村の会合!
その日は僕は珍しく悪夢を見なかった。初めて熱中できることをみつけたからなのかな。
そして眼が覚めて見えた朝日が眩しくて綺麗だったのも僕の中でなにかが変わったからだろうか。
「あ、しまった。 もうじき会合があるんだった。」
朝食のご飯と昨日のシチューの残りを食べているとおじいちゃんが不意にそういった。
『ボケたか、カイゼルさんよ。』
「シーッ!」
「ボケとらん! アルスを可愛がるのに夢中で村長としての仕事を忘れておったわい。」
それってある意味ボケるより悪いんじゃ・・・。そう思いつつも僕に好意を持ってくれることが嬉しくて
思わず笑顔になる。
『爺バカ。』
「だれが爺バカか!」
やっぱりお兄ちゃんの声が聞こえてるのかなあ。
「・・・」
僕は何故、ここにいるのだろう。大きな丸机に座る人達の視線が痛い。どうしてこんなことに・・・。それは朝食を食べてから20分後のことだった。
「ふう、やっと当たるようになった。」
弓の腕前は石投げと同じくらい良くなり、朝食を食べてすぐに再開した。
裂けた指の皮も綺麗に治り、怪我をしては治癒魔法の練習を兼ねて休憩しまた練習といった具合に飛び道具の練習を重ねる。こうして練習を重ねていくと実地訓練も重要になってくる。お兄ちゃんに判断を仰ぎつつ僕は日ごろのお礼もかねて鳥くらい撃とうかとおもっていた。
「うーん、やっぱり難しいなあ。」
僕はしばらく森を歩いてそう思った。シシリアお姉ちゃんはいつも狙い澄ましたように獲物を見つけて、それを一撃でしとめていた。けれど僕が歩くところには獣一匹いない。鳥もいない。
首をかしげていると不意にお兄ちゃんの気配が鋭いものに変わった。 警戒している? なにを?
『誰かいる、見られてる。』
「見る?」
『最初はアルスの足音がうるさいからかと思ってたが獣は怯えているんだな。俺達を見ている誰か(・・)に。』
そう言われて慌てて辺りを見渡すと頭上から愉快そうな声が聞こえてきた。
「あらあら、なあロッチナ。 この子私の視線に気付いたよ。」
「バラすなよ、まあなんでもいいさ術に嵌めて捕らえるだけ。」
二人の声に続いて突然僕の両腕を誰かが羽交い絞めにする。
「だ、だれッ?!」
「それはこっちの台詞さ、人間さん。」
じたばたともがいてみるけど僕の筋力なんてたかが知れてる。しかも相手はシシリアお姉ちゃんくらい背が高いのか容易く僕を持ち上げる。
「子供か・・・だが此方も仕事でな。」
大木から擬態していたように全身を現したのは下半身が巨大な蛇になっている種族、ラミアだ。黒い髪に透き通った肌を持つ美しい女性でおそらく名前はロッチナさん。
「や、やめて・・・意地悪しないで!」
「暴れるな、すぐ済む。」
ラミアのお姉さんは僕の顎を持ち上げると赤紫の綺麗な瞳で僕を見つめる。
「綺麗な瞳・・・。」
「ありがとう、仕事ももう済んだ。」
済んだ?・・・あれ、僕、どうして・・・。頭がぼんやりとして思考がまとまらなくなってくる。
怖い・・・でも、瞳が綺麗で・・・あれれ?




