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#4


…筆頭生徒特権…


この高校独自の実力テストである三学年統一模試により選出された成績トップの生徒だけに与えられる様々な優遇権利の総称である。


例を挙げれば、学食の年間フリーパス、学校内施設の自由な仕様許可、もちろん登校出席も自由であり、校則の廃止や追加も特例により可能である。

















「…つまり、筆頭生徒の私はこの高校ではある意味校長よりも決定権を持っている訳だ。解ったか、善人?」


「………よく、わかりません…」





体育館の壇上ど真ん中で会長にキスをされた後、体育館内の全校生徒は大混乱だった。


ファンクラブ会員が入り乱れてしまい式は中断、僕と美琴会長は司会をしていた先輩にその場から逃げるようにと指示された。


美琴会長に手を掴まれて、僕はただおろおろしながらも会長と一緒に避難して…現在、第二生徒会室という部屋で会長と二人で過ごしている。





「うむ、理解しづらいか。去年の模試で私達が一年生にして満点を取ってしまった為に、結構有名な制度になったと思ってたのだが…」





…いやいや、模試の存在は知ってましたけど、そんな特権とかあるなんて知りませんよ。


この高校に入学する前から、一年生から三年生まで同じテストを受けることは本当に有名だった。だってセンター試験並に難しいことで知られているからだ。


点数が低いと罰があるってわけじゃないので、進学目的の生徒に対する実地試験みたいな説明しか聞いてなかったよ。特権も知らなかったし、美琴会長が一年生で満点を取ってたなんて…


改めて思う。神は不公平だ、こんな美人さんに優秀な頭脳を与えるんだから。


…それにしても、僕はこの美人さんと皆の前でキスしたんだよね…





「…ん?私に何か聞きたい事があるのか?」


「いや、あのですね…聞きたいことが山のようにあるんですけど…」


「善人の疑問は、全て私が解決してやろう。さぁ、何でも質問していいぞ?」


「………どうして、僕にキスしたんですか?それに僕を所有物だとか急に言われても、意味がわかりません…」





先ほどの体育館での会長の発言と行動、全てに僕は疑問を感じている。


新入生の中から僕だけが呼び出され、『君は私の物だ!』とか言われても…理解できるほうが異常だ。


別に、キスされたことが嫌ってわけじゃない。むしろ、初めてのキスが美琴会長みたいな美人さんだなんて、嬉しくてテンションがおかしくなりそうです。


でも意味がわからないまま話が進むのは、それが喜べることでもあまり良い気がしない。だからこそ、ちゃんとした理由が知りたいのだ。


美琴会長をまっすぐ見つめる。やはり綺麗な顔をしていて、見ているだけで僕は照れと恥ずかしさでいっぱいになる。それでも会長が見つめ返してくれるので、僕から視線を外すことはできない。


すると、一度だけ咳払いをした会長はゆっくり語り始めた…


















…高校入試の行われたその日、私は一人の少年に出会う。



幾人もの中学生がこの高校に訪れて、進学するための試験を受けに来る。それは結構な人数なのですでに生徒会長に選ばれていた私は、生徒会の面々と共に人員整理等を手伝っていた。


試験会場の教室までの案内係を任され、迷わないように中学生達を誘導する中で…何故か一人の少年に視線を奪われている。


パッと見た印象は特に無く、少し身長が低い程度の何ら普通の中学生だった。


…何だ、この感覚は…どうしてこの少年がこんなに気になるんだ?


幼さの残る顔に、止めどない不安と緊張が見えてしまい………正直な感想を言えば、合格はあまり期待出来ないと思えた。


私にはどう仕様もないのに、私がどうにかしてあげたい気持ちだけが膨れ上がる。少し苛立ってしまう程に、私はその少年を気にかけていた。


せめて本来の実力で試験に挑んで欲しい、願わくば合格させて欲しい…


名前も知らないその少年の為に、私は今まで頼った事の無い神にまでこんな願いをしてしまう。


………それが、君との最初の出会いだった。

















「…それって、一目惚れですよね?」


合格発表の翌日…あの時の彼が合格した事を知った私は、自分の事のように喜んでいた。


浮き足立ちながらも生徒会の集まりに行くと、生徒会副会長の鹿倉恵波‐かくらえなみ‐にそう問われてしまう。


…う〜ん、よくわからん。それが私の答えだ。





「では会長、誰かに恋をしたことはありますか?」





再び、恵波に問われてしまう。さっきから質問攻めだな。


それは…多分、無い。誰かに好意を抱くなど、私には検討もつかん。再度答えた。





「…なら、その彼が会長の初恋なんですね」





…今度は、質問では無く決定事項だったようだ。


初恋?…そうか、これが恋か。確かに不思議な感覚を覚えているが、すっきりしないのに妙に浮かれた気分になる、この感情を恋と呼ぶのか…うむ、悪くない気持ちだ。


自覚してしまうと、あの彼の事を思いだす度に顔が緩んでしまう…おっと私としたことが、つい人前で表情を崩すなんて。


これから生徒会の会議が始まるのに、生徒会長の私がこれではいかん。と思いつつも、気を許すと彼が頭に浮かんでしまう。





「…会長、どうやら重症ですね」





私の顔の変化を一部始終隣で観察している恵波が、笑いながらも私を心配していた。


…恵波にまで心配されるとは、これは本気で危ないかもしれん。彼の事は一端、全て忘れよう。


頭を左右に振って、気を引きしめる。私は生徒会長なんだ。これまでも、そしてこれからも全校生徒のために頑張らねばならん。


…すると、恵波が急に私の肩に手を置いた。




















「良いんですよ?…会長だって、女の子なんですから」



………私は一応、日頃から女でいるつもりだが?



