昼の一コマ2
お昼にイノシシのステーキを食べ、再び投石と弓を練習しているとお兄ちゃんの目が覚めた感覚がする。
お兄ちゃんの意識が戻るといつも自分が眼を開いたような感覚を感じるのだ。 そして視界や体をめぐる力がクリアになっていく。おそらくお兄ちゃんの力が少なからず僕に流れているのだろう。
『何をしているんだ?』
「石投げと弓の練習だよ。」
端からみたら独り言を言っているようにしか聞こえないだろうけどこれがお兄ちゃんと僕が会話する方法の一つ。
お兄ちゃんは大抵僕より先に起きて、僕が起きると一度眠ってしまう。そして昼ごろにまた目覚めて僕にあれこれと教えてくれる。夜眠るタイミングは僕と同じなのにおにいちゃんは大抵僕より長く眠っているみたい。
『筋がいいな、俺はこういうのは苦手だ。』
「僕が出来るようになったらきっとお兄ちゃんもできるよ。」
『どうしてそう思うんだ?』
根拠があるわけじゃない、でも手や体に覚えさせていけば技は無意識の内に使えるっておじいちゃんがいってたし。
「おじいちゃんがいってたから大丈夫!」
『まあ、間違いじゃないが・・・。』
「それにほら、魔法も多少は使えるよ。」
お兄ちゃんが起きているとき限定だけど威力の強い魔法が少しだけ使える。今は水と火だけ。
二種類だけでも凄いと言っていたけどシシリアお姉ちゃんもカイゼルおじいちゃんも二つ使えるみたいだしなにが凄いのかわからないんだけどなあ。なによりお兄ちゃんは全ての属性を使えるみたいだし。
『魔法が使えるならついでに石と矢に魔法を纏わせてみたらどうだ?』
「そうだね、ちょっとやってみる。」
せっかくお兄ちゃんが起きてきたので使えるようになった魔法を試してみることにする。体の中の力をイメージして、それが掌から石に伝わるようにイメージを重ねていく。
最初は風。風は強い力を持っている。まるで刃物みたいな鋭い力。
それをイメージして石に伝えてみる。
「・・・えいっ!」
最終的には石をただの石ではなくて刃物を纏った矢のようにイメージして放り投げると石ころはガツッ、と鈍い音をたてて木の幹に突き刺さった。
すごい威力、これだったらイノシシは無理でもウサギくらいなら倒せるかもしれない。
『お前、イノシシかモンスターでも仕留めるつもりなのか?』
「えっ、ウサギとかのつもりだけど・・・。」
『ウサギを殺すのにこんな威力はいらんぞ。』
穴が開いて肉が食えなくなると怒られてしまった。どうやら魔力を篭めすぎていたらしい。
木の幹を確認してみると石ころが木の真ん中ほどまでめり込んでいた。これはたしかにやりすぎかな・・・。
やっぱりお兄ちゃんの意識が戻っていると力も魔力も段違いに発揮できる。 視界もクリアになるし僕だけでは気がつかないことも認識できるからお兄ちゃんの凄さは直接見なくてもだいたいわかる。
しかも逆に僕が見ていることはお兄ちゃんには見えているのだから凄いとしか言いようがない。




