6話
あれから、まだ弟とはすれ違いの日々が続いていた。
共同スペースの掃除、おおまかな役割分担的な事は流石にメッセージアプリでやり取りしてはいた。
ただ、顔を合わせるタイミングが合わない。
ご飯も初日と次の日、引っ越しの荷解きや整理で母親を交え三人で食べたきりだ。
弟がいる時間帯といえば、朝と夜だ。
しかし朝は涼介が弱い。
弟が出ていく開閉音で目を覚ますこともあれば、起きた頃に支度を終え出ていく弟を寝ぼけつつ見送ると言ったことが少なくない。
夜は夜で、疲れた様子で帰ってきてロフトへあがったまま降りてこない。
会話らしい会話もないが、これでいいんだろうか。
避けられているのだろうか…
涼介が落ち込みそうな気分になりかけたとき、スマホの通知が鳴った。見ると、高梨子からだ。
遊ぼう、と絵文字多めのメッセージにこの前会った時に交わした内容を思い出す。
またピコンと通知が鳴る。
"観たい映画あるんだけど"ときた。
映画か…いい気分転換になるかもな
"いーよ、行こ"と涼介は返事をした。
時間をみて出かける準備をし始める。
あ、何の映画か訊くの忘れた…
まあいっか。
久しぶりだし楽しみにしとこ。
浮上した気持ちも少しの間だけだった。
高梨子が手に持ったチケットを見る。
「ホラー…」
「え、もしかして苦手」
「うん」
「ほんと?じゃあ…やめよっか」
「は、なんでもったいない」
「そこ?いーよ無理しないで」
「してない」
「…」
「行くよ」
「…涼介、手握ってもいいよ」
「あほ」
高梨子のボケにツッコミながら涼介は内心ドキドキしていた。
久しぶり過ぎて、自分がどう反応するのか少し楽しみでもある。
俯瞰モードを発動させ、気持ちを落ち着かせようとする、涼介。
しかし、当たり前ながらそう簡単に克服は出来なかった。
案の定身体を逐一揺らし、声も少しだけ出た。必殺技の手で隠す、薄目で見るも全部した。
何故みんな平然と見れるのか、涼介には不思議だった。
「なんで目をそらさず見れるんだ」
見終わった後、出口から出て誰に言うでもなく涼介が放った疑問を高梨子が拾う。
「開口一番それ?」
純粋に思ったことを高梨子に訊く。
「なんで楽しそうに見れるの?」
「出てくる瞬間とか、楽しくない?」
「アトラクション感覚?」
「ははっ」
「え、笑う今?」
「涼介が一番面白かった」
「え、俺ちらっとお前の方見たけど真っすぐ前見てたよ」
「途中までね」
見んなよ、金とるぞと言う涼介にいくら?とふざけて返す高梨子。
その後も映画の感想を言い合いながらご飯を軽く食べているとき、高梨子がゲーセンに寄ろ、といってきた。




