会合の一コマ5
「まさか・・・それほどの子とはな。」
「私も引き取った日には知らなかったがカイゼルを交えて夕食を食べた後に披露してくれた。」
体が完全に精霊と同化し、壁や人体をすり抜けて移動する様は悪戯好きな精霊そのものだった。
「なるほど・・・もしも勘違いしていたのが彼だったら殺されていたかもしれないな。」
「勘違いってどういうこと?」
失言に気付いたのはシシリアのこめかみに青筋が浮かんでいるのが見えてからだった。
「いや、その・・・。」
「正直に言わないと開きにする。」
「うぅ・・・勘弁してくれ・・・。」
ロッチナは洗いざらい白状した。
見つけたアルスを穏便に捕まえようとしたもののビルニムが先走ったため失敗したこと。チャームを使って聞き出そうとしたが失敗したこと戦闘になったがカイゼルの名前が出たことでようやく誤解がとけたことなどなど。
「良く見たら怪我してる・・・ビルニムは死刑だ。」
「えー・・・。」
ビルニムはバカだが悪気があったわけでも傷つける意志があったわけではなかった。ただ手加減が下手で人の話を聞かないだけなのだ。だが、ただバカなのだ。そしてシシリアも親バカの気質を見せている。
「ビルニムはどこ?」
「そういえばさっきまで此処にいたはず・・・。」
彼女は荒事から逃げられるほど勘はよくないはず。そう思っていると村の数少ない飲食店から菓子を
抱えて出てくるビルニムの姿が見えた。
「ロッチナー、おかし買ってき・・・た・・・よ?」
「遺言を墓石に刻め、介錯してやる。」
「うげええええ!シシリア!? シシリアなんで?!」
風の魔法をモロに喰らいビルニムは枯葉のように吹き飛んでいった。
「さて、とりあえず昼食にしよう。」
「う、うん。」
ロッチナは小さくなっていくビルニムに心の中で手を合わせると連れ立ってカイゼルの家へと向かっていった。
「なるほどのう。」
「勘違いとはいえビルニムは許し難い。」
事の顛末を聞いたカイゼルはうーむと考え込むとため息をついた。カイゼル自身もお仕置きくらいはと思っていたがシシリアの魔法で吹き飛ばされてしまったビルニムを思うとさすがに気が引けた。
とりあえず彼女の反省次第ということで自らを納得させる。
「とりあえず今しがた吹き飛んでいったビルニムを除いて皆集合しておるよ。」
昼食を食ったら本格的な会合じゃ、とカイゼルは言う。




