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何度目かのお久しぶりです。

 見覚えのある、薄暗い道。

 これは前世の風景だ。きっとこれは夢なのだろう。


 視界が動く。

 日の沈んだ道を歩いている。

 少しずつ思い出してきた。

 これは前世で死ぬ少し前の記憶だ。


 目の前には中学生ぐらいの少年が歩いている。そして俺の右手には包丁が握られている。

 少年はこちらには全く気付いていない。

 中学生が出歩くには少し遅い時間だがどうしてこんな時間にいるのだろう。せめてこの道を通っていなければ俺に狙われることはなかったのに。


 …そうだ。お守りだ。あいつらに隠されたお守りを探してたらこんな遅くになったんだ。探したのに結局見つからなくて、明日絶対に問い詰めてやろうって考えて。


 視界が動く。進む足が速くなる。

 そして両手で握りこんだ包丁が少年の体に突き立った。


「ぐぁああ!…痛いッ!!なんで!」


 包丁が引き抜かれる。

 少しずつ赤色が広がっていき少年は苦しそうに地面をころがる。

 そうやって初めて彼の顔が見えた。


 …僕だ。


 そうだ。僕だ。ここで刺されて死んだのは僕だ。僕は大学生じゃないし人を殺そうと思ったこともないし、人を殺したいと思ったこともなかった。いじめてくる渚たちだって嫌いではあったけど殺したいとまでは思ってなかった。


 今ならわかる。夢だから。目が覚めたら忘れてしまうからこそわかるようにされている(・・・・・)


 クリューエルは僕だ。でも僕はクリューエルじゃない。日中貴文を核として僕を殺した誰かの残虐性と殺戮衝動を受け継いだのがクリューエルだ。


 あくまでもクリューエルの主体は日中貴文だ。今が元の状態に戻されているだけで、記憶が書き換えられている部分もあるがクリューエルが僕であることは疑いようがない。


「そうだよ。あくまでクリューエルは日中貴文だ。ちょっと短い間にいじりすぎたからね、まだ君を壊さないためにも少し休ませる必要があるんだよ」


 声がする。ハオスの声だ。


「こうやって戻す(・・)のはできればやりたくなかったんだけどね。まあここまでやったのに壊れちゃったら元も子もないししょうがないけど。エルルクだっけ、あれが思いのほか強くなってたのがよくなかったね。バランス調整しないと」


 こちらに向けて話しているようでいて一切こちらを気にしていない。アレにとって僕たちは玩具か、家畜か、そういったものでしかないのだろう。


「というわけでそろそろおやすみ。クリューエルが起きる時間だ」


 意識が書き換わっていく。クリューエルが夢から覚めていく。僕が夢へと堕ちていく。


 …この夢が早く覚めますように



 ◇



 木々の間から差し込む朝日で目が覚める。

 目を覚ましたのは木の上、昨日は結局街の中には入らなかったことを思い出した。

 ハオスに言われたのだ。神託騎士に顔も名前も知られている以上もう普通のやり方じゃ街には入れないと考えたほうがいいと。

 昨日は能力の使用の反動で頭も痛かったし、考えるのも面倒になって木の上で寝ることにしたんだった。


 ハオスによって使えるようになったユニークスキルは3つ。

 イザベラの使った『太陽の手』、そしてヴェロニカの『万象の瞳』と『万魔の口』だ。

 強い能力である分デメリットがあるようで、『太陽の手』を使っている間は肌が焼かれている感覚があり、たぶん『超回復』がなければ普通に腕が焦げ落ちていただろう。『万象の瞳』と『万魔の口』を使った後には激しい頭痛に襲われた。

 どちらも使うタイミングを考えなければ自らを危険に追い込むだろう。


 ともかく今の問題はこれからどうするかだ。木のてっぺんに登れば街の外壁が見える。あの壁を飛び越えて入ることは今の自分ならそう難しくはないだろう。問題はその後だ。

 あの街にもまた神託騎士がいたら、今度こそ負けてしまうかもしれない。そうでなくても俺があの街にいることがばれたらまたあのエルルクとか言う神託騎士が来るはずだ。


(そんな君に朗報だよ。何回も神託騎士と遭遇したおかげで近くに神託騎士がいるかどうかわかるようになった)


 どうするか悩んでいると頭の中に声が響いてきた。ハオスの声だ。


「それはまた都合のいい…まあいいや。それで、近くにいるのか?」

(今はいないね。まあつまりあの街には今君を止めうる人間はいないってことだ)


 …そこまでわかってたら遠慮する理由もないか。身に着けた能力の慣らしとしてもちょうどいいだろう。試してみたいこともある。


「それじゃあやるかな」


 血を延ばしワイヤーのようにして外壁の上へと体を引っ張り上げる。ヴェロニカとの戦いから少し血液の操作がやりやすくなった気がする。きっかけはきっと戦いの終わりにしたあれだろう。自分の支配下に置いていない血液の遠隔支配。そのあとに使った『万象の瞳』の影響もあり、何となくだがあれがどういうものなのか理解していた。

 外壁の上には誰もいない。見下ろすと多くの人が歩いている。その中の一人に狙いを定めて手を伸ばし、握る。


「うわああっ!」

「急に血を吐いたぞ!!」


 手を伸ばした先にいた人が突然倒れる。当然だ。心臓を握りつぶされたのだから。

 ヴェロニカとの戦いをきっかけに血液の遠隔支配が出来るようになったがその耐性には個人差があるようで、支配できるかどうかは何となく直感でわかった。試しに一番簡単そうな人を選んでやってみたが生きた人体の中の血液であるにも関わらずヴェロニカが流した血の支配よりも簡単にできたことに自分でも驚いている。

 まあ簡単にできたとはいっても疲れるためそこまで使う機会はないかもしれない。ここまで簡単に操作できる相手なら普通に自分の血液で殺したところでそこまでかかる時間は変わらないし、何よりそっちのほうが楽だ。


 混乱が広がる街を見下ろす。今からここを文字通り血の海に沈めよう。これだけ殺せばきっとあいつを殺せるだけの力が手に入るはずなんだから。


 =====================================


【今回の殺害人数】

 1人


【total】

 358人


【獲得スキル】

『太陽の手』『万象の瞳』『万魔の口』『血の支配』

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