に当たりそうになると動きが鈍くなるため躱すのに何の問題もなかった。どうやらこの勇者は俺を殺すことを躊躇しているらしい。
「言っただろ!躊躇うんじゃない!ここでそいつを倒せなければ罪のない人々が大勢死ぬんだぞ!」
「そんなことわかってるって!」
威勢よく叫んではいるが依然その動きは変わらない。しかしこちらの攻撃も全く当たらず一種の膠着状態になっていた。
相手の剣を躱し、その隙に攻撃しようとするが素早い身のこなしで躱されるか、あるいはエルルクの妨害によって防がれる。その身を削って力を発動させているエルルクだがどうやら消耗は大きくないらしく、確かに最初と比べれば反応は小さくなっているがまだまだ力を残しているようだった。
◇
それからしばらく状況は変わらず、お互いに有効打を与えられないでいた。
…このままだと埒があかないな。
そう思い『万象の瞳』と『万魔の口』を発動させる。暴風で勇者を弾き飛ばし、その隙に空へと舞い上がる。植物は燃やしてもキリがないので地面ごと凍り付かせた。しばらくすれば氷も破られるだろうがそれより早くエルルクを始末する。エルルクさえ始末してしまえば今の勇者だけなら何とかなるだろう。
ヴェロニカのユニークスキルの影響で操作のしやすくなった血液を二つに分け、片方を勇者の方に向かわせた。もう片方は圧縮しナイフの形にする。
「死ねっ!」
「…ッ!!」
空気の壁を蹴り、風で加速しながら高速でエルルクに向かって突き進む。躱そうとしたがさすがに反応しきれなかったようで脇腹をごっそりと抉り取ることができた。通常なら致命傷だ。
「…今のはさすがに危なかったかな。この手はあまり使いたくなかったんだけど、さすがにこのままだとやばいし仕方ないか」
「なんでその傷で耐えれるんだよ!」
普通であれば止血もできるわけのないほどの大怪我であった。が、なんとエルルクはその傷口の周りの肉体を木の幹のように変化させることで対処してしまった。もちろん無事ではないのだろう。反応は小さくなっている。
エルルクの両腕から伸びた大木に弾かれ、少し吹き飛ばされる。そしてその一瞬でエルルクは勇者の方を向きこう叫んだ。
「神の力を『神魔の脳』!勇者、いや、神田渚!悪魔クリューエルはお前が全力で打ち倒すべき敵だぞ!その身に変えても敵を打ち砕け!!」
その瞬間、光が弾けた。
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【今回の殺害人数】
12154人
【total】
21044人




