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会合の一コマ6

カイゼルは眠るアルスの頭を軽く撫でると鼻歌混じりに自宅のドアを開けた。


「客間に皆を通してあるからアルスを寝かして来てくれるか?」

「そうか、でもアルスが寝ている部屋は泊まりの連中がつかうんじゃないのか?」


そういわれてカイゼルは頭に手をやった。全く考えていなかった。


実はアルスが寝ている部屋は客を泊める為の部屋だったのだ。

年単位で会合なんか無いしその内その内と考えているうちにだんだんと先延ばしになっていった。


「しまった・・・野宿して「ふざけるな。」はい・・・。」


さらっと客人を野宿させようとするがシシリアに釘を刺される。村の会合は重要なのだ。

名義上村の長はカイゼルだが種族たちはそれぞれに上下関係があり、頭取がカイゼルに従うので村が村として成り立っているのだ。頭取自体は彼と気心の知れた中なので多少の無体も堪えてくれるがかといって

なんでもやっていいわけではない。


「こまったな・・・とりあえずそこのソファに寝かしておいてくれ、夜はシシリア、お前さんにまかせていいかの?」

「ああ、任された。」


口調とは裏腹ににっこり笑顔のシシリアにロッチナは思わず苦笑する。 シシリアが此処まで変わることなど誰が予想できただろうか。


孤高の狩人として各地を放浪し、カイゼルと死闘を繰り広げエルフのみならず遍く種族に伝説的存在として語り継がれる存在の彼女がこの子供一人に表情をころころと変えるのだ。


「さて、今日の昼飯はイモと根菜のソテーに柔らか白パン。川魚の香草焼きにトマトのシチューだ。」

「カイゼルさんの手料理なんて何年ぶりか、楽しみだよ。」

「それはヴァネッサのヤツも言っていたな。」


ヴァネッサ、それは今回の会合に出席する獣人ミノタウロスの女性。

頑丈な体躯とスタミナ、水と草食のみで命を繋ぐことが可能という過酷な環境に耐える強靭な体を持った

種族で農耕に従事することが多い。一部の嗜好ではあるが美女のミノタウロスの乳は滋養強壮の効果も相まって高値で取引される。


「ようよう! おそかったじゃねえか!あれ?ビルニムのヤツは?」


アルスをソファに寝かせてから客間に一足先にシシリアとロッチナが向かうとカイゼルほどではないにしろ大柄な女性がからからと笑って出迎えた。

黒っぽい茶髪の髪に勝気な表情。筋肉質の体、そしてシシリアの顔ほどもある胸が特徴的だ。


「ビルニムはおいたが過ぎたからお仕置きした。」

「直にくるから気にしないでいいわヴァネッサ。」


シシリアは平然と、ロッチナは疲れたように答えるとヴァネッサは良くわからないがとりあえず納得することにした。 難しいことを考えるのは彼女の性に合わないのだ。


「ふーん、まあいいがな・・・。ビルニムが遅れるとして残りはどうなるんだ?」


「猫人族のコロロとドラゴニュートのアックスがまだだが・・・来たぞ。」


そう言うと窓から猫耳をピコピコと動かしながら妙齢の美女が、それに続いて爬虫類を思わせる尻尾と翼を備えた同じ位の年齢の女性が入ってきた。


「窓から失礼、玄関から入るのって落ち着かなくっていけないわ。」

「ごめんね、止めたんだけど聞かなくてさ。」


二人はそう言うと広い客間に備え付けられたテーブルについた。


「良い匂いがしてたわよ、カイゼルがまた腕を振るってくれてるのねえ。」


魚の匂いが素敵よ、とコロロは上機嫌に目を細める。 心なしかのどが鳴っている気がする。

皆もそれぞれの席についてカイゼルが料理を運んでくるのを待つことにする。


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