朝の鍛錬
「正面から勝てないなら小細工する!」
「正直じゃのう。」
サンドマトンが右ストレートを繰り出すとカイゼルさんが蹴りで右腕を粉砕する。 俺はその右腕をあえて再生させずカイゼルさんの足元に生成する。
『グォッファ!』
俺の意図を読み取ったらしいサンドマトンの右腕がカイゼルさんの足を掴むと瞬時に自分の体を崩し、両足を掴んだ状態で再度地面から姿を現した。
「うぉっ?!」
「いっけー!ジャイアントスイング!」
両足をガッチリとホールドし、派手にぶん回す大技!木や藪を巻き込みながら盛大に回転する。
「あぶっ・・・おぶっ、ふぶっ!」
『どうだぁ俺の技はぁ!』
「ちょっと!そろそろストップ!」
サンドマトンは技が決まって嬉しいのかテンションが変なことになっている。そろそろカイゼルさんがヤバイ。
「グワッガォォォォォォォ!」
「ひぃ! 遅かった!」
カイゼルさんが雄叫びの一つで戦闘モードへと移行する。額に申し訳程度に飛び出していた角が鬼らしい角に肥大化し老人らしい肌が柔らかい若者のそれに変化していく。そして見た目どおりに上昇した筋力を伴ってサンドマトンのジャイアントスイングから脱出する。
「此処までやってくれたからにはとことん付き合ってもらうぞ!」
年齢が40歳くらいまで若返るとファイティングポーズをとる。こうなると満足するまで付き合う羽目になる。しかも手加減がかなり適当になっているので気が抜けなくなる。
『グォッフォ!ここからが本番よ!』
「あーあ、なんで隙あらば好んで死地に赴くのかな・・・コイツ。」
こっからは2対1で俺も攻撃に参加する。サンドマトン単体では間違いなく瞬殺されてしまうので再生する以上にサポートする必要がある。
「魔法を使うよ、カイゼルさん。」
「小僧、遠慮はいらんぞ。」
魔法を展開して攻撃の準備に入るとサンドマトンはそれに先駆けて攻撃を仕掛ける。 魔力の供給量を増やしたので硬度や再生や変形の速度を向上させている。
『グォオオ!』
「しゃらくさい!」
互いの拳が互いの顔面を捉える。サンドマトンは殴った腕が砕け、カイゼルさんはわずかにぐらつきながら互いに左右の腕で顔面を殴り続ける。 一見再生可能なサンドマトンが優勢に見えるがサンドマトンが
再生に使う魔力は俺が供給しているのでモリモリ魔力が減っている。
そして体力もカイゼルさんは遊びレベルで消費しているに過ぎないのでこのまま付き合っていたら間違いなくジリ貧になる。
「さぁ、炎さんお仕事ですよ!」
精霊に力を借りて魔法を発動する。 精霊に力を借りると魔力の消費がほとんどなくなる素敵な魔法。 ただし精霊は人の意思なんてくんでくれないのでいちいち指示を出すか魔力を消費して精霊と思考をリンクする必要がある。
「サンドマトンを援護してあげてください!」
敬語なのはその方が精霊が言うことを聞いてくれるからで他意はない。わざわざ火の精霊を呼び出したのはカイゼルさんが火の魔法を得意とするからで、攻撃ではなく妨害用である。
カイゼルさんの魔法はパワーが段違いに高いので妨害しないとサンドマトンが蒸発してしまう。
それでもカイゼルさんが放つ魔法はレーザーのようにサンドマトンを切り刻んでくる。
『ぐおっ・・・キツイぞ』
サンドマトンは動きが素早くなく、体の分解再構築を地面で繰り返すことによって高速移動しているのだ。よって攻撃を避けるとか直接走ったりするスピードは遅い。
「泣き言いうなよ、こっちは結構前からキツイんだけど!」
魔力の消費と飛んでくる攻撃を二人に比べてずっとか弱い体で避け続けるのは並大抵の苦労じゃないのに。




