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昼の1コマ

ぐしぐしと眼を擦って僕は自分の部屋に戻ろうとした。けどすぐ捕まってしまった。


「お前は私と狩りの仕方を覚えろ。」


シシリアお姉ちゃんはそう言うと僕を外に連れて行こうとする。抵抗するのは・・・たぶん無理だし、断ると凄くがっかりされるから出来れば断りたくない。でも僕体力が・・・。


「お前は非力だが、非力なものには非力なりに戦い方がある。」

「僕でもできることがあるの?」

「それを見つけて教えるのが私達の仕事だ。」


そう言うとシシリアお姉ちゃんは僕を抱えて家の外へと出て行った。お姉ちゃんは女性だけど僕よりずっと力も強いし足も速い。けどそんなお姉ちゃんでもおじいちゃんみたく力押しで戦ったりはしないし、むしろ距離を置いて戦う。


だからこそ僕が学ぶべきなのはおじいちゃんよりもお姉ちゃんが教えてくれる方法がいいのだろう。


「さて、ここらへんでいいかな。」


お姉ちゃんは森の入り口で僕を降ろすと僕に小さな弓を投げて渡した。


「弓と投石の使い方を教えてやる。」

「弓と・・・投石?」


投石って石を投げるってことだよね。 それってある程度力がないと出来ないことだと思うんだけど・・・。そんな疑問を見抜いたのかシシリアお姉ちゃんは僕に弓に続いて蔓を編んで作ったものを渡してくれた。


「これって?」

「投石用の投石器だ、これなら力はそこまで必要ない。」


シシリアお姉ちゃんはそういうと足元の石ころを拾って自分が使っているらしい投石器に挟んで振り回した。


「こうすると・・・力が弱くても威力はでる。」


石を振り回してからお姉ちゃんは握っていた手を開いた。すると石が凄い勢いで飛んでいく。


ガツッ!


鈍い音が響くと同時に獣の悲鳴が上がった。シシリアお姉ちゃんが森の中へ入っていくので恐る恐る近づいていくとイノシシが額から血を流して倒れていた。


「凄い・・・これを使って石を飛ばしたらこんな威力になるんだね。」

「今回は私の風の魔法を使った、けどナシでも鳥や人間を倒すことは

 出来る。」


さすがにイノシシをこの投石器で倒すのは無理だったみたい。けどこれなら僕でもできるかもしれない。


「・・・えいっ!」


真似して投げてみる。するとシシリアお姉ちゃんほど強くも速くもないけど手で投げるよりもずっと遠くまでとんだ。それに思ったより自分が投げたいところに飛んだのが嬉しかった。


「アルスは投石の才能があるかもな。」

「ほんと?」

「初心者で狙いが正確なのはいいことだ。」


褒められてやる気が出たので今度は弓を手にとってみる。矢は木の枝を削って作った簡単なものだけど練習するにはちょうどいいみたい。


「弓は投石よりも難しいが威力は高いぞ。」


まずはお姉ちゃんが手本を見せてくれる。僕が持っていた弓を手に取り、矢をつがえて放つ。


動作に全く無駄がなく美しい。

そして放たれた矢は木の幹に刺さった。すごい、これも魔法を使ったのかな。


「これは魔法を使っていない。それでもこれくらいはできる。」

「すごい! 僕にも出来るようになる?」

「大丈夫だ。 仮に今が無理でも練習は無駄にはならない。」


そう言われて僕は試しに弓に矢をつがえて射ってみる。


ひょろろん。


全然飛ばない。 先ほどの物と同じ弓とは思えないくらい。へろへろと飛んだ矢は地面に刺さった。


「引く力が弱い、もっと引っ張って。」

「は、はい!」


今度はめいっぱい引いて矢を放ってみる。


ぴゅん。


すると今度は先ほどよりも飛んだけど木には刺さらなかった。けど届いたことが嬉しくてシシリアお姉ちゃんの方を見るとお姉ちゃんも微笑んでくれた。


「昼食をはさんで今日は夕方までこの練習を頑張れ。」

「うん!」


僕は力も弱いし賢くもない。だから些細なことでも出来ることが増えていくのはうれしい。

いずれ僕が一人でも生きていけるようになったらその時は皆の為になにか出来るようになろう。


そのために僕は夕方まで弓と投石の練習に励むことにした。

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