会合の一コマ4
pv6000 ユニーク1000を越えました!
こんな作品ですがこれからもご愛読いただけると嬉しいです。
※ロッチナ視点
不思議な子供と出会った。 彼・・・といっていいのかわからないくらい幼い見た目だがどうやら男の子らしい。
そんな幼い見た目とは裏腹に能力は計り知れない。
手加減していたとはいえビルニムの攻撃を掻い潜り完全に回避できてこそ居ないが人間の身体能力では
説明できない方法で彼女の拘束を脱出して見せた。
また私のチャームを受けたというのに普段通り・・・いや、私は彼の普段など知りもしないが・・・
あの様子だと彼の全力を出し切るだけの状態を維持できたのだ。それでいて私達の姿に微塵の恐れも忌避も感じて居ない様子だった。
それだけで十分規格外なのにそうかと思えば私が抱きかかえるだけで子供のように眠ってしまったりと
歳相応の反応を見せたりとまったくワケがわからない。
ただいえることはこの子は尋常ならざる世界で生きてきたのではという仮説が私の中で立っているということだけ。
「カイゼル殿も情け深い方・・・放っておけなかったのか。」
「そうだな、じいちゃんもシシリアもやさしーから。」
起こさぬように気をつけながら道を進むとやがてカイゼル殿が起こした亜人たちの村に到着した。畑も昔に比べれば多くなり、活気も増した気がする。
「カイゼル殿はどこだろう?」
「あのジーさんなら畑か水田でしょ。」
カイゼルは土の魔法を使えるので農業に適した場所を人為的に作り出すことができる。
もっともそれは数十年の鍛錬あって初めて出来る芸当だが。精霊の機嫌を損ねないようにしつつ土壌を改良するのは人間には難しいことである。
「土の匂いがキツくなってきたからここら辺にいるはず・・・。」
ビルニムが匂いを嗅ぎながら言う。狼の獣人は犬などと同じく匂いで個体を識別できる。
「あら・・・? ロッチナ、それにビルニム。」
彼女がスンスンとカイゼルを探している最中、ロッチナは視界に猟を終えて帰ってきたシシリアに
出くわした。
「お久しぶり、シシリア。猟にでていたの?」
「ああ、それで・・・どうしてアルスを抱えている?」
普段は感情の起伏をあまり見せないシシリアが珍しく苛立ちを見せていることに気付いた。
少なくともこんなにあからさまな表情を見せることは少なかったはずだ。
「ああ、森で偶然出くわしてね、猟をするつもりだったようだ。」
「そうか・・・弓を教えていたからその練習をしたかったのかも知れないが・・・何故寝ている?」
「それは・・・。」
言いかけてロッチナはかろうじて言葉を飲み込んだ。彼女がアルスを大事にしていることは明白。
そうなると彼を傷つけそうになったなどと口走ったらどうなるかは想像に難くない。
シシリアは獣を仕留めるプロそれは亜人である彼女達すら例外ではないほどの手練であり、敵に回して得の無い人物である。




