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香る、橙  作者: 真砂木
9/12

9話



 夢を見た。

 いつものように寝っ転がりうつ伏せで漫画を読んでいた。

 トントンとドアがノックされる。

  ガチャリと開いた隙間から、顔を覗かせる弟。

「一緒寝ていい?」

うわ…そういえば、えーたのこんな頃あったかも。

 と今よりも小さくて初々しい貴重な弟の甘えた姿に涼介は何だか懐かしさを感じた。

「は?イヤ」

 ……、マジかおれ。

 思春期真っ盛りの自分に少し引く。

 しかし弟はそんな兄の冷たい態度も気にせず、タオルケット片手に部屋の中へ入ってきた。

「入ってくんなよ、…最悪。自分の部屋行ってねろよ」


 ………これ、おれか…。


「ここのが涼しい」

「……」

「お邪魔しまーす」

「は、来んなよ…こいつマジか」

…弟は俺のベッドにやってきて、隣に寝転んだ。

 真夏なので窓は全開で扇風機だけの部屋は寝苦しく暑かった。

 電気を消し弟に背を向ける俺。そんな俺にふいに弟が抱き枕よろしくひっつく。

…えーたがこんな頃もあったっけ。


 当時の涼介にはうっとおしく、物理的に暑苦しかったのもある。

 無言で肘を思いっきり振り、触れてきた弟の身体を振り払った。


 酷すぎて笑えてくる。思いっきり肘が入っていた…小学生相手に。

 えーた、ごめんな


――朝

 近くで小鳥が鳴く声が聴こえる。

涼介は目を覚ましたが、まだ頭は起きていない。

 見慣れない景色に疑問符が浮かぶ。

毛布を被り直し息を吸う。

 …何か違う、知らない匂いがする。

 動き出す前の鈍い頭で昨日の出来事をゆっくりと思い出す。


 …えーと、昨日は確かえーたと、喋って、えーたの所で寝たんだよな。そうだ、ここ…


 巡り始めた意識にまず弟を探す。

 布団はもぬけの殻だ。


 ……居ない。てか今何時だ…、下に置きっぱなしだったな…


 よっこらせと気合を入れて起き上がる。

 昨日はあんなに怖かったのに、朝になると嘘のようにそれが消えていた。

 梯子を降りて自分のスマホを手に取る。アラームが鳴る寸前だった。


 弟はどうやら先に出たようだ。

 静まり返る部屋の中涼介はとりあえず"昨日はごめんな"と思った事を弟に送った。


 高梨子から着信と共に返信があった。

 与恵と伊藤を誘うまでもなく、昨日は普通に楽しめた。ホラーは予想外だったが。

 そんな事を思いながら返信して、顔を洗いに行く。


 洗面台から戻ると、それに合わせたように通知が鳴った。

 高梨子から、涼介を気に掛ける内容とまた遊ぼー、とうさぎのスタンプが送られてきた。

 …高梨子、だんだんイメージが変わってきたな。気取らない人柄にプラスされて可愛さがにじみでてる…


 高梨子に返信を打ち込んでいると、新しい通知が表示された。


 "ありがとうは?"


 弟からの返事に涼介は笑った。


 "ありがとう、おかげでぐっすり寝れた"

――そういえば、


"そういえば夢に昔のえーたが出てきた"

"あの頃のお前可愛かったよな"


最後のは余計だったかな…


時計を見る。あまり悠長にしていると、いつもギリギリになるので、今日は早めに出かける準備をする事にした。


 余裕を持って部屋を出る直前、弟から"忘れろ"と返事がきた。


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