ひとつめの話
白一色。
その場に現れた赤い服を着たポニーテールの少女の視界に最初に入ってきたのは、見渡す限りの白。つまり、それ以外の表現が出来ないほどの光景だった。
「……えーと……」
「やっほー」
辺りを見回しながら戸惑う彼女の目の前にうっすらと青白く光る球体がいきなり現れて、そう彼女に話しかけてきた。その声は前に何度も聞いたあの声だった。
「というわけで、手伝ってもらう日が来たよー」
「え……えーと……」
その球体の発した言葉に、彼女は戸惑う以外の行動ができないでいた。
「そりゃまぁ、唐突にこんなところに放り出されりゃ、普通は戸惑いもするでしょ。なにより、あんたもあんたでそんな形状をしてるのに、いきなり現れて喋りだして説明無しにそんなことを要求すれば、何も知らない子だったらなおさら戸惑うに決まってるじゃない」
その声は彼女の後ろから聞こえてきた。振り返ってみると、そこには白い服を着た三つ編みの少女と、黒い服を着たツインテールの少女が立っていた。
「まー、私らの時もこんな感じだったからねー。たぶんその時は、私らもその二人みたいな感じになってたかな」
「二人?」
そこで彼女は自分の横にもう一人、青い服を着た長い髪の少女が立っていることに気付いた。
「……ああ、同じようなデザインの服を着ているということは、これっていわゆるコスプレというやつですね」
「なんかとんでもない誤解をしてるようだから言っておくけど、お前が着ているのも同じデザインの服だからな?」
赤い服を着た少女の言ったことに対して、黒い服を着た少女がそう言い返した。そう言われて赤い服を着た少女は自分の格好を確認し、
「本当だ! なんか赤い服になってる! 確か入院中で、パジャマを着て寝てたはずなのに!」
そう驚いていた。
「そろそろ説明を始め……の前に、せめて自己紹介はしておかなきゃね」
驚いているポニーテールの少女を見て笑いを堪えつつ、三つ編みの少女はそう話を切り出した。
「私は白根ユキ、神奈川に住んでる中学三年よ。それでこっちが……」
白い服を着た少女がそう自己紹介をし、
「あー、私は谷川小百合。横浜在住の中一」
黒い服を着た少女がそう自己紹介をしたところで二人の言葉が止まり、
「相変わらず横浜は神奈川とは違うみたいに言うわね!」
「しょうがないだろ! 神奈川って言ってもあまり伝わらないのに、横浜だって言うとみんなに普通に伝わるんだから!」
「なんか地元論争が始まってますけど」
二人の口論を見て、ポニーテールの少女は横に浮かんでいる光る球体にそう言っていた。
「それで、そっちの二人は?」
ユキと名乗った少女が、すぐに論争を切り上げてそう尋ねた。
「あ、私は赤城桃香です。群馬に住んでる中学一年生です」
赤い服の少女がそう名乗ったところで、
「つ、ついに関東圏外からの戦力が!」
「群馬も関東なんですけど!?」
小百合と名乗った少女の言葉に、桃香と名乗った赤い服の少女は間髪入れずにそう言い返していた。
「それで、そっちは?」
そんな二人のやりとりを横目に、ユキは長い髪の少女にそう尋ねた。
「えっと……は、榛名奏です……」
「それで、普段はどこに住んでるの?」
「一応、都内ですけど……」
小声で答えた奏と名乗った少女の言葉を聞いて、
「くっ、都民様がいては横浜市民の私でも都会風吹かせられない!」
「都民がいなくてもそんな風は吹かせなくていいわよ」
小声でそう呟いた小百合に、ユキはため息混じりにそう言っていた。
「ところで、こんなところにいるってことは、やっぱり二人もなんかしらで死にかけたんだよね?」
「お前なぁ、そんな話題をそんな明るい声で尋ねるなよ」
二人にそう尋ねたユキの横で、小百合はそう小声で呟いていた。
