木偶人形
ちょっと短め
逃げる反応を強化魔法も併用することで追いかける。
そのおかげか反応との距離は時間が経つごとに縮まっていった。
暫く追いかけていると月明かりにうっすらと影が見えた。
飛翔するドラゴンのような生き物とその背に乗る人影。間違いない。
一気に距離を詰めて人影の右手をすれ違いざまに切り落とす。そしてそのまま体を掴んで地面へ勢いよく飛び降りた。
激しい地響きと硬いものがぶつかる音。生物であれば原形を失い地面の染みになってしまうような衝撃を受けて、ぼろぼろになりながらも男の体はちゃんとそこにあった。
「昨日ぶりだな?神託騎士」
「たった一日でここまで力をつけるとはさすがに予想外だよ。でも、また僕につかまるとは考えなかったのかな?」
「そんな状態で俺を捕まえられるとでも?さっきから体を再生させてるみたいだが随分遅いじゃないか」
「…別に、本気で再生させてないだけさ。やろうと思えばほら」
そう言うとエルルクの体から枝が伸び損傷した部位を埋めていった。それは確かに肉体の再生という面で見れば十分に速い。だが、それでも昨日見た再生の仕方と比べれば遅すぎるものだった。それに、体の表面にいくらか罅が残ったままであるのが見て取れた。
なので今度は四肢を切り落とす。
「再生できるんだったら別にどれだけ斬られても問題ないよね?」
「くっ…」
エルルクは苦しげな顔をして、その直後切り落とした四肢の着地点から先端のとがった鋭い枝が伸びてきた。しかしそれも遅い。
「お前の能力は植物を操るものだ。そしてその能力を最大限に発揮するために必要なものが日光と…水か?植物らしい弱点だな」
「さあね。もしかしたら君を油断させるための罠かもよ」
「実際にお前から感じる反応が小さくなってるぞ?ちょっと動いただけなのにえらく消耗するじゃないか。そしてもしこれが、もしも本当に罠であったとしてもそのときはそのときさ。少なくともそんな罠を使って油断させないといけないと思うぐらいには俺の力を脅威に思ってるってことだろ?」
起動ワードを口にして『太陽の手』を発動する。
「じゃあそういうわけで。次合うときはお前の本体を殺してやるよ」
そのまますべて焼き尽くした。体も、地に落ちた四肢だった植物も。
抵抗らしい抵抗はなく、そのまま神託騎士の分身体は燃え尽きた。
「さて、あいつを殺すためには日光を遮る手段がいるわけか」
ハオスに呼びかける。今日三度目のスキル取得だ。まあリソースが足りるのかという心配はあるが大丈夫だろう。足りなければ補充すればいいんだ。
(んー…太陽を遮るようなスキルか。そうだね、これなんてどう?『雨乞い』ってスキルだよ。これは魔力消費で辺り一帯に雨を降らせるってやつなんだけど第一段階で雨雲を呼んで第二段階で雨を降らせるってやつだから途中で止めれば日光を遮るスキルとして使えると思うよ)
「それが一番いいのか?ファンタジーだしあたり一帯を夜にするみたいなのがあると思ってたんだけど」
(さすがにそういうスキルはもし使われたら世界にダメージが行っちゃうからね。一応光を遮る結界を張るとかもあるけど、結界だと範囲を広げれば広げるほど加速度的に消費が激しくなっちゃうから。その点こっちは呼び出すだけでいいから維持に力もいらなくていいと思うよ)
「そういうことならそれで頼む」
(おっけー。…はい、どうぞっと)
そして体に伝わるスキル取得の感覚。本日三度目だ。
試しに使ってみれば自分の上空を中心にどんどん雲が集まってきた。
消費は…たぶん少し前の自分ならとてもつかえたものではなかったであろうぐらいには大きい。しかし、多くを殺して増えた魔力量と比べれば十分支払える程度だった。
そのまま雨雲の範囲を広げていく。『範囲感知』が届かないぐらいまで広げたところでスキルを中断した。
これだけ広げられるなら十分だろう。あとはたくさん殺しておけば何かあったときに対応できる。この調子なら勇者だって問題なく殺せるだろう。
ハオスに王都の方向と、進行方向の近くにある街など人間が多い場所を尋ねる。
そして一番近い街へと闇の中、ゆっくり歩きだした。
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【今回の殺害人数】
0人
【total】
8890人
【獲得スキル】
『雨乞い』




