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香る、橙  作者: 真砂木
7/15

7話

「うーん、久々」

「なんか言ったー?」

「なんも!」

 ガチャガチャと音量がマックスのBGMは中々うるさい。

「見て、涼介。あれ可愛い」

「やんの?」

「やるー欲しい」

 でかめのトラのぬいぐるみに食いついた高梨子。さっそくプレイし始めた。狙ってるが、なかなかとれない。

 見てアドバイスしていた涼介に、代わりにやって、と言ってきた。


 やってみたら意外や意外、一発でとれた。それに涼介が「まじ…?」と一番驚いていた。その隣で肩を組んで高梨子が叫ぶ。

「うそっ涼介天才!」

 高梨子が子どもの様にはしゃいでて微笑ましくなった。



「ばいばい涼介」

「じゃーな」

 大きなぬいぐるみを抱えた高梨子に手を振る。

 帰り道、先ほど見た映画の内容が突然ぶり返してきた。高梨子といる間はよかった。明るい内に今日は帰る、と決めていたのに、時間はあっという間に過ぎる。今、すでに太陽が傾いて沈み始めている。

 歩いているだけなのに、そこにある電柱の影とか、壁の隙間とか至る所が目については気の所為だ、といいきかせる。

 こういう所だ、ホラーの苦手なとこは。余韻が凄すぎる。

 家に帰って一人だったらどうしよう、と柄にもなく涼介は焦った。家に着く頃には空は夕陽の名残であかく、道は薄暗くぽつりと街灯がついていた。

 部屋の前まで帰ってきたとき、階段をのぼる速さはいつもの倍以上だった。

 頼む…いてくれ、えーた。

 ドアを開くと、まず靴が目に入った。

 それだけで今日俺はツイてる、と涼介は安堵した。「ただいま」と息切れしながら言うと、「おかえり」という小さな声が向こう側でした。それに、心底胸を撫で下ろすと、弟の気配を感じながら風呂場に直行した。


 カラスの行水並みに全身を洗い終え、風呂からあがった。

 何時もは洗面台で適当にするドライヤーも、今日は居間でする。

ざっと乾かした後、歯を磨きながらチラリと上の方をみる。

 明かりは消えている、静かだが寝ているのだろうか。


 早く帰ってきたと思ったら、すぐに就寝して、また夜中に電気がついてる事がある。

 そういう所は涼介も似たり寄ったりだ。


 歯を磨き終え、明日の授業の予習をしておく事にした。前回暗記するよう言われた箇所とノートを見返していく。それが終わった後は読書だ。


 涼介の寝る場所は本が所々積まれている。少しずつ増えていき、置き場所に頓着しない涼介は床にそのまま積むスタイルだ。

 いい感じに眠くなってきた。

 このまま眠りにつけそうだ、と思っていた涼介。いざ目を閉じると、よみがえる恐怖シーン。

 …寝れねえ……どうしよ。何で電気消したんだろ。

 スマホをいじり、高梨子に"ねれねー"と送る。

 しかし、既読に中々ならない。

 伊藤と与恵はイジってネタにしてくるのであえて送らない。




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