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影の航空機━ノベライズ━  作者: 紫 和春


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第37話 作戦が始まる

 日付が変わり、7月11日の早朝。天候は晴れ。南から若干の風あるが、フライトに影響なし。

 朝日に照らされるように、滑走路には民間戦闘機が並んでいた。先頭には梅香隊、その後ろに各地から招集された民間飛行隊が並ぶ。


『え~と、うちがプラム1で、アンリちゃんがプラム2、ミズキちゃんがプラム3、であってる~?』


 岡井が加藤と浜口に確認する。


『合ってますけど、慣れないですね』

『普通にいつもの呼び方しちゃいそー』


 そんな話をオープン回線で話していると、別の飛行隊から通信が割り込んできた。


『君たちさぁ、仲良しごっこのつもりかい? こっちは自衛官から散々シゴかれてきたんだ。正直こんな任務なんか放棄して逃げたいくらいだよ』

『ほんとそう。このまま自宅に帰ったろうかな』


 そういって笑い出す。

 しかし梅香隊の3人は笑わない。


『だったら逃げたらいいんじゃないですか?』

『あ?』

『そーだよ! アタシたちだけになっても頑張っちゃうから!』

『うちら、割と本気で自衛隊の皆さんのことを信用してますから~』


 梅香隊の3人は知っている。彼女らに真面目に指導してきた自衛官の姿を。そんな彼らの思いに報いるために、戦うことを3人は決めていたのだ。


『逃げてもいいですけど、せめて私たちの邪魔だけはしないでください』

『……チッ』


 舌打ちで返されたものの、一切動揺しない梅香隊。それだけ本気なのだ。


『梅香隊、カソード隊、ショット隊、離陸を許可する』


 管制塔からの通信だ。


『田子作戦の成功を祈る。無事に帰ってこいよ』

『ありがとう。梅香隊、発進します』


 そういって一式戦闘機、三式戦闘機、ゼロ戦の順番に動き出す。

 その後ろにいた民間戦闘機も、少し遅れて動き出した。そして順次離陸していく。

 ギアを上げ、そのまま目標であるルーマンの方向に向かって飛行する。


『風に流される心配はなさそうだねー!』

『ルーマンが最後に確認されたのは、百里基地から方位1-5-5、距離400kmだったね~』

『そろそろおおとりからの情報が入ってくるはずですが……』


 梅香隊がルーマンの位置を確認している時、別回線の通信が入ってくる。


『こちらE-2Cのおおとりだ。梅香隊の諸君、久しぶりだな』

『お久しぶりです』

『おひさー!』

『は~い』

『さて、再会の挨拶はこの辺にして情報共有だ。君たちの目標であるルーマンは事前に確認された位置から変わっていない。そのまままっすぐ進めば目的地だ』

『ありがとうございます。おおとりの皆さん』

『何、君たちはすでに立派な自衛官だ。日本を守るために、全力を尽くしてくれ』


 そして回線が切れる。


『あんたら、なんで自衛官とそんなに仲良くなってるんだ……?』


 カソード隊の隊長機がそう尋ねる。


『なんでって、一緒の任務をこなしてたから、ですかね?』

『協力しないと死んじゃうからねー!』

『死んでいいのはうちくらいだよ~』


 ブラックジョークに近い発言が飛び出して、カソード隊とショット隊の面々はドン引きしている。

 そんな時、後方から何かが接近してくるのが分かるだろう。


『ミズキちゃん、レーダーに反応あり! 多分中里さんたちだ!』

『正解だ。まぁIFFを確認すれば簡単だろうがな』


 神崎と中里が乗るT-2と、第3飛行隊のF-2戦闘機、第301のF-35戦闘機が接近してきたのだ。空自の戦闘機はジェット機である。圧倒的な速度差を埋めるために、時間差で離陸してきたのだ。


『さて、おおとりの情報はこっちでも聞いている。このまま進めば問題ないはずだ。作戦通り、空自の戦闘機が先行して攻撃を加える。君たちはこのままゆっくり進んでいこう』


 そういってT-2は速度を落とし、その間に空自の戦闘機群が追い抜いていく。


『おい、神崎。今のうちに広報用の写真でも撮影しておけ』

「あ、はい」


 中里に言われ、神崎はデジカメを民間飛行隊に向ける。構図としては、右から左に向けて民間飛行隊が飛んでいるような感じだ。

 数枚撮影し、その画像を確認していると、中里が賛嘆の声を上げる。


『第3飛行隊と第301飛行隊がルーマンに到着し、対地攻撃を開始したようだ』


 田子作戦前半の正念場がやってきた。

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