「いやー、最初はかかりつけの診療所で風邪だって言われてたのに、気が付いたら肺炎になってて入院してました。そのせいで目を覚ましたら病院のベッドの上で、ゴールデンウィーク中はずっと病院で過ごすことになってしまいました」
「そっちも、そんなやばい状況を明るい声で言われても」
ユキの質問に答える桃香の言葉に、小百合は再び小声でそう呟いていた。
「それで、そっちは?」
ユキは今度は奏にそう話を振ってみた。
「えっと……私は……その……」
「あー、話が盛り上がってるところ悪いんだけど」
その話の中に、唐突に光る球体が割り込んできた。
「相変わらずお前は空気を読まないな」
「そういう問題じゃなくて、そろそろ第一波が近付いてるんだけど」
その光る球体を鷲掴みにしながら言う小百合に、光る球体は口調を変えずにそう言い返した。
「あー、もう来ちゃったか。できれば説明が終わってから来て欲しかったんだけどね」
「説明どころか雑談してただけじゃん」
ユキの呟きに光る球体はそう言い返す。
「あの、来たって何がですか?」
「あー、あれ」
桃香が小百合が指差した方に視線を向けると、真っ白な周囲の風景に反して様々な色をした様々な形状の物体が、宙に大量に浮かんでいる光景だった。
「な……なんですか、あのカラフルなパレードは!?」
その光景を見た桃香はそう言っていた。
「んー……なんて説明しようか……そもそも説明する暇あるかな?」
光る球体がそう迷っているところで、
「だったら説明は小百合がやっておくから、とりあえず始めるわよ!」
ユキがそう言って、その大量の物体に向かって駆け出した。
「なに勝手に一番面倒な事を私に押し付けてるんだよ!」
そんな小百合の苦情を気にすることなく、ユキは走りながら右手を軽く振った。その瞬間、彼女の手には一本の剣が現れ、握られていた。
「はぁ……しょうがない。それじゃ説明するか」
「お、お願いします」
ため息の後にそう話を切り出す小百合に、緊張した表情でそう返事をする桃香。
「まずあの色とりどりな自己主張の強い物体の数々を、私らは『エレメント』って呼んでる。それで私らがここでやることは、あれを退治すること」
「あ、あれをですか……」
小百合の説明を聞いて、そう呟きながら桃香はユキが暴れている方に視線を向けていた。
「そもそも、その『エレメント』というのがなんなんですか?」
奏がそんな疑問を口にした。
「……そういや、そもそもあれはなんなんだ?」
その疑問に対して小百合は、少し考えるような素振りを見せた後、光る球体にそのままその疑問を投げていた。
「あれはここを通過して、いわゆる君達が普段住んでいる側に浮上しようとする『現象』だね。あれがここを出て君達のいる世界に飛び出すと、何かしらの現象が引き起こされるんだよ。例えば……そうだね、地震とか大雨とか、そういう感じのものだね」
「まぁ、そんな感じだな。つまり、そういったことを引き起こさないために、私たちはあれをここで駆除してるんだ」
光る球体の説明の後に、小百合はそう言葉を続けていた。
「説明していただけるのはありがたいのですけど、なんかこっちに向かってきてますよね?」
奏がそう言いながら指差す方には、暴れているユキを素通りするようにいろいろな物体が向かってきていた。
「そりゃ、ここを通らないと出られないからね」
「いや、出しちゃ駄目なんじゃ……」
「駄目だから、ここで私がいるんだよ」
光る球体の言葉を聞いた桃香の呟きに答えるように小百合が言った。
「それじゃ、面倒だけど一仕事やりますか、模範として」
小百合はそう言うと、向かってきている物体の数々の方に視線を向けると、右腕を上にあげ、それを勢いよく振り下ろした。すると、向かってきていた数々の物体の上から大きな鉄板が一枚降ってきて、それらをまとめて押し潰していった。
「いやー、豪快だねー」
「正直言って、こんなのを一個一個わざわざ相手にするのは、すっごい面倒だからな」
