5話
"何してるの?"
"グループ発表の資料さがし"
"ふーん、ココに居てもいい?"
"おかえりください"
"塩"
"帰らないで、ココに居て。一生"
"おも"
"居てもいいけど、一時間いちえん"
"安い"
"甘いが出ねえ"
"おれの隣はおまえだけのもの"
"甘ーーい"
"ざぶとん一枚ください"
"二枚あげる"
"ありがとう"
"高梨子は今日は?"
"涼介に会いに"
"ちげー"
"そろそろおいとまします"
"ばいばい"
"しお"
そこで高梨子が席を立った。紙を持って椅子を元に戻すと涼介に手を振る。
何しに来たんだ、と思いながら涼介も振り返す。
しかし、帰るかと思いきやなぜか戻ってきた。また紙にサラサラ何か書く。それを涼介に見せてきた。
"こんど、のみいこ?"
"いーけど、おれ呑めない"
"どっか遊びいこ"
"いーよ"
涼介の文字に嬉しそうに笑い、今度こそ手を振って去って行った。
高梨子ってまだ謎なとこあんだよな…、遊ぶなら伊藤と与恵も誘いたい。と思いながら涼介は目の前の本にまた手を伸ばした。
◇
ただいまー、と言いながら靴を脱ぎ、自分の部屋に帰ってきた涼介。
弟はまだ帰っていないようだ。
二人になったので、物は増えてはいる。しかし、ひとりの時よりもかなり片付いている。
涼介は片付けが苦手だ。使ったらまた次使うから、とそのままにしておく。それを繰り返していくうちに、ものが出しっぱなしになる。洗い物も結構貯めてからじゃないと洗う気にならない。
だが、弟はどうやら違うらしい。同じ血が流れているはずなのに、そこは違う。面白いな、と他人事のように涼介は整頓された部屋を見て思う。
弟が来ると知っていた初日はなるべくキレイにと心がけてはいた。気を付けてはいたが、やはりだんだん元に戻っていく。
笑一太がいるのはよほど使っていなかったロフトだ。涼介が普段使っているスペースとほぼ変わらない広さ。
下は涼介が占領している為早くも散らかり始めていた。
それに何か小言をいうでもなく、今のところ文句一つ言わずに洗い物や掃除を小まめにしている。涼介はそれが不思議だった。
しなくてもいい、と言いたいが、なかなかタイミングが合わずにいる。
ぎこちなくとも、なんとか会話をしよう。これから生活を共にするのだから、と涼介はそう思っていた。




