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5 衣選びは


年甲斐もなく


昔 浮名を

流した相手が

忘れられずに

ちょっかい出して


---互いに恋は

不似合いな歳---と


にべもなく

釘を刺されて

冷汗三斗


またあるときは


亡くした

昔の恋人の

忘れ形見を

養女に迎えて

父親以上に

世話を焼き


嫁がせてなお

恋々とした


そしてとどめは


もう若くない

この歳にして

娶った正室


貴女と二人

穏やかな

余生を共にと

千回万回

願ったはずが


兄の望みを

無下にもできず


親子ほどにも

歳のはなれた

内親王を

妻と迎えた


次から次へと

きりもない

私の醜態


滑稽な

痴態の数々


貴女は

嫌でも

目にし

耳にし


いいかげん

嘆く気力も

失せたろう


目も耳も

いっそ

塞ぎたかったろう


その頃だったか


「新年に贈る

衣選びは

くれぐれも

各々方の

ご器量に

似合いのものを」と


ある年の暮れ

貴女は言った


言い方が

言い方ならば


夫の多情を

痛罵する

鼻持ちならない

当てこすり


多少とも

身に覚えのある

夫なら

二の句も継げない

嫌味な皮肉


しかるに

貴女の一言は

悪意の

あの字も

ないどころか


温かく

仁恕にあふれ


もしも私が

女でも

到底真似は

できないと


いつもながらに

舌を巻き

そして内心

恩に着た


貴女は

終生

堪忍袋の

緒を切らすことの

ない人だった


終生

貴女の

堪忍袋の

緒はどこまでも

しなやかで


その

しなやかさを

いいことに

私は

とことん

好き放題


いつのまにか

その陰で


膨らみすぎた

堪忍袋に

ほかならぬ

貴女自身が

押しつぶされて

喘いでいたのも

気づかなかった


かけがえのない

貴女の命の

灯を縮めても

気づかない

鈍い阿呆が


夫たる

この私



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