感嘆の声をあげる光る球体に彼女はそう言い返し、
「といっても、さすがにあれ一発で完封ってわけにはいかなかったか」
小百合がそう呟きながら視線を向けた先には、落下した鉄板の上を通過して向かってくる複数の物体が存在していた。
「ふーむ、この程度の数ならやらせてみるか。というわけで、あれはあんたら二人でなんとかしてみな」
そんな意地悪い表情を浮かべながら、小百合は桃香と奏の方を向きながらそう言った。
「二人でって……どうすればいいのでしょうか?」
「だから、あれと戦う……というか、狩るんだよ。こういうふうに武器を出して」
奏の疑問に小百合はさも当然のようにそう答えながら、ちょっとした雑誌くらいの大きさの鉄板を出した。
「いや、どうやってそんなのを出すのかってことを……」
そんな小百合の答えが返ってきたことに対して、再び疑問を口にした奏に、
「なんか出ろー! みたいに念じれば出せるって」
「そんなアバウトな」
その疑問に答えた小百合の言葉を聞いて、奏はそう呟くしかなかった。
「どのみち、もう始まっちゃってんだから騙されたつもりでやってみろって」
困惑している二人に、小百合はそう声をかける。
「騙されたつもりで、ですか……えーと……な、なんか出ろ~」
桃香はそう念じ始め、
「…………な、なんか出ました!」
彼女の手には自分の身長と同じくらいの長さの一本の槍が握られていた。
「あ、あの……さすがに私、槍なんて使ったことないんですけど……」
桃香は自分の握っている槍を見ながらそう呟いた。
「そんなこと言ったら、鉄板を武器にして戦ってる私はなんなんだよ。こんなもので戦ったことなんか、ここに来るまで一度もなかったぞ」
「それ鉄板って呼んでるけど、分類上は盾なんだよね。気が付いたらみんな揃って取っ手部分を省略したり、形状を簡略化したりするもんだから、最終的にそんな鉄板状になっちゃったんだけど」
小百合がそう言い返した後に、光る球体がそう説明を挟んできた。
「つまり結論としては、頑張って慣れろと」
「こんなのやってれば勝手に慣れるし、慣れないとこの先どうしようもないからな」
桃香の結論を小百合はそう肯定した。
「あの……矢の無い弓って、どうすれば戦えるのでしょうか?」
今度は弓を握っている奏がそう小百合に尋ねていた。
「それ弦引っ張れば勝手に矢っぽい何かが出てきて、手を離せば勝手に発射されるやつ」
奏の持つ弓を見て、小百合はそれがさも当然かのようにそう説明した。
「なんでそれが分かるんですか?」
「前にいた人が使ってたからね」
「前にいた人?」
そんな奏の呟きに小百合は答えることはなく、
「それより、早くあれをどうにかしないと、ここを通り過ぎちゃうぞ?」
宙に浮きながらゆっくりと向かってきている複数の物体に目を向けながらそう言った。
「そんなことを言われましても、弓道なんてやったことないですし、当たる気がまったくしないんですけど」
「とりあえず、適当に撃ってみたら?」
そう言いながら戸惑っている奏に、小百合は笑みを浮かべたままそう言い返した。
「……それじゃ、とりあえずやりますけど……外したら外したで知りませんよ」
奏はそう文句を言いながら、手にした弓の弦を引っ張った。すると、そこに青く淡い光を発した矢がそこに現れる。
それを確認した奏は無造作に宙に浮く物体のひとつに狙いを定め、その矢から手を離した。するとその矢は青い光の線となって放たれ、飛び出した。
「あ……これ、外れますね」
それを撃ち出した直後にそう感じた奏の呟きが終わるところで、飛んでいったその青い光は、おそらく狙いが外れていたであろう目標に向かって、途中で屈折するかのように軌道を曲げて貫いていった。
「いやー、やっぱり何度見てもホーミング性能付きの矢はえげつねーなー」
「こうなるのを知ってたんですね」
