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プロローグ

久しぶりの投稿です。今度こそ完結まで持ってい行けるように頑張ります。

 最近、ある噂が流れている。


 この国に『悪魔』が発生した。そして、その悪魔に狙われると地獄のような苦しみを味わったあと心臓を抜き取られ殺される、というものだ。


 ちなみにその『悪魔』の見た目は一切わかっていない。確かに心臓を抜き取られ殺された人は何人もいるが犯人を目撃した人は一人もいないからだ。


 そんな老若男女問わず殺す悪魔、それが俺『クリューエル』。地球で殺され、邪神によってこの世界に送られた転生者だ。



  *



 三カ月前、俺は気がつくと真っ暗なところにいた。なぜこんな所にいるのかわからず周りを見渡そうとして気づく。自分の体が白い塊、俗に言う人魂の様なものになっていること、そして恐らく自分は死んでしまっているということに。

 そのことに気づいた瞬間、目の前に、と言っても目なんてないのだが、黒髪の、笑みを浮かべた胡散臭い男が現れてこう言った。


「こんにちは。日中(ひなか)貴文(たかふみ)くんで間違いないね?」


 その男はそう尋ねたあと返事を聞こうともせず続ける。


「日中貴文、十九歳の大学二年生。特に才能があるわけでもなく、目立った特技もない。ごく普通の人生を送っていたところを六月十八日の午前七時三十二分、背中から突然包丁で刺されて死亡」


と、一通り俺の事を説明した後こう言った。


「転生させてもらえるとしたら、どうする?」


「ああ、そうそう。喋れないのにどうやって答えたらいいのかって思ってるみたいだけど、お約束通り君の考えることを読み取ってるから安心して」


「うん。お約束。こういう話、嫌いじゃないでしょう?」


 確かに俺はこういう話はよく読んでいた。死んで、別の世界に転生する話。何かの力を貰って勝手気ままに別世界で生活するような話などは特に。


「そんな物語のように転生させてもらえるとしたらどうするんだい?」


「うん、やっぱりそう答えると思ったよ。君は慎重なタイプだから。確信が持てないことに対しては特にそうだよね」


 男の質問に対する俺の答えは『とりあえず説明して欲しい。答えはその後にする』というものだった。


「じゃあまずは自己紹介をしようか。僕は『ハオス』。君がこれから転生する世界で邪神と呼ばれている存在だよ」


「邪神ってどういうことかって?それは後で言ったほうが分かりやすいだろうから後で説明するよ。まあ、大体の予想はつくだろう?とりあえず今は名前だけ。転生先の世界の説明を先にしよう」


「まだ転生するとは言ってないって?どうせ君は話を聞いたら転生を選ぶだろうし些細なことだよ」


「…僕としてはしばらくこんなやり取りをしててもいいんだけど、そろそろ本題に入らせてくれないかい?」


「…さて、転生先のことを説明しようか。転生先の世界の名前は『イリニ』。剣と魔法のファンタジー世界、って言ったら大体理解してくれるだろう?」


 ハオスの説明によるとその世界には神様がいるがハオスとは仲が悪く、それで嫌がらせとしてハオスは魔物を創ったり、たまに別世界の人間を送りこんで問題を起こさせたりしているということだ。


「まあそこで君に向こうの世界でやって欲しい事なんだけど…人を殺して欲しいんだ。それも出来るだけ沢山」


 ハオスの口から紡がれたその言葉に最初は耳を疑った。ただの日本人だった俺にそんなことが出来ると思っているのか、と。


「うん。君なら出来るよ。だからこそ君を連れて来たんだ」


そして続けて、


「だって君、ずっと誰かを殺してみたかったでしょう?」


と言った。


 突然の指摘に一瞬呆然としたがすぐに我に返って精一杯否定する。しかしハオスは、


「そう否定しなくてもいいさ。僕は君のことを全部知ってるんだから。それこそ君よりもね。」


と言う。そして続けて俺が誰にも教えていなかった秘密について話し始めた。


「中学一年生の時に自分が死んだらどうなるのかと不思議に思った」


「その数ヶ月後には、自分を殺す前に他の人で実験したくなった」


「高校に上がる頃にはもう死んだらどうなるかなんてどうでも良くなった。ただ単純に殺してみたくなった」


「でも君はそれによって捕まることを恐れた。殺しはしたいけど、それで人生を棒に振るのは避けたかった。だから絶対に捕まらないような、自分がやった証拠が全く残らないような計画を立てようと思った」


