嫉妬と決闘
ちょっと短いです。
「えっやだよ・・・」
カインの決闘宣言をはっきりと簡潔に断る。
「なっ!?負けるのが怖いのか!?腰抜けめ!!」
こいつは俺がデカ熊を倒した事を忘れてるのか?
あいつに勝てない奴が俺に勝てるわけないと普通わかるだろ・・
「いや、単に弱い者いじめみたいでみっともないだろ・・?」
「なんだと!?俺とたいして年も離れてない奴に絶対に勝てないなんてあるはずがないだろ!!お前はそんなに人を小馬鹿にしたいのか!?」
はい正解。それと単に面倒臭いし、クレアの前で幼なじみをボロクソにしても益がないしな。
まぁここでは、そんな事言わないけど。
「まがりなりにもお前はクレアの幼なじみだろ? そんな奴をクレアの前で傷つけようとは思えないのがわからないのか?」
「ソウヤ ・・・!」
クレアがもの凄く熱い視線を送ってくる。
ちょい恥ずかしい・・
「なら!こなかったらお前の負けだからな!!その時はクレアと別れてこの街からでていけ!!正午に中央広場の噴水前にこいよ!」
そう言い残してカインは宿屋から出ていった。
「ソウヤ・・どうするの?」
クレアは不安そうな瞳で俺を見上げてくる。
「こうなったらやるしかないだろうな・・けどカインの奴は決闘とはどういうものかちゃんと分かってるのか?」
「どういう事?ソウヤ。」
クレアは分かっていないようで不思議そうにしてるので教えてやるか。
「あのな、決闘っていうのはそもそもどうしても譲れない事があって、それを命をかけて守る儀式みたいなものだ。だけどあいつは自分が殺されないと分かってて決闘と言ってるんだ。クレアの幼なじみだから命は奪われないだろうとたかをくくってるんじゃないか?だが、俺は決闘を受けるとなれば命をかけて相手を殺す気でやる。それが相手と決闘という儀式に対する最高の礼儀だからだ。あいつが本当に命を賭けられるとは俺には思えないのさ。」
「じゃっじゃあカインは死んじゃうんじゃ?」
クレアは縋るような目でみてくるがここは譲れない。
「恐らくそうなるな・・だが俺も殺したいわけじゃない。始まる前にクレアから説得してみてくれ。
悪いな・・願いをきいてやれなくて。」
「ううん・・一方的に言い残したカインが悪いんだもの。それに私も説得してみるからまだ分からないよ!」
無理して笑ってるのが痛々しいな・・・
返事をするかわりにクレアの頭を撫でてやる。
「まだ、正午までには少し時間がある。悪いが武器屋に案内して貰っていいか?」
今は取り敢えず考えるより身体を動かしてたほうがいいだろうな。
「うん・・分かった。」
2人で朝食を食べるとエルディスに夕方には戻ると伝え鍵を渡す。
「さっきのカインの馬鹿の声は聞こえてたよ・・・ あいつが口にしちまった事だし助けてやってくれとは言わないよ。だけどせめて楽に逝かせてやっておくれ。」
「あぁ、分かった。」
強く頷くとクレアを連れ食堂をでて宿の出口に向かった。
「これから行く武器屋はどんなとこなんだ?」
「う〜ん。店主が頑固?かな。認めた相手には喜んでオーダーメイドでも受けてくれるんだけど、嫌いな相手だと出来損ないを凄い値段で売り付けたりしてるよ。」
「そりゃだいぶ偏屈な感じだな。認められればいいんだが・・。」
しょうもない事で武器が手に入らないとか論外だからな。
「ソウヤならきっと大丈夫だよ!」
クレアの根拠のないセリフを聞きながらこれから行く武器屋の方へ足を進めていった。
「ここか?」
想像してたよりずっとボロい感じの店構えだった。
「そうだよ!お〜い!ハンスさ〜ん!いる〜?」
「なんだぁ、大きな声で・・・ってクレアの嬢ちゃんかい。」
なんかちっこい髭もじゃなおっさんがでてきた。