その光景を見ていた小百合の一言に対して、奏は呆れた様な表情で視線を向けながらそう言った。
「そりゃ、何度も見てきたことだからな」
その言葉に悪びれることなく小百合はそう言い返す。
「さて、あっちはどうなってるかなー」
そして彼女はそう呟きながら桃香のいる方に視線を向けると、頭上に浮かんでいる物体を相手に手にした槍を振り回していた。
「槍として使ってないなー」
それを見た小百合はそう苦笑しながら呟いていた。
「そんなのんきなことを言ってていいんですか?」
「いや、あれくらい一人でどうにかできないと、この先どうやってもやっていけないだろうからさ。ま、本当にダメだと思ったら、私がどうにか……」
奏の疑問に小百合がそう答えていたところで、桃香が振り回していた槍が宙に浮いていた物体に当たり、それが地面に叩きつけられ、そのまま跳ね返って小百合の顔面に直撃した。
「……前言撤回……私があいつもろともどうにかする!」
「と、とりあえず落ち着いてください!」
そう大声をあげながら駆け出そうとした小百合を、そう大声をあげながら奏が止めようとしていた。
「こっちは荒れてるわねぇ」
そんなやりとりをしているところに、ユキが戻ってきた。
「荒れるもなにも、槍を槍として使ってないことまではいいとして、内野安打を私にヒットさせた罪は重い!」
「それくらいのダメージ、ここまでの三ヶ月で何度も体験したでしょ」
そんな小百合の文句を、ユキは諭すような感じでそう言って、
「それより、あの鉄板をいつまで放置してるのよ?」
多くの物体を押しつぶした巨大な鉄板を指差しながら、そう小百合に尋ねた。
「あーもー、いろいろとめんどいなー」
そう言いながら小百合は腕を横に振る。すると、それに合わせる様に巨大な鉄板が跡形もなく消滅し、その後には半透明な石があちらこちらに転がっていた。
「しょうがない、それじゃ説明を再開するか。このあちこちに転がってる石ころみたいなのは『ナミダ』って呼ばれるもので、私らはこれを集めてるんだ」
桃香が謝りながら急いで戻ってきたのを確認した小百合は、その石を拾い集めながらそう説明した。
「それで、この『エレメント』を倒して、それが落とす『ナミダ』ってのを集めるという役割を担っていることから、私らは自分のことを『エレメンティア』っていう呼び名で呼んでいる、ということでいいんだよな?」
「さぁ?」
彼女は説明の後に光る球体にそう話をふったものの、光る球体はそんな疑問の声をあげた後、
「だってその取って付けたかのような設定みたいなの、だいぶ前にここに来た子たちが勝手にそう呼び始めたやつなんだもん。便利だからそのまま利用してるってだけだよ」
そう言っていた。
「なんなんですか、この内輪の話の不一致は……」
「そういや、私もこの説明をこいつから聞いたわけじゃなかったな」
その状況を見ていた奏の言葉に、小百合は髪をかき乱しながらそう呟いた。
「それでこの石みたいなの、どうするんですか? 持ってるだけだと、うっかりポケットから落ちそうですけど」
「こういうのは、ただ説明するより百聞は一見ってやつよ」
半透明な石を手にしていた桃香の疑問に対して、今度はユキがそう説明を始めた。
「たぶん腰の辺りにこういう小瓶があるでしょ?」
「えっと……あ、これですか」
ユキが取り出した小瓶と同じものが自分の腰の辺りで吊るされてるのを桃香は手にとって確認し、
「……これ、口が塞がってる上に蓋がないんですけど」
蓋を開けようとして、それが見当たらなかったためにそう言った。
「その小瓶の上部分に窪みがあるでしょ、そこの部分にこの石を置いてみて」
そう言いながらユキは奏に半透明の石を手渡した。そして促されるように桃香と奏は半透明な石を小瓶の口の上に乗せてみた。するとその石はゆっくりと小瓶の中に吸い込まれていき、全部吸い込まれた後に小瓶の中に透明な雫が一滴落ちていった。