「日常的に自分が殺されるかもしれないと思いながら暮らしている人はまずいない。警察さえなんとか出来る方法があれば殺すのなんて簡単だといつも思っていた」


「そしてその計画が完成し、とうとうそれを実行する日の前日、通り魔に襲われた」


「そして君はこう思ったんだよ。こんな奴に殺されるんだったら警察なんて気にせずに殺しておけば良かったってね」


「君は僕が、転生して人を殺して欲しいと頼んだ時からこの転生を断る気なんてなかっただろう?」


 ハオスが言ったことは事実だった。


「じゃあ改めて聞こうか。転生させてもらえるならどうする?」


 俺はその問いかけに『転生したい』と答えた。


「じゃあ説明の続きといこうか。と言ってもそこまで説明する必要もないと思うんだけどね。向こうの世界は君の世界にあるラノベ、それも異世界召喚モノによくある設定と同じようなものさ。スキルやレベルがあって敵を倒せば強くなる。スキルには二種類あって、一つは体…容姿や目など体のそれぞれの部分に宿るスキル。もう一つはただ単純に“出来る”ということを表すスキルだ」


「前者の方のスキルは魔眼や魅了と言ったものがあるけど、それに関わる部位が壊れたり無くなったり変化したら完全に使えなくなる。後者の方は魔法とか剣術とかで体に宿るスキルと違ってそれに関わる部位が壊れたり無くなったりしてもある程度使えるよ。ここまではいいかな?」


 黙って話を聞いているとそう聞かれたので、問題ないと答える。


「そろそろ向こうの世界へ行く準備をしよう。俗に言うキャラメイキングとチュートリアルってやつさ。まずはキャラメイキング、向こうの世界での身体からだね」


 そう言ってハオスが指を鳴らすと俺の視界がガクンと下がる。そしてさっきまでなかった温もりと浮遊感を感じるようになった。

 そこまで時間は経っていないはずなのに懐かしく感じる感覚に戸惑っているとハオスが聞いてきた。


「鏡はいるかい?」

「見せてくれ…っ!?」


 自分から出た高い声、まるで小さな女の子のような声に驚く。目の前に出てきた姿見を覗くとそこには十歳ぐらいに見える金髪の小さな女の子が立っていた。


「ハオス、これはどういうことだ?」

「どうしたんだい?君の望みに限りなく近い見た目だと思うけど」

「俺には幼女の姿になって喜ぶ趣味はないぞ」


 俺がそう言うとハオスは笑って答えた。


「そんなことは知ってるさ。さっき言っただろう?容姿に宿るスキルがあるって。その身体には見た人に安心感を与えて信用されやすくなる…一種の魅了だね。そんなスキルがついてる」

「…つまり俺が殺しやすいようにってことか?」

「まあそういうことさ。君は力でねじ伏せて殺すより油断している相手を背中からざっくりといく方が好きみたいだからね。その身体ならそれが出来る。まあ性別変わっちゃうけどどうでもいいでしょ?問題はあるかい?」

「……そういうことなら問題はない。それで、他には何か貰えたりするのか?」

「そのつもりさ。だけど先に向こうの世界に送るよ。向こうに行っても説明は出来るし力を与える事もでみる。何よりも初めては自分の力だけでやりたいだろう?」

「そういうことなら送ってくれ。…この身体になっている時点で既に自分の力じゃない気がするけどな」

「細かいことは気にしない気にしない!心の準備はいいかな?」

「ああ、いつでもいいぞ」

 俺がそう言ったのを聞いたハオスが指をパチンと鳴らすと俺の意識は薄れていく。目の前が真っ暗になり、気がつくと俺は森の中にいた。

続きは今日の午後投稿予定

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