「いや、違っ…そうじゃなくて、会長も例外にもれず一人の生徒なんですよ?たまには、わがまま言ってもいいんです」



この私が、我が儘?…その発想は無かった。



「筆頭生徒にまでなったのに、毎日登校して学校や生徒のために頑張ってるんですよ?…少しだけ、自分のために動きましょう!」



しかし、だな…私は美鈴の我が儘を止めるために、生徒会長になったんだぞ?そんな私も我が儘を言ったら、美鈴と変わらんではないか。



「大丈夫です。最近は学校にすら来ないですし、皆だって会長の努力は知ってますから。それに…好きな男の子にぐらい甘えましょうよ!」



………本当に、我が儘を言って良いのか?



「もちろんです!」



それなら、一つだけ………私は…私は彼が欲しい!!!







「………へ?」



彼の幼い顔が、可愛くてたまらんのだ!あの首に鎖を繋げて、二十四時間ずっと横で頭を撫でていたいんだ!!



「あ、あれ?…こ、恋人とか彼氏じゃなくて、まるで………ペットじゃないですか!?」



…ハァ、いいなぁ…一緒にお風呂とか、添い寝で翌朝までなんて…幸せで死んでしまうかもしれん。



「ちょ、ダメです!!!それはダメです、わがままを通り越してますよ!?」



…何なんだ、先程は良いって言ったじゃないか。本来なら私も隠していた事なのに、貴様が言ったから暴露したんだぞ?



「す、すいません。し、しかし、相手の彼に首輪とかはちょっと…もう少しだけ妥協したわがままになりませんか?」



妥協したら我が儘では無いだろ。しかし、彼には傍に居て欲しい…だが首輪はやり過ぎか。うむ………




















「…そこで私は、君の為に腕輪を作ったんだ。首輪だと恥ずかしいだろ?」





全てを話した会長は、僕の右手につけられたリングを触りながら微笑んでいた。


そして、その話を聞かされた僕は今…喜びと恐怖で固まっていた。


美琴会長に一目惚れされたことはとても嬉しい、だけど首輪されて24時間拘束されるなんて考えたら………イヤだ、それじゃまるで本当にペットじゃないか!


目の前にいる美人さんが怖くて、一歩だけ後退ってしまう。本能がとった行動で、つい無意識のうちに逃げ出そうとしてしまった。


ただ、その動きを察知した美琴会長はすぐに僕の腕を掴み…笑顔のまま、僕を威圧してくる。





「何故、逃げる?…私から離れては駄目だろ?」


「に、逃げるなんてそんな…あっ!僕もそろそろ教室に戻らなきゃ!アハハ、じゃこれで…」


「………待て」


「ヒィ!?」


「君はまだわからないのか?…もう教室に行く必要は無い。君の居場所は私の隣だ、何処にも逃がさんぞ…」





下手ないいわけが通用するわけもなく、逆に美琴会長の機嫌を損ねてしまったらしい。笑顔が消えている。


すると突然、会長が腕に力を込めたと思った瞬間…僕の視界がおかしくなった。



どうやら僕を背負い投げしたみたいで、ぐるんと体が一回転して床に寝転がる形になる。勢いは凄かったのに、フワッと優しくベットにでも寝かされたかのような感覚だった。


そして僕の腰の上に、すでに美琴会長が座っていて…





「君はこの腕輪を着けてる限り、授業にも出席しなくて良い。その為だけに私は新しい校則を作ったんだぞ?…筆頭生徒特権を使ってまでな」


「で、でも、僕も勉強しないと…」


「私が家庭教師になろう。だから、君には身体を捧げてもらう」


「そ、そんな…やめてください、会長…」


「会長は禁止だ。私を呼ぶ時は、美琴様か美琴さんと呼べ。それとも、ご主人様と呼びたいか?」





抵抗できないように両手を押さえられた僕を見下ろし、会長…じゃなくて美琴さんは妖艶に微笑んだ。


こ、こんな体勢でも、綺麗だと思ってしまう自分が情けないよ…


整った顔が目の前に、そのすぐ下には同級生じゃ考えられないほど大きな胸が、そして僕より細い腰は体の上に乗っているのに重さをほとんど感じない。


そんな女性が潤んだ唇を近づけてきたら、もう僕にはどうすることもできなかった。


…二回目のキスは、口の中で何かが動き回っている。





「…うん、善人はしっかり歯を磨いているな。ざらつきを感じないぞ」


「………親に、毎朝言われてますから…」


「私もキレイに磨いてるぞ?…次は善人が確認する番だ」


「え、いや、もう大丈夫、ですから…」


「遠慮をするな。奥歯までちゃんと君の舌で調べるんだ…」





え、遠慮じゃないんです………あぅ…


結局その後、僕はもう一度美琴さんに虫歯が無いかどうか口の中を検診されてしまう。


…静かな教室で、二つの息が漏れる音だけが微かに交わっていた。










同時刻、第二生徒会室前の廊下にて…




「…ハァ~、いやらしいわぁ~…」




地響きと地鳴りを聞きつけて学校へとやってきた女生徒は、見慣れた生徒会長が見知らぬ男子生徒の手を引いて走る姿を目撃する。


面白そうな匂いを嗅ぎわけたこの女生徒は、迷わずあとを追いかける。そして、この教室前にたどり着いたのだ。


………もちろん、二人の会話も全て筒抜けである。




「それにしても、美琴ちゃんに想い人が出来るなんて。これは放っとけないわね………ハッ、これだわ!」




幸せそうにべろちゅーを繰り返す生徒会長に、このまま黙って見守るのは自分らしくない…と何やら良からぬ事を思いつく。


悪巧みも天才的な発想のこの女生徒…日頃の復讐に燃え活躍するのは、残念ながら次回である。






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