第2話【吉報】
西暦2045年━━197、80年代はテレビのゴールデンでも放送されていた新日本プロレスだったが、やがて人気は低迷して深夜の30分番組になっていった。
それから数十年。アントニオ猪木の再来といわれる世紀のカリスマ、エスカルゴ安藤の登場により爆発的新日ブームが到来し、再びゴールデンで放送されるほどの大人気となった。
その新日ブームの影響でマイナーなプロレス団体も注目されるようになり、コシコシシロ―が所属するどんぐりプロレス(略してどんプロ)も毎回満員御礼となっていた。
……試合終了後、シャワーを浴びるコシコシシロ―に同期のレスラー、Doctorコンバットが話しかけてくる。
「おーい、コシコシ」
「ん?なんだ、コンバットか」
「今日の試合は楽勝すぎたな。ま、相手がスープレックスしか芸がないヘルシンキだからな……」
そんなDoctorコンバットに、コシコシシロ―は少し考え込むようにいった。
「まあ、そうだけど……ただ、ヒップアタックがかわされたときの対策を早く考えないとな……」
「え?おまえ、まだ対策考えつけてないの?」
「いやぁ、一応ひとつかふたつ案はあるんだけどね……」
シャワーを終えて着替えはじめるコシコシシロ―。そのとき、更衣室のドアをバンと開けて飛び込んでくる男がいた。
「2代目!いますか?2代目!」
「あ?なんだピーチ太郎?オレならここにいるぜ」
【2代目】と呼ばれて返事をしたのはコシコシシロ―だった。そう。コシコシシロ―は厳密には【2代目コシコシシロ―】なのである。
コシコシシロ―にピーチ太郎と呼ばれた男は息せききりながら告げた。
「2代目!ついに、ついにおやっさんが目を覚ましました!」
「なんだって!」コシコシシロ―は絶叫し、急いでピーチ太郎とともに試合会場をあとにした。