「こんな感じで、この瓶の中にその液体を溜めていくのが私たちの目的ってわけ。それを満タンにすればクリアになるわね」
「あれ一個でこれだけだと、時間かかりそうですね」
ユキの説明を聞いた桃香が、小瓶を軽く振りながらそう言った。
「本気を出せば意外と早く終わるけど、やっぱり問題なのは制限期間よね」
「制限期間?」
ユキの説明の途中で出てきた言葉を繰り返すように口にした桃香に、
「そう、これを満タンにするのに決められた期限ってのがあってね。一年以内にやってもらわないとならないんだよ」
割り込むような感じで光る球体は説明を引き継いだ。
「なんで一年以内なんですか?」
その説明を聞いて、奏はそんな疑問を口にしていた。
「この辺の説明はちょっと長くて大変なんだけどね……君たちは一度死にかけてここに来た、ということは理解してるよね。それで、とりあえず死なないように処置はしてはあるんだけど、それでも精神という、いわゆる魂のようなものが身体から剥離しているような状態なんだ。つまり現段階では『死んでない』というだけで『生き返った』わけじゃないんだよ。その剥離した精神をその状態のままで維持しておける限界の期間が一年ってわけ。その期間の内に君たちが正しく生き返るために必要なエネルギーを確保する必要があって、そのために君たちにはそのエネルギーとなるナミダを集めてもらってるんだよ」
「分かりやすく言うと、残りタイムが一年で、その時間内にナミダを集める必要がある、という感じで受け取っとけばいいと思うぞ。私もそういう感じで理解してるし」
光る球体の説明を聞いた後、小百合はそう簡単な説明をした。
「説明はこんなくらいでいいかしら?」
「あの、ひとつだけ気になることがあるのですが……私たちが今ここにいるってことは、周りの人からすれば私たちがそこからいなくなってるってことになってますよね。それって失踪届けとか出されませんか?」
そう言って説明を終わらせようとしたところで、奏がそう質問をした。
「その点は問題ないよ。だってここに来てるのは精神的な存在部分だけだから。物質的な存在部分……つまり身体は向こうにちゃんと残ってるし、その間は本能というか、いわゆる擬似的な意識が身体の維持・動作を行ってるから、向こうで不自然な部分として疑われるところはたぶんひとつもないよ」
「そうなんですか」
光る球体の説明を聞いて、とりあえずは納得する奏。
「それに、こっちにいるのは毎週同じ曜日の二十四時間だけで、その一日だけ身体が勝手に動いてる程度だからね。まぁ、その一日分の記憶が二重に発生していて最初は混乱するかもしれないけど、そのうちたぶん慣れるよ。君たちの場合は毎週日曜日にここにいるから、日曜日の記憶がそのまま重なる感じだね」
「そのせいで自分でやった憶えのない記憶があって混乱するのが問題だな。こっちとしてははた迷惑なんだけどね」
奏と光る球体の会話に、小百合がそう割り込んできた。
「覚えのない記憶があることが、そんなに問題になるかな?」
小百合の言葉に光る球体はそんな疑問を声にした。
「問題もなにも、大問題だって! だって私たちがここにいるのって日曜なんだよ! つまり朝はアニメ見てるはずの時間なんだよ! その時間にここで戦ってて、月曜の朝に起きたら、見てもいないアニメの記憶があるとか、悪夢以外の何物でもないじゃん!」
「よく分からないんですが……」
小百合の力説を聞いた後の桃香の一言がそれだった。
「まぁなんというか……とりあえず、これからよろしく頼むよ」
小百合の言葉をスルーする感じで、光る球体は桃香と奏にそう言った。
「よろしくお願いします。えっと……」
そう返事をしようとして言葉につまる桃香を見た後、ユキと小百合はお互いの顔を見合わせ、
「「そういえば、こいつのこと説明するの忘れてた!」」
同時にそう言ったのだった。