4話
与恵に、いーなと言ったのは割とマジだった。
腐れ縁などと与恵は言っていたが、昔からの付き合いでそれが今も続いている、ということだろう。
そんな存在が当たり前に居ることが正直、羨ましい。
涼介は脳裏に浮かぶ顔を振り払うように小さく頭を振った。
一度ため息をつくと、目当ての本棚を目指し歩みを進めた。
図書館には、少し先にグループ発表があり、それに使う資料を探しに来ていた。
まだ余裕があるため、それほど必死という訳でもなく、ただ参考までに事前に確認をしに来た。
何冊か目にとまったものに目を通してめぼしい数冊を持ち出し机に置いて読み始める。
紙を捲る音が辺りで響く中、涼介は本の内容をパラパラと流し見して使えそうな箇所を探す。
と、その時視界が真っ暗になった。
目に人の体温を感じ、その手を掴む。
「…、だーれだ」
ひっそりと耳元で呟く声。
こんな幼稚園児みたいなことを恥ずかしげもなく出来る人物を一人しか知らない。
「…」
涼介よりも幾分か低い体温。いや、涼介の体温が高いだけかもしれない。 何も言わずそれを引き剥がす。後ろを振り向くまでもなく、いたずらな笑みを浮かべ涼介をのぞき込むその人は、思っていた通りの人物だった。
「高梨子」
涼介は小さな声で名前を呼んだ。
「ふふ、涼介いたからつい、」
やっちゃった。と柔和に笑うこいつは、同じ講義をとっている。
たまたま隣の席になって、気づくと少しずつ絡むようになった。周りより垢抜けた印象で、独特な雰囲気を纏っている。明るく気さくではあるが、あまり群れない。
着ている服も多分どこぞのブランドものだろうが、それをカジュアルに着こなしたおしゃれくんだ。
涼介が今座っている席は、向かい合わせで二人座れる席だ。高梨子は真ん中に置いてあった仕切りを脇に寄せる。涼介の右隣に椅子を持ってくるとそこに座った。机に積んでいた本を手に取りパラパラ眺めると、高梨子はおもむろに鞄からレポート用紙を取り出した。
ペンを取り出して、何か書くとそれを涼介に差し出す。
書かれた文字をみて涼介も返事を書き足